労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第58号
日立Astemo(旧 日立オートモティブシステムズ)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y株式会社(「会社」) 
命令年月日  令和3年2月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①事前に団体交渉等を行わず、組合員Aに対して正社員登用試験(以下「本件試験」)を実施したこと、②団体交渉において組合から本件試験の事前説明会での配付資料を要求されたのに対し、異なる資料を提出し、Aに対して説明した内容との間に齟齬を生じさせたこと、③Aの時間外労働時間を減少させたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労働委員会(「神奈川県労委」)は、いずれも不当労働行為に該当しないと判断し、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 中労委は、本件再審申立てを棄却した。 
命令主文   本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 会社が、組合との間で、事前に団体交渉等を行わず、組合員に対して本件試験を実施したことは、労働組合法(以下「労組法」)第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するか
 組合は、本件試験を実施するに当たり、組合及びAと会社とは、Aの労働契約終了に当たっては組合と事前協議する旨の協定を締結していたことから、当該協定による事前協議義務を負っている、そうでなくても労働条件に大きく影響するものであるから、事前に組合と協議すべきであったと主張する。
 しかし、本件試験は、有期契約社員であって正社員登用を希望する者を対象とし、有期契約社員を正社員へ登用することを目的とするもので、本件試験に合格しなかった者であっても、引き続き有期契約社員として従前の労働条件が維持されるものと解される。実際に、Aは本件試験に不合格となったが、会社との有期雇用契約はその後も存続した。
 以上のとおり、本件試験の結果が不合格であっても労働条件に影響を及ぼすものではなく、組合員の雇用契約は終了しないと解されるのであるから、本件試験の実施に当たり組合と事前に協議すべき義務があったとはいえないので、不当労働行為に当たらない。
(2) 会社が、団体交渉において組合から本件説明会で配付した資料を要求されたのに対し、異なる資料を提出し、組合員に対して説明した内容との間に齟齬を生じさせたことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するか
 会社が、第1回団体交渉において組合から事前説明会での配付資料の提出を要求されたのに対して、当該資料から不合格者に対する取扱いについて記載された「基本方針」の項目が欠落した異なる資料を提出したことで、本件試験に関する事実の共有に混乱を来し、団体交渉に支障を生ずる可能性があったことは否定できず、組合が不信感を抱くのも無理からぬところである。
 しかし、会社は、資料送付後の第2回団体交渉において「基本方針」の内容について説明しており、第3回団体交渉における異なる資料を送付した経緯についての説明内容は、不合理であるとはいえないし、会社が意図的に異なる資料を送付したことを認めるに足りる証拠もない。また、組合は、会社が第1回団体交渉において、試験に不合格でも退職に至ることはない旨の虚偽回答をしたことは不誠実であると主張するが、不合格でも雇用契約は終了しないと解されるのであるから、虚偽回答をしたものとは認められない。
 以上によれば、会社が組合から要求された資料とは異なる資料を提出してAへの説明内容との間に齟齬を生じさせたことは、不誠実な対応であったとまではいえず、労働組合の運営に対する支配介入にも当たらない。
(3) 組合員Aの時間外労働時間が29年11月以降減少したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当するか
 Aは時間外労働時問の減少により経済的な不利益を被ったといえるものの、Aの時間外労働時間の減少が組合員であることを理由とするものであることを基礎付ける具体的な事実の主張立証はない。また、時間外労働時間は製品の生産数により増減するものであり、29年11月以降は担当製品の生産数の減少に伴い、Aの時間外労働時間が減少したのであって、この点からみても、組合の組合員であることを理由とする不利益取扱いではないので、不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成29年(不)第20号 棄却 令和元年10月31日