労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委平成29年(不)第20号
日立オートモティブシステムズ不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年10月30日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合との間で、組合員Aの労働契約を終了するに当たっては、組合と協議する旨の協定書(「本件協定書」)を締結していたところ、①組合への連絡、組合との団体交渉等を行わずに、Aに対して正社員登用試験(「本件試験」)の説明会(「本件説明会」)を開催し、正社員登用一次試験(「本件一次試験」)を実施したことが労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、平成29年6月16日に救済申立てのあった事件である。
 また、組合は、②本件試験について、会社が組合に対して説明した内容とAに対して説明した内容との間に齟齬があったこと、③Aの時間外労働時間が平成29年11月以降減少したことは、②については労組法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、同年10月22日に、③については同条第1号に該当する不当労働行為であるとして、平成30年4月9日に、申立事実及び請求する救済内容を追加した。
 神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(会社が、組合との間で、事前に団体交渉等を行わず、Aに対して本件試験を実施したことは、労組法第7条第2号及び第3号に該当するか。)
 組合及びAと会社との間で、「Aとの労働契約を終了するに当たっては、組合と協議し、相互に円満な解決を図るものとする。」との条項が含まれた本件協定書が締結されている。その後、会社は、平成29年4月16日、Aに対し、本件一次試験を実施した。
 本件試験は、会社の有期契約社員のうち希望する者を対象に、正社員へ登用することを目的として行われたものであり、本件試験に不合格となった場合でも従前の労働条件が維持されるものとみられる。そうであるとすれば、本件試験の実施によって、Aに不利益な影響が生じるとはいえず、本件試験の実施に当たって、会社が組合に対し事前に報告ないしは交渉の打診をすべきであったとはいえない。さらに、本件試験の結果が不合格であっても、Aの雇用契約は終了しないのであるから、本件協定に照らしても事前に協議すべきであったとはいえない。
 以上のことからすれば、事前の交渉等がないまま本件試験を実施した会社の対応が、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するとは認められない。

2 争点②(会社が、本件試験について、平成29年7月31日開催の団体交渉等で、組合に対して説明した内容とAに対して説明した内容との間に齟齬があったことは、労組法第7条第2号及び第3号に該当するか。)
ア 第1回団体交渉において、組合から、本件説明会で使用した資料の提出要求がなされたにもかかわらず、会社は、平成29年8月4日、組合に対し、本件説明会資料から「基本方針」の記載が抜け落ちた会社送付資料を提出した。
 29.6.16申入書では、本件一次試験の実施が議題とされていたことからすれば、会社が、組合に対して、一部分であっても本件説明会資料と異なる会社送付資料を提出すると、本件試験に関する事実の共有に混乱を来し、団体交渉に支障を生じる可能性があることは否定できず、会社の対応に組合が疑念を持ったとしても致し方ないといえる。
イ しかしながら、会社送付資料には欠落があるものの、その他の「正社員登用試験の実施概要」、「正社員登用の条件」、「労働条件(賃金・諸手当)」及び「今後のスケジュール(予定)」の部分については、項目や頁番号が異なる以外は、本件説明会資料と記載内容は同一であり、本件一次試験の実施を議題とする団体交渉に支障を生じさせるものとまではいえない。
 さらに、会社は、会社送付資料の提出後に実施された第2回団体交渉で、本件説明会資料の「1.基本方針」の内容について、第3回団体交渉で、会社送付資料を提出してしまった経緯について、それぞれ説明を行っており、本来提出されるべきであった本件説明会資料の提出に代えて具体的な説明を行っていることが認められる。
 以上のことからすれば、会社が組合に対し会社送付資料を提出して、Aに対し説明したことと内容に齟齬を生じさせたことが、不誠実な対応であったとまではいえず、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するとは認められない。

3 争点③(Aの時間外労働時間が平成29年11月以降減少したことは、労組法第7条第1号に該当するか。)
 確かに、平成29年11月から平成30年1月までのAの時間外労働は減少しており、それに伴って賃金が減少するといった不利益性が認められるとしても、時間外労働の減少がAに対する差別的取扱いである等の不当労働行為該当性についての組合による主張立証は一切なされていない。したがって、Aが労組法第7条第1号にいう「不利益な取扱い」を受けたとは判断できず、会社におけるAの時間外労働の取扱いが不当労働行為に当たるとは認定できない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和元年(不再)第58号 棄却 令和3年2月17日
 
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