労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第66号
日本アメニティライフ協会不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Xユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  Y協会(「会社」) 
命令年月日  令和3年2月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の下記(1)及び(2)の行為がそれぞれ不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
(1) 会社が、会社の住宅型有料老人ホームに勤務していたA(組合加入前後を通じて「A組合員」)の雇用保険被保険者離職証明書(「離職証明書」)の離職理由を「一身上の都合」と記載したこと。
(2) 会社が、Aが退職後に加入した組合との間で行われた団体交渉(「本件団体交渉」)において、代理人弁護士(「代理人」)のみを出席させ、文書による具体的な回答をせず、また、後日調査して回答するとの対応をしたこと。
2 初審神奈川県労働委員会(「神奈川県労委」)は、上記1の会社のいずれの行為も不当労働行為に該当しないと判断し、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、本件再審申立てを棄却した。 
命令主文   本件再審査申立てを棄却する。(初審命令維持) 
判断の要旨  (1) A組合員の離職証明書に「一身上の都合」と記載したことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか
ア 不利益性について
 離職理由に正当な理由がなく自己の都合により退職した場合は、雇用保険の基本手当の支給が一定の期間遅れるところ(雇用保険法第33条第1項)、会社がA組合員の離職証明書に「一身上の都合」と記載したことにより、A組合員は、ハローワークにおいて自己都合退職として扱われ、基本手当の支給開始が遅れるという経済的な不利益を受ける可能性があったと考えられる。
 本件において、実際の経済的不利益が生じなかったことは組合も認めるところであるが、そもそも、会社は、本件団体交渉における組合の指摘がなければ、自ら誤記に気付くこともなかったことが考えられるのであって、結果的に不利益の発生が回避されたからといって、会社が離職証明書に「一身上の都合」と記載をしたことによる不利益性が否定されるものではない。
イ 不当労働行為意思について
 離職証明書の作成作業を行った事務担当者が、A組合員の組合加入や団体交渉申入れを認識した上で、故意に離職証明書に「一身上の都合」と記載したことを認めるに足りる証拠はなく、労使間の対立が深刻化していたといった事情もうかがえないことからすると、会社が、A組合員が組合に加入したことの故をもって、「一身上の都合」と記載したということはできない。
ウ 結論
 そうすると、会社が、A組合員の離職証明書に「一身上の都合」と記載したことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるとはいえない。
(2) 本件団体交渉において、以下の対応をしたことは、労組法第7条第2号の不誠実団体交渉に当たるか
ア 代理人のみを出席させたことについて
 本件団体交渉においては、会社側の出席者は代理人のみであり、会社代表者は出席していなかったが、代理人は、会社から、団体交渉を行うことを委任され、事前に組合から文書により示されていた交渉議題については、口頭による回答、説明をして実質的な交渉に臨んでいるし、文書回答を改めて用意するつもりがある旨も伝えており、組合の理解を得るべく相応の努力をしていたものと認められる。
 他方、組合は、本件団体交渉において、団体交渉は一度しか開催しないとの姿勢に固執し、一方的にその終了を宣言しており、組合側が団体交渉による自主的解決について消極的な態度を取ったとみえなくもない。そうすると、代理人のみが出席したことによって、団体交渉が進展しなくなったとみることも相当ではない。
 以上からすると、会社が、代理人のみを出席させたことをもって、直ちに不誠実であるということはできない。
イ 後日調査して回答すると述べたこと等について
 代理人が後日回答するとしたのは、正確性を期するため調査が必要なものと、事前に示されてはいなかった議題についてであり、これらに関し、正確に回答したいので後日調査して回答すると述べたことは、無理からぬ面があり、会社のかかる対応が直ちに不誠実であるということはできない。
 また、組合は、本件団体交渉を実施するに当たり、会社から事前の文書回答がなかったことも問題としているが、会社が組合の要求どおりに事前に文書回答をすべき義務を負うとまではいえないのであって、会社が事前に文書回答をしなかったことが不誠実であるということはできない。
ウ 結論
 会社は、本件団体交渉において、実質的な交渉権限を有する者を出席させ、組合からの質問に対して回答、説明を行い、組合の理解を得るべく相応の努力をしていたと認められ、格別不誠実な対応をしたともいえないから、本件団体交渉における会社の対応は、労組法第7条第2号の不誠実団体交渉に当たるとはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成30年(不)第12号 棄却 令和元年11月14日
 
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