概要情報
事件番号・通称事件名 |
神奈川県労委平成30年(不)第12号
日本アメニティライフ協会不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和元年11月14日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①組合の組合員Aに対し、離職理由を「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)」とした雇用保険被保険者離職票を交付したこと、②団体交渉において、代理人弁護士のみが出席し、後日調査して回答するとの対応に終始したことは、①については労働組合法第7条第1号に、②については同条第2号に該当する不当労働行為であるとして、平成30年7月12日に救済申立てのあった事案である。
その後、③代理人弁護士が、組合に事前に告げることなく、組合との電話及び団体交渉の内容を録音したことは、労組法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、平成30年11月14日に追加申立てがなされた。
神奈川県労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 会社は、Aとの関係において、労組法第7条にいう使用者に当たるか(争点①)。
労組法上の使用者については、基本的には労働者と使用者との間の労働契約関係の有無で判断すべきであるが、労働者と使用者との間に、未精算の労働契約上の問題や紛争が存在している場合には、労働契約関係の終了後も、その限りにおいて、なお使用者として認めることが適当な場合もある。
確かに、会社とAとの間の雇用契約関係は平成30年3月31日に終了しており、形式的な労働契約関係はもはやないと言える。
しかしながら、Aは本件雇止めに納得していないことに加え、雇用契約終了直後に組合に加入し、組合を通じて自らの離職票の離職理由や労災問題等について会社との交渉を求め、さらに平成30年7月12日に本件申立てを行っており、会社とAとの間に労働契約上の紛争が生じていると認められる。
したがって、会社はAとの関係において、なお労組法第7条の使用者に当たる。
2 1で使用者に当たるとした場合、会社が、離職票に「一身上の都合」と記載したことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか否か(争点②)。
離職理由が「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)」とされた離職票が交付されたことに不利益性は認められるが、離職票の作成作業がAが組合に加入した故をもってなされたものとは認められず、離職理由が「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)」とされた離職票が交付されたことが、労組法第7条第1号の不利益取扱に当たるとはいえない。
3 1で使用者に当たるとした場合、平成30年7月10日の団体交渉において、代理人弁護士のみが出席し、文書による具体的な回答をせず、また、後日調査して回答するとの対応に終始したことは、労組法第7条第2号の不誠実団体交渉に当たるか否か(争点③)。
会社が交渉権限を有する者を出席させ、組合からの質問に対して回答する姿勢を見せる等、合意形成に向けて一定の努力を見せているところ、他方で組合は、団体交渉による自主的解決を日指しているのか疑問を惹起する態度を見せている。
したがって、平成30年7月10日の団体交渉における会社の対応は、労組法第7条第2号の不誠実な団体交渉であるとは認められない。
4 1で使用者に当たるとした場合、代理人弁護士が組合に事前に告げることなく、組合との電話及び平成30年7月10日の団体交渉の内容を録音したことは、労組法第7条第2号の不誠実団体交渉及び同条第3号の支配介入に当たるか否か(争点④)。
ア 不誠実団体交渉について
代理人弁護士が組合に事前に告げることなく、組合と代理人弁護士との電話内容及び団体交渉の内容を録音したことに、全く間題がないとはいえないものの、団体交渉の開催や進行においていかなる妨げになったのか、組合からは何らの主張立証もなされていない。
イ 支配介入について
組合はこの録音により組合と組合員の間に不信感が醸成されるなど組合の団結力等を損なった旨主張しているとみられるが、そのことについて、組合からは何らの具体的な立証がなされていない。
ウ 結論
以上より、代理人弁護士が組合に事前に告げることなく、組合との電話及び平成30年7月10日の団体交渉の内容を録音したことは、労組法第7条第2号の不誠実団体交渉及び同条第3号の支配介入に当たるとはいえない。 |
掲載文献 |
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