労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成31年(不再)第1号
光明池土地改良区不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y法人(「法人」) 
組合  X組合(「組合」) 
再審査被申立人   
命令年月日  令和2年11月4日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合からの申入れを受けて特定日に開催された組合員Aの未払残業代に関する団体交渉において、法人が、①組合員Aの未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を一切行わず、また、②組合が要求した組合員Aのタイムカードの写しの提供を理由の説明を行うことなく拒否したことが、不当労働行為であるとして救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労委は、法人の行為は不当労働行為であるとして、誠実団交応諾及び文書手交を命じたところ、法人は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令を変更した。
 
命令主文  初審命令を変更する(文書を手交しなければならない)。 
判断の要旨  (1) 特定日に開催された団体交渉における法人の対応は、不誠実団交で、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア 組合員Aに未払残業代を支払わなかった理由を具体的に説明しなかったこと
 組合が法人に質問しているのは、法人が組合員Aに残業代を支払っていないのはどのような理由に基づくのかであり、組合は法人に対しこのことを明示している。これに対し、法人は、一般論による回答に終始し、その回答は、具体的な事実を前提とする限り、矛盾したものである。したがって、法人の一般論による回答は、組合の質問に対する説明として不十分かつ不適切であり、かつ、一般論の回答に終始したことは不誠実な交渉態度であるといわざるを得ない。
イ 組合員Aのタイムカードの写しを提供しない理由を具体的に説明しなかったこと
 組合が組合員Aの未払残業代があると主張するのであれば、残業は組合員A自身の経験した事柄であるから、その具体的な時期及び内容を少なくとも概括的に主張することができるはずであり、特段の事情のない限り、その旨の主張をするのが相当であるといえる。しかるに、組合は、特定日に開催された団体交渉において、その旨の主張をしないまま、2年分のタイムカードの写しの提出を要求し、かつ、これを要求する理由として①残業代を請求するにしても、きちんと計算をして請求したい、②組合員Aはタイムカードの写しは幾つかは持っているが、全部は持っていない、③その後、法人の方で主張があれば、引き続き協議をしていく、④まずは協議の出発点としてタイムカードの写しの提供を求める、といった説明をしたにとどまる。このような状況の下では、法人は、組合からのタイムカードの写しの提出要求に直ちに応ずべき義務があるとまではいえない。
 しかしながら、法人が組合からのタイムカードの写しの提出要求に応じないのであれば、その理由を具体的に説明すべきであると解される。しかるに、法人は、「必要性が感じられない」「理解できない」などと回答するにとどまり、それ以上の説明をしていない。これは、組合からのタイムカードの写しの提出要求を拒否する理由の説明として不十分、不適切であり、誠実交渉義務に違反するというべきである。
(2) 救済方法について
 上記のとおり、特定日に開催された団体交渉における法人の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
 もっとも、法人は、再審査手続において、組合員Aとの訴訟において提出されたタイムカードの写しや残業代がないと考える理由を説明する準備書面を書証として提出している。
 一方、組合は、本件初審申立て後、別テーマを議題とする団体交渉の申入れを行い、実際に、団体交渉が行われているが、本件に関する議題については団体交渉の申入れを行っていない。
 以上の事情を総合勘案すると、団体交渉後の事情をもって法人の対応の不誠実性が消滅したということはできないし、訴訟及び再審査手続は団体交渉の手続に代わるものではないものの、現時点において、組合員Aに未払残業代を支払わなかった理由や、特定日に開催された団体交渉において組合員Aのタイムカードを提供しない理由について、新たに団体交渉を開催して法人に説明させる実益に乏しく、上記理由を説明させるためだけに団交応諾義務を命ずる必要もないというべきである。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成29年(不)第34号 全部救済 平成31年1月11日
 
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