労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第34号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成31年1月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合員1名に係る未払残業代に関する事項を議題とする団体交渉において、法人が、同組合員の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を一切行わず、また、申立人の要求した同組合員のタイムカー.ドの写しの提供を、理由の説明を行うことなく拒否するなどして、誠実に対応しなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、誠実団交及び文書手交を命じた。 
命令主文 
1 被申立人は、平成29年7月6日付け団体交渉申入書記載の、申立人組合員A2の未払残業代の支払に係る事項について、同組合員に未払残業代が発生していないとする理由を具体的に説明し、また、同組合員のタイムカードの写しを提供しない場合は、その理由を具体的に説明するなどして、団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年  月  日
 組合
  執行委員長 A1様
法人
 理事長 B1

 当法人が、平成29年7月20日に開催された団体交渉において、①貴組合員A2氏の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を一切行わなかったこと、②同氏のタイムカードの写しについて、提供しない理由の説明を行うことなく、その提供を拒否したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 29.7.20団交において、法人が、A2組合員の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を行わなかったことについて
ア 法人はそもそも残業代を支払っていない旨答えているのであるから、組合が主張する残業代の具体的な内容を把握することができなくとも、A2組合員に残業代を支払わなかった理由について、何らかの具体的な説明をすることは可能であったといえるから、組合が主張する残業代の具体的な内容を把握することができないため、残業代を支払わない理由を具体的に検討して回答することは不可能であった旨の法人主張は採用できない。
イ 29.7.20団交において、組合が、A2組合員の未払残業代が発生していない根拠として,管理監督者であること、固定残業代として既に支払っていること、残業は一切していなかったことの3点しか考えられないが、どれに当たるのか尋ねたのに対し、法人は、残業に必要な手続を踏んでいないことを付け加え、4つとも当てはまる場合もあると思う旨等回答していることが認められる。
 法人は、上記をもって誠実な回答を行った旨主張するが、法人は、そもそも残業代を支払っていない旨答えており、残業代を支払わなかった理由を具体的に答えることが可能であったのだから、一般論で、しかも4つとも当てはまる場合もあると思うなどと答えたことをもって、誠実に対応したということはできない。
ウ したがって、29.7.20団交において、法人がA2組合員の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を行わなかったことは不誠実な対応といえる。

2 法人が、本件タイムカードの写しの提供を拒否したことについて
 29.7.20団交において、法人が、給与規程に基づき残業手当を支払わず、管理職手当を支払っている旨述べたことに対し、組合は、①給与規程には、管理職手当について、固定残業代を含む旨の記載は一切なく、何を根拠に法人が固定残業代と言うのか不明である旨、②管理職手当等が固定残業代には当たらないという認識であるが、残業代を請求するにしても、きちんと計算をして請求したいと考えている旨等述べていることからすると、29.7.20団交で、組合は、本件タイムカードの写しを要求する根拠を具体的に述べていると解するのが相当である。
 組合は、本件タイムカードの写しを要求する根拠を具体的に説明しているといえるにもかかわらず、法人が、本件タイムカードの写しを提供すべき理由を理解できないと繰り返すだけであったことは、組合の主張に対して、提供できない理由を具体的に説明したとみることはできず、法人のこのような回答は不誠実といわざるを得ない。.

3 結論
 29.7.20団交において、法人が、A2組合員の未払残業代が発生していないことについて具体的な説明を一切行わなかったこと及びA2組合員のタイムカードの写しを提供できない理由の説明を行うことなく、A2組合員のタイムカードの写しの提供を拒否したことは、誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する誠実団交義務を尽くしたとはいうことができないことから、不誠実団交に当たるといえ、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成31年(不再)第1号 一部変更 令和2年11月4日
 
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