労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第58号
日本空手協会(懲戒解雇)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  公益社団法人Y協会(「協会」) 
再審査被申立人  労働組合X(「組合」) 
命令年月日  令和2年11月4日 
命令区分  取消、棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、協会に雇用され空手道の指導等を行う総本部指導員らが結成した労働組合の執行委員長Aの懲戒解雇(「本件懲戒解雇」)が、労働組合法(「労組法」)第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会(「東京都労委」)は、本件懲戒解雇が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると判断し、協会に対し、本件懲戒解雇をなかったものとしての取扱い、原職復帰、バックペイ及び文書交付・掲示を命じたところ、協会は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却した。 
命令主文  初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 組合は、労組法上の労働組合といえるか
 組合は、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としていると認めるのが相当であり、その他、労組法第2条ただし書各号の事由も認められないのであるから、労組法上の労働組合といえる。
(2) 本件懲戒解雇は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか
 本件懲戒解雇までに行われた組合の活動としては、4通の質問状や要求書等の提出及び1回の団交申入れに限られ、その内容も申立外「総本部指導員有志」(「有志」)の活動の内容と類似し、協会の組織編成に関する内容を含むものであった。
 他方、当時の協会の状況をみるに、26年8月に、当時の協会経営陣を批判する文書が配布され、その直後の同年9月に、会員に通知することなく施行された倫理規程に基づき会員が処分され、さらに、27年1月末日に、当時の会長らの解任を求める臨時社員総会が開催される等、反経営陣活動が活発化し、協会内部における勢力の対立構造が顕在化してきたことがうかがわれる。
 このような状況下で、Aが上記文書の名義人の一人になっていることや、協会内部における勢力の対立構造の顕在化と時を同じくして行われた上記の組合の活動の内容を踏まえると、協会が、組合の活動を、労働組合としての活動ではなく、A個人の反経営陣活動として理解していたとしても無理からぬものといえる。
 また、本件懲戒解雇の解雇理由として挙げられている、Aが他の指導員を引き連れて当時の会長らの解任を求める臨時社員総会の会場であるホテルに赴いていたことは、外見的に組合の活動であることが明らかとはいえない態様で行われたものであって、協会がこれを組合の活動であると認識していたとは認め難い。そればかりか、上記のような協会内における勢力の対立構造の顕在化した状況を踏まえると、Aがホテルに赴いて待機していたことは、反経営陣活動であるとして、協会が問題視していたものと考えるのが相当である。
 さらに、本件懲戒解雇に先立つ事情聴取は、当時の経営陣批判に関連する行為又はA個人の行為を問題とするものであって、組合の労働組合としての活動そのものを問題視していた様子もうかがわれない。
 上記のような組合の活動の内容や協会内部の対立構造の顕在化という状況、協会のAに対する事情聴取の内容からすると、本件懲戒解雇は、Aが反経営陣活動をしたことを理由としてされたものであると考えられ、本件懲戒解雇は、Aが労働組合の組合員であること又は労働組合としての活動をしたことを理由としてされたものとまでは認められない。
 したがって、本件懲戒解雇は、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。
(3) 本件懲戒解雇は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
 上記(2)のとおり、本件懲戒解雇は、Aが労働組合の組合員であること又は労働組合としての活動をしたことを理由としてされたものとまでは認められない。加えて、本件懲戒解雇は、Aが反経営陣活動をしたことを理由としてされたものであると考えられることも踏まえると、協会が、本件懲戒解雇によって、A個人の活動やAが賛同した反経営陣活動を弱体化するような意図を有していたとしても、労働組合としての組合を弱体化するような意図までは認めることができず、本件懲戒解雇は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。
(4) 結論
 本件懲戒解雇は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たらないから、初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成27年(不)第38号 全部救済 平成30年10月3日
 
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