概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成29年(不再)第24号
日本空手協会不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y協会 |
再審査被申立人 |
X組合 |
命令年月日 |
平成30年10月3日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、Yが、Yに雇用され空手道の指導等を行う総本部指導員らが結成したXからの平成27年2月18日(以下「平成」を省略)、Xの執行委員長Aの懲戒解雇を議題とする団体交渉申し入れに対し、これに応じなかったことが正当な理由のない団体交渉の拒否に当たり、不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会(以下「東京都労委」という。)は、Yに対し、団体交渉を拒否したことには正当な理由は認められず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、文書交付及び掲示を命じたところ、Yは、これを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
本件団体交渉申入れに対するYの対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たり、労組法第7条第2号の不当労働行為が成立し、救済利益も消滅しているとはいえないから、初審命令は相当と判断する。その理由は次のとおりである。
争点1 団体交渉申入れに対する対応について
ア Yは、Xは、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とする存在ではなく、Xの団体交渉当事者としての適格性に疑問があると主張する。
しかし、Xが26年12月24日付け団体交渉申入れ等により給与、賞与、人事異動、定年制の撤廃等組合員の労働条件について質問や要求をしていることは明らかであり、外にYが指摘するXの行動や要求自体が直ちに組合員の労働条件に無関係であるとはいえないから、Xの主たる目的が組合員の労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることではないということはできない。また、組合員とされている者は単なる名義貸与者にすぎないとするYの主張を認めるに足りる証拠はなく、同主張を採用することはできない。その外、Xの資格証明書、結成大会の具体的日時・場所・参加者及び決議事項、組合員氏名等の開示を求める協会からの求釈明事項にX又はAの回答がなければ団体交渉の開催に支障が生ずるものであったとは認められない。
イ Yは、Xから結成通知を受けた26年6月20日以後、同年12月24日付け団体交渉申入れ等において組合員の労働条件についての質問や要求を受けたにもかかわらず、Xに対して返答してこなかった。そして、本件団体交渉申入れに係る団交事項は、Aが懲戒解雇されたことを議題とするものであるから、義務的団交事項に当たることはいうまでもなく、早期の対応が求められるものであるにもかかわらず、従前の対応を変えることがなかった。YがXへの対応の意思を示したのは、東京都労委に救済申立てが行われた後の本件団体交渉申入れから約4か月経過後のことである。現実に団体交渉が開催されたのは、さらに1年5か月後の28年11月8日であることをみても、Yが相当な期間内に団体交渉に応じる意思を示したということはできない。上記によれば、Xの団交当事者としての適格性を検討するため、Yの求釈明事項に対するX及びAの回答を待つことは、Yが団体交渉を拒否する正当な理由とは認められない。
争点2 救済利益の有無について
ア 東京都労委の本件救済申立てに係る手続の結審予告後である28年11月8日に第1回団体交渉が行われ、その後本件再審査の結審時までにXとYとの間において4回の団体交渉が行われたが、上記争点1のイに記載したとおり、1年9か月後まで団体交渉を一度も開催しなかったYの対応は時期を逸しているものといわざるを得ず、団体交渉におけるYの発言からは、Yが団体交渉により正常な集団的労使関係秩序を回復しようとしているとは認められないのであって、5回の団体交渉が開催されたことによっても、組合の団体交渉権に対する侵害状態が完全に除去、是正されたとはいえない。したがって、本件再審査の結審時において、文書交付及び掲示の救済命令を発する必要が認められる。
イ Yは、東京都労委が救済利益を否定すべき重要な事情の変更を認識しながら、第2回の団体交渉を待たずに結審し、初審命令を発したことは適正手続に反する違法がある旨主張する。
しかしながら、上記アに記載したとおり、救済利益は消失していないこと、加えて、東京都労委が結審した時点において、Aの懲戒解雇についての誠実な団体交渉が開催される可能性が具体的に予見される状況にあったとは認められないことから、東京都労委の審査の手続に違法があるとはいえない。 |
掲載文献 |
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