労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第21号
交通機械サービス不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X労働組合(以下「組合」) 
再審査被申立人  株式会社Y(以下「会社」) 
命令年月日  令和2年6月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①契約の更新に当たり組合員A1及び同A2との労働契約期間を6か月から3か月に短縮したことが労組法第7条第3号に、②組合の支部長A3を平成30年1月以降嘱託採用しないことが同条第3号及び第4号に、③A2の平成29年12月30日付け退職願の撤回を認めないことが同条第3号にそれぞれ該当する不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審東京都労委は、救済申立てに係る各事実は、いずれも不当労働行為に該当しないとして、救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、本件申立てをいずれも棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)会社が、A1及びA2との労働契約期間を6か月から3か月に短縮したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
 ア 契約社員全11名のうち、従来の労働契約期間が維持された2名は、定年間近であるために労働契約期間短縮措置の対象外となったものである。そして、会社は、定年までおおむね2年以上あるなどの一定の要件を満たす者については、A1及びA2だけでなく、非組合員を含む9名全員を同措置の対象とし、平成29年7月以降10月1日までに契約社員7名の契約期間を6か月から3か月に短縮しているのであるから、同措置は、組合員であるか否かにかかわらず、従業員に一律に適用されたというべきであり、組合員を狙い撃ちにしたものであるとの組合の主張は、採用することができない。
 イ よって、会社が、A1及びA2との労働契約の期間を6か月から3か月に短縮したことが、不当労働行為に当たるということはできない。
(2)会社が、A3を平成30年1月以降嘱託採用しないことは、労組法第7条第3号又は同条第4号の不当労働行為に該当するか
 ア A3は、平成29年5月8日頃、副所長に対し、65歳定年退職後、会社を辞めるとの趣旨の発言をし、会社は、A3が同年12月末日をもって定年退職する旨発言していることを把握して、補充要員を求め、同年9月1日付けでB1事業所にエルダー社員を配属したものであり、その会社の行動が、組合活動の中心的人物を排除する意思によるものであったということはできない。
 イ 組合は、正規社員は定年後の希望者は全員が嘱託として採用されてきた慣例が存在していたとして、総務部長も70歳まで嘱託としての任用が保証されている旨を明言したと主張し、また、B1事業所において定年後も希望者は全員嘱託採用されていたこと等は、定年退職者と嘱託社員の数から明らかであると主張する。
  (ア)しかし、まず、平成25年3月の本社とB1事業所との居酒屋での会合における総務部長の発言は、その会話の内容、状況等に照らすと、「会社が必要と認めたときは嘱託として期間を定めて勤務させることができる」との就業規則の定めを超えて希望者全員の嘱託採用を保証することを明言したものと解することはできない。
  (イ)次に、平成24年度から平成29年度までの定年退職者数及び定年後嘱託者数を見ても、これらの実績集計数のみからはなお、B1事業所において希望する者が全て嘱託者とされていたとまでは判断し難い上、A3の定年退職の3年前から既に定年退職後の嘱託採用の実績はなくなっていたことが認められる。
  そうすると、B1事業所において定年後の嘱託採用希望者が全員嘱託採用されてきた慣例があったと推認することはできない。
 ウ 上記に加え、会社がA3を嘱託採用しなかったことが、A3が東京都労委の審問において証言することを妨げる意図でなされたことや、救済申立てを理由になされたことを示す証拠もない。
 エ 以上のことから、会社が、A3を平成30年1月以降嘱託採用しないことが、不当労働行為に当たるということはできない。
(3)会社が、A2の平成29年12月30日付け退職願の撤回を認めないことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
 ア A2は、平成29年12月23日、所長に対し、平成30年1月末日をもって退職したい旨を自ら申し出た。平成29年12月30日、所長は、A2と面談を行い、退職意思を複数回確認したが、A2は、退職の意思は変わらない旨回答したため、所長は、退職手続を説明し、A2は、同日付け退職願を作成し、同日、所長に提出した。同退職願は、平成30年1月9日までに所長により本社へ送付され、総務部長及び代表取締役による決裁がなされた。
 イ A2は、総務部長に対し、平成30年1月19日頃、退職の意思表示の撤回をする旨の電話をしたが、このときA2より特段の退職願の撤回を要する事情は示されていない。社員就業規則によれば、社員が退職を願い出て会社が承認したとき、当該社員はその身分を失うものとされているところ、上記の経緯からすれば、A2の退職願撤回の申出を会社が認めなかったことが不合理とはいえない。また、会社は、所長からA2が退職する旨の情報を受けた後、その補充としてエルダー社員受入れの準備作業を進め、同月16日頃までにはA2の後任者を決定していたものであり、会社がA2の退職願の撤回に応じられないとしたことには相当の理由があったというべきである。
 ウ 会社は平成29年11月1日付けでA2を正社員としていたこと、所長がA2の退職意思を複数回確認していることからすれば、会社がA2を殊更嫌悪等していたものとは考え難い。
 エ 以上のことから、会社が、A2の平成29年12月30日付け退職願の撤回を認めないことが、不当労働行為に当たるということはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成29年(不)第72号 棄却 平成31年3月19日
 
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