労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第72号
交通機械サービス不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社(「会社」) 
命令年月日  平成31年3月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  本件は、①会社が、組合員A2及びA3との労働契約について、契約期間を6か月から3か月に短縮したことは、組合の運営に対する支配介入に当たる、②会社が、A4支部長を平成30年1月以降、嘱託採用しないことは、組合の運営に対する支配介入又は東京都労働委員会への救済申立てを理由とする不利益取扱いに当たる、③会社が、A3の平成29年12月30日付退職願の撤回を認めないことは、組合の運営に対する支配介入に当たるとして、組合が救済申立てを行った事件であり、東京都労働委員会は申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社が、A2及びA3との労働契約について、契約期間を6か月から3か月に短縮したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点1)
ア 契約社員全11名のうち、従来の労働契約期間が維持された2名は、定年間近であるために労働契約期間短縮措置の対象外となったものである。そして、会社は、定年までおおむね2年以上あるなどの一定の要件を満たす者については、A2及びA3だけでなく、非組合員を含む9名全員を同措置の対象とし、平成29年7月以降10月1日までに契約社員7名の契約期間を6か月から3か月に短縮しているのであるから、労働契約期間短縮措置は、組合員であるか否かにかかわらず、従業員に一律に適用されたというべきであり、組合員を狙い撃ちにしたものであるとの組合の主張は、採用することができない。
イ また、会社は、同措置対象者のうち、就労継続意思があり、業務遂行等に特段の問題がない者には、契約更新時に正社員登用を打診しており、A2及びA3もその打診を受け、希望したA3は正社員に登用されている。加えて、同措置導入後、契約期間満了のみを理由として雇止めをされた従業員はいない。したがって、本件労働契約期間短縮措置の導入により、同措置対象従業員の雇用が不安定になった事実は認められず、同措置によって、組合員に具体的な不利益が生じたとはいえない。
ウ よって、会社が、A2及びA3との労働契約の期間を6か月から3か月に短縮したことが、不当労働行為に当たるということはできない。
2 会社が、A4支部長を平成30年1月以降、嘱託採用しないことは、組合の運営に対する支配介入又は東京都労働委員会への救済申立てを理由とする不利益取扱いに当たる否かについて(争点2)
ア 会社の定年後の嘱託採用について、A4支部長の定年直近の5年間をみると、本社を含めた会社全体では、定年退職者36名中30名が嘱託採用されており、その割合は約83パーセントと相当高い割合で定年退職者が嘱託採用されていることが認められる。しかしながら、本社とY2事業所における業務の違いから、その定年後の嘱託採用の必要性にも違いがあること、Y2事業所においては、平成26年以降、定年退職後に嘱託採用された実績がないことからすると、嘱託採用希望者が全て雇用継続されてきたとまで認めることはできない。したがって、会社において、定年退職者のうち嘱託採用希望者は一律に嘱託採用されるとの組合の主張は認められない。
イ A4支部長は、平成29年5月8日頃に、B2副所長に対し、65歳定年退職後、会社を辞めるとの趣旨の発言をしている。会社が、当該発言を受けて、Y2事業所にエルダー社員を配属したことは、A4支部長の意向を踏まえた対応として無理からぬことであり、組合活動の中心人物を排除する意思によるものであったとまで認めることは困難である。
ウ さらに、A4支部長は、会社に対し、11月24日付けで「継続雇用のお願い」を提出してはいるが、再雇用を希望する意思を明示しなかったのであるから、既に同支部長の補充要員を配属していた会社が、A4支部長を嘱託採用しないという判断を維持したことも不自然とはいえない。
エ 加えて、会社が、組合を嫌悪していたと認めるに足りる事実の疎明もないことから、A4支部長の嘱託不採用は、組合の運営に対する支配介入に当たるとは認め難い。また、救済申立てを理由とする不利益取扱いにも当たらない。
3 会社が、A3の平成29年12月30日付退職願の撤回を認めないことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点3)
ア A3は、平成29年12月23日、B3所長に対し、平成30年1月末日をもって退職したい旨を自ら申し出ており、会社は、その後任者となるエルダー社員を遅くとも1月16日頃までには決定していた。A3が、B4総務部長に対し、退職の意思表示の撤回を希望する旨を電語で伝えたのは、1月19日であり、社員就業規則第15 条によれば、社員が退職を願い出て、会社が承認したとき、当該社員はその身分を失うのであって、撤回を認めるべき事由もないことから、会社が、12月30日付退職願の撤回を認めなかったことに非があるということはできない。
イ さらに、会社は、上記アのとおり、A3の後任予定者となるエルダー社員を、遅くとも1月16日頃までには決定しており、A3の退職願を撤回すれば、A3の依願退職を前提として進めた人員計画に影響が出ることとなるから、会社には、12月30日付退職願の撤回に応じられない相応の理由があったと認められる。
ウ 加えて、会社には、組合又は組合員であるA3を嫌悪していたとうかがえる事情は認められず、会社が、殊更に組合員を排除しようとしていたとはいえない。
エ 以上のことから、会社が、A3の12月30日付退職願の撤回を認めないことが、不当労働行為に当たるということはできない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和元年(不再)第21号 棄却 令和2年6月3日
 
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