労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第63号
祐愛会不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y法人 
再審査被申立人  X1組合 
命令年月日  令和2年6月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、Y 法人が、X2組合の執行委員長である組合員Aに対し、介護事故を理由として平成28年8月19日付けで譴責の懲戒処分を行ったこと(「本件譴責処分」)、人事考課における低評価を理由として基本賃金の月額を引き下げたこと、賞与を支給しなかったこと等が、労働組合法第7条所定の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審沖縄県労働委員会は、上記1の行為のいずれも労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たると判断して、Y法人に対し、本件譴責処分がなかったものとしての取扱い(初審命令主文第5項)、基本賃金の月額の引下げがなかったものとしての取扱い及びバックペイ、支給率を100%等として算出した賞与の支払等を命じる初審命令を発したところ、Y法人は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 Y法人は、令和2年3月23日、本件譴責処分を除く部分について、再審査申立てを取り下げた。
4 再審中労委は、初審命令の一部を取り消し、これに係る救済申立てを棄却した。 
命令主文  初審命令主文第5項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)本件譴責処分は、労組法第7条第1号に当たるか
ア本件譴責処分の不利益性について
本件譴責処分は、始末書を提出させ、文書をもって将来を戒めるものとする人事上の不利益取扱いである。
イ本件譴責処分の合理性について
Aは、平成28年6月4日、本件施設入居者Cへの本件打撲事故を発生させて、同年8月19日付けで本件譴責処分を受けたが、Cには筋力の低下が認められることから、転倒防止のために、入浴用チェアーを手すり側に向けるべきであり、また、介護者としてその場を離れるべきでなかったにもかかわらず、Aはこれらを怠った。そうすると、本件打撲事故はAの過失によって生じたものであるといえることから、Cへの本件打撲事故については、Aには、Y法人が懲戒事由として主張する注意義務違反が認められる。
X1組合及びX2組合の主張するとおり、Y法人においては、A以外の介護職員には、介護事故で懲戒処分を科した例はないものと認められる。しかしながら、いずれも事故の予見が困難であったものや、職員が直近で介護事故を起こしていないことを考慮したものであることがうかがわれ、本件打撲事故とは事情が異なるものと言わざるを得ない。
そして、Y法人が把握している介護事故の中で、少なくとも同じ介護担当者が1年以内に同種の態様・過失によって生じさせたものは、Aによる本件打撲事故以外には存在しないことが認められ、このことからすれば、本件打撲事故におけるAの責任を、他の介護事故における他の介護職員の責任に比べて重く見て、本件譴責処分を行うことには合理性があるといえる。
次に、本件譴責処分の程度が相当といえるか検討するに、懲戒処分としても、訓告に次いで軽いものであり、処分を受けた者に直接的に経済的な負担を強いるものではない。そうすると、譴責という懲戒処分が重きに過ぎるということはできず、量定についても合理性があると認められる。
以上の次第であることから、本件打撲事故を原因としてAに本件譴責処分を科すことに合理性が認められる。
ウ労使関係について
本件譴責処分の当時においても、対立関係が継続していたことが強く推認される。
エ不当労働行為の成否について
Aが本件譴責処分を受けたのは、Aが注意義務違反により本件打撲事故を発生させたこと及び同人が1年も経過しない中で同様の原因による介護事故を発生させたことを理由とするもので、Y法人が懲戒事由として主張する注意義務違反があったと判断できるものであり、それら行為は、組合員でない者が主体であったとしても、同様の懲戒処分がなされた可能性があるといえる。また、処分内容として譴責が選択されたことも、直接的に経済的負担を負わせるものでなく、Aに与える影響が軽いものといえる。
そうすると、本件譴責処分は、Aが組合の組合員であることの故をもって、Aに不利益取扱いをしたものとは認められない。
したがって、本件譴責処分は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(2)本件譴責処分は、労組法第7条第3号に当たるか
本件譴責処分は、本件打撲事故を原因とする本件譴責処分に合理性があり、Y法人が同処分により殊更組合を弱体化しようとしたとみることもできない。
したがって、本件譴責処分は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
沖縄県労委平成28年(不)第3号・29年(不) 第1号 全部救済 平成30年10月18日
 
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