労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第29号
都留文科大学不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X教職員組合(「組合」) 
再審査被申立人  公立大学法人Y大学(「法人」) 
命令年月日  令和2年3月4日 
命令区分  初審取消・一部救済 
重要度   
事件概要  1 本件は、①法人が平成27 年3 月21 日に制定した退職手当規程(「27 年退職手当規程」)に関する団体交渉(「団交」)及び②法人が28 年1 月6 日に制定した学科長規程に関する団交における法人の各対応が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがされた事件である。
2 初審山梨県労委は、組合は労働組合法(「労組法」)第2 条ただし書第1 号に該当する者を含む団体であり、労組法の規定に適合しないと判断し、救済申立てを却下する決定をした。
 組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
 なお、組合は、再審査において救済申立てを追加しているが、当該追加申立てが再審査の範囲に含まれるか否かについては争いがある。
3 再審中労委は、初審命令を取り消し、文書交付を命じ、その余りの再審査申立てを棄却した。 
命令主文 
1 初審決定を取り消す。
2 再審査被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を再審査申立人に交付しなければならない。

令和 年 月 日
組合
執行委員長A1 殿

法人
理事長 B1
平成28年1月 1 3 日に行われた貴組合との学科長規程に係る団体交渉における当法人の対応は、中央労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後、このようなことを繰り返さないように留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 その余の救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 申立人適格について
 組合員には教育研究審議会(「教研審」)の構成員である学科長が含まれているが、①学科長は教員に対する直接の懲戒権限や、教員の採用・昇任について直接の評価権限を有しているわけではない。また、学科長が教研審に付議される人事案件に関して有する権限は直接的なものではなく、教研審で接し得る人事案件が労組法第2 条ただし書第1 号にいう労働関係についての計画と方針とに関する機密事項であったともいえない。②実際の学科長の位置付けを見ても、法人側の代表というよりは、学科所属の教員の代表者としての側面が強く、組合及び法人の双方が学科長をそのように取り扱っていたものと認められる。上記①、②に照らすと、学科長が教研審の審議過程に関与していたために、その職務上の義務と責任とが組合員としての誠意と責任に直接抵触するという状況が生じていたとは考え難い。したがって、学科長は使用者の利益代表者には該当せず、学科長が加入する組合は申立人適格を有する。
2 27 年退職手当規程に係る団交について
 法人は、27 年退職手当規程に係る各団交において、同規程の制定理由及び法人が提案する調整率引下げの根拠について説明している。また、組合からの調整率引下げの見直し等の要望につき検討し、調整額の引上げ等の譲歩案を提案している。これらの法人の対応は誠実交渉義務に違反したものとはいえず、支配介入にも当たらないことから、労組法第7 条第2 号、第3 号には該当しない。
3 学科長規程に関する団交について
ア 法人が提案した学科長規程のうち、一部の規定については組合と合意に至らず、28 年1 月13 日の団交で引き続き交渉が予定されていたにもかかわらず、法人は団交に先立つ同月6 日に上記の提案のまま学科長規程を制定し、同月13 日の団交では、予定されていた団交前に学科長規程を制定した理由・経緯について何ら説明をしなかった。かかる法人の対応は、不誠実といわざるを得ず、労組法第7 条第2 号に該当する。
イ 学科長規程に係る法人の対応には、組合との交渉を軽視し、組合をないがしろにする面があることは否めないが、28 年1 月13 日の団交における法人の対応が、組合の弱体化や、組合の運営・活動の妨害を図るような行為であったとまではいえず、労組法第7 条第3 号には該当しない。
4 組合員3 名の配属について
ア 法人は、28 年11 月9 日に、30 年度に設置する教養学部地域社会学科の専任教員の配属を決定した。当該決定は、29 年度末をもって学生募集停止となる社会学科の専任教員のうち、組合員3 名を除く全員を新学科の専任教員として配属するものであった。
イ 山梨県労委は29 年4 月13 日に救済申立ての却下を決定し、同月21 日に初審決定を交付した。組合は、同月20 日に組合員3 名の配属等に係る救済申立てを記載した準備書面を同労委に提出した。本件の事情の下では、上記の準備書面に記載された追加の救済申立ては、初審において請求されたものとして、再審査の対象となるものと解すべきである。
ウ 法人がした上記アの決定は、新学科に配属しない旨の決定であり、組合員3 名についての不利益な取扱いに該当し、新学科への専任教員の配属について人選の合理性は認め難いものの、組合員3 名が組合員でなければ、新学科に配属されていたであろうとまでの推認をすることは困難であって、法人が上記決定をしたことが、組合員であることを理由として行われたとまでは認められないから、労組法第7 条第1 号には該当しない。また、上記決定は、組合の弱体化効果をもつものとは認められないから、労組法第7 条第3 号にも該当しない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山梨県労委平成28年(不)第1号 却下 平成29年4月13日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約944KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。