事件番号・通称事件名 |
中労委平成30年(不再)第23号
小高坂更生センター不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X労働組合 |
再審査被申立人 |
社会福祉法人Yセンター |
命令年月日 |
令和2年3月18日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、法人が、組合員Aに係る提示額と実際に支払われた賃金
額との差額の支払、安全配慮義務違反による精神疾患の発病に対する損害の補償及び再発防止対策等安全配慮義務の履行並びに時
間外・休日労働に係る不払賃金の支払を交渉事項とする組合からの団体交渉申入れに対する①第1回から第6回までの団体交渉に
おける対応が不誠実であったこと、②第7回団体交渉申入れを拒否したことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事
案である。
2 初審高知県労委は、本件申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令を変更した。 |
命令主文 |
初審命令を次のとおり変更する。
1 平成26年6月25日から平成28年1月18日までの間の6回の団体交渉に係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件申立ての申立期間に係る適法性について
本件申立ては平成29年7月6日にされているから、同28年9月20日付けの第7回団体交渉申入れに対し、法人が、同月
27日、組合と団体交渉を行う考えはない旨回答し、団体交渉を拒否した行為に係る本件申立ては、労働組合法(労組法)第27
条第2項の申立期間内のもので適法である。
これに対し、平成26年6月25日から同28年1月18日までに実施された第6回までの団体交渉における法人の対応に係る
本件申立ては、同項の申立期間を徒過したもので、不適法として却下を免れない。
2 第7回団体交渉申入れの拒否の労組法第7条第2号該当性について
第6回までの団体交渉において、組合と法人双方はそれぞれ十分に主張をしており、しかも、法人は、組合からの説明要求に対
し、組合の主張の内容及び程度に応じた説明をしており、団体交渉の総時間数は第1回から第6回までの合計で約7時間50分に
及び、団体交渉にはいずれも法人の理事長が出席していることについても併せ考えれば、法人は誠実交渉義務を尽くしたといえ
る。
そして、第6回団体交渉後に組合から出された質問書の質問事項は従前と同一であり、これに対し、法人が、回答書において従
前と同じ内容の回答をした上で、第6回団体交渉から4か月を過ぎても同じことの繰り返しであり、これ以上交渉しても平行線な
ので団体交渉はこれをもって終了する旨の文書回答をしている。
そうすると、第6回団体交渉が終了し、その後に書面のやり取りをした段階では、双方の主張は平行線をたどっており、団体交
渉を継続すべき特段の事情もなく、もはや団体交渉は行き詰まり、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至ってい
るというべきであるから、第7回団体交渉申入れを法人が拒否したことは、正当な理由があり、労組法第7条第2号の不当労働行
為に当たらない。
3 結論
上記1のとおり、第6回までの団体交渉における法人の対応に係る本件申立ては、不適法として却下を免れない。また、上記2
のとおり、第7回団体交渉申入れの拒否に係る本件申立ては理由がないから棄却すべきである。これと一部異なる初審命令は相当
でないから、初審命令を主文のとおり変更する。 |
掲載文献 |
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