概要情報
事件番号・通称事件名 |
高労委平成29年(不)第1号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y法人(「法人」) |
命令年月日 |
平成30年3月16日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人情報センターの開設の準備段階で示されていた賃金額と実際に支払われてきた賃金額との差額の支払等に係る団体交渉について、①第1回~第6回の法人の対応、②第7回団体交渉申入れを法人が拒否したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、高知県労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 賃金の差額の支払について
組合からの196,900円を前提とする差額支払要求に対し、法人が応じられない姿勢を示すことは、やむを得ないと考えられ、そのような中で法人は団体交渉で一定の説明も行っており、法人の団体交渉での対応は不誠実なものとはいえない。また、団体交渉における双方の主張は平行線をたどっていたものであるため、法人が正当な理由なく団体交渉に応じなかったとはいえないことから、労働組合法第7条第2号の不当労働行為には該当しない。 2 安全配慮義務違反による損害の補償等について
労災保険において業務起因性が認められておらず、組合から具体的な安全配慮義務違反の内容も示されない以上、団体交渉において法人が自らに義務違反がないという回答に留まるのも無理からぬところがあり、法人の対応は不誠実なものとはいえない。また、団体交渉における双方の主張は平行線をたどっていたものであるため、法人が正当な理由なく団体交渉に応じなかったとはいえないことから、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 3 時間外・休日労働に係る不払賃金の支払について
法人が不払賃金の存在を認めていない状況からすると、交渉を進展させるためには、組合がまず自らの主張する時間外・休日労働の実績について、その根拠とともに要求する必要があると考えられる。
団体交渉の状況をみると、組合は、第1回団体交渉で示した時間外・休日労働に関する資料の内容について、法人から業務命令に基づかず支給できない旨回答されて以降、法人における変形労働時間制や代休処理の運用の違法性を指摘するに留まり、かえって法人に時間外・休日労働の実績を算出するよう要求している。
このような状況においては、法人が不払賃金の支払要求に応じられない姿勢を示すことはやむを得ないと考えられることから、法人の対応は不誠実なものとはいえない。また、団体交渉における双方の主張が平行線をたどっていたものであるため、法人が正当な理由なく団体交渉に応じなかったとはいえない。
なお、法人が団体交渉に応じない意向を示した後、組合が平成28年10月12日に改めて具体的な請求額を示して継続協議を求めているが、A2組合員の退職後2年以上を経過してようやく具体的な要求が示されたという事情からすると、法人が時効を理由に団体交渉に応じなかったこともやむを得ないものである。
以上のことから、法人の対応は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 |
掲載文献 |
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