概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和元年(不)第30号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和2年4月20日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が組合からの団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、会社に対し、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、団体交渉の応諾とともに、文書の交付・掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人からの平成31年4月1日付け要求書、令和元年5月23日付け要求書及び人事異動についての同年7月25日付け要求書に係る団体交渉申入れに応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートルX横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人B2支店及びB3営業所の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
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記 |
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年 月 日
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組合
執行委員長 A 様
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会社
代表取締役 B1
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当社が、貴組合からの平成31年4月1日付け要求書、令和元年5月23日付け要求書及び同年7月25日付け要求書に係る団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
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判断の要旨 |
(争点)本件要求書に係る団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。
(1)組合が、本件要求書の要求事項について、団交を求めていたことは明らかであり、その要求事項は、組合員の労働条件や待遇及び団体的労使関係の運営に関連しており、義務的団交事項に当たるといえる。これに対し、会社は、組合に組合規約等の提出を求め、提出された組合規約に不備があるとし、これが是正されない限り、団交に応じないとの対応を取っていたというのが相当である。
(2)そこで、上記のような会社の対応について検討する。
労働組合法第5条第2項は、労働組合の組合規約が規定しなければならない事項を定めているところであるが、労働組合法第5条第1項及び労働委員会規則第22条は、労働組合が、同法に定める手続に参与し、又は救済を求めようとする場合や法人登記のための資格証明書の交付を求めようとする場合等は、労働委員会に対し、その組合規約が労働組合法の規定に適合していることを立証しなければならないと定めているのであって、団交に先立ち、労働組合は、使用者に対し、組合規約が労働組合法第5条第2項の規定に適合していることを立証しなければならないと定めているものではない。そうだとすれば、本件において、仮に、組合規約に労働組合法の規定に適合していない点があったとしても、そのことをもって団交に応じない正当な理由とすることはできない。
しかも、組合が、7.25組合文書にて、組合規約の不備を理由に、団結権及び交渉権を認めないことは社会通念上認められないとしながらも、組合規約のどこが労働組合法に抵触し、どう是正すれば適法になるかを具体的に教示されれば、是正していく用意はあることを通知し、団交を求めたのに対し、会社は、8.8会社回答書にて、具体的な箇所を挙げることなく、組合規約の不備については、組合が検討し、組合規約を改正したら、改めて会社に提出するよう求める旨返答したことが認められる。かかる会社の対応をみると、会社には、組合の求めに応じて団交を開催しようとする姿勢が欠けているというべきであり、団交開催の引き延ばしを図るために、組合規約に不備があるとの主張をしていたと判断せざるを得ない。
(3)ところで、会社は、組合が労働組合法上適法な組合であることを組合資格審査で確認しないまま審問に入るのは違法である旨主張するが、組合資格審査の決定は救済命令を発するまでにされていれば足りると解するのが相当である。なお、当委員会は、本件申立てに係る組合資格審査について、令和2年4月8日の公益委員会議において、組合が労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合する労働組合であることを認め、その旨決定した。
(4)以上のとおり、会社は、本件要求書に係る団交申入れに対し、正当な理由なく応じなかったのであり、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |
掲載文献 |
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