労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委平成30年(不)第5号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年2月10日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合及び組合のA2分会との平成30年5月31日及び6月7日の団体交渉において、組合及びA2分会からの定期昇給を含む同年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求に関し、当該賃上け及び夏季一時金の算定の基礎となった資料の提示及び具体的な説明を行わなかったこと並びに同月15日に団体交渉を開催しなかったことが労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、同年7月6日に申し立てられた事件である。
 愛知県労働委員会は、会社に対し、労組法第7条第2号の不当労働行為であるとして、誠実な団交及び文書の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が申し入れた定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る団体交渉について、申立人に対し、被申立人の回答の根拠を具体的に説明するとともに、被申立人の貸借対照表、損益計算書その他会社の財務状況を把握するための資料を示して誠実に対応しなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。
 当社が、平成30年5月31日及び6月7日の団体交渉において、定期昇給を含む同年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求に関し、当該賃上げ及び夏季一時金の算定の基礎となった資料の提示及び具体的な説明を行わなかったこと並びに同月15日に団体交渉を開催しなかったことは、いずれも労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
年 月 日
組合
 執行委員長 A1 様
会社         
代表取締役 B 
判断の要旨  1 平成30年5月31日及び6月7日の団体交渉における定期昇給を含む同年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求に対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。(争点1)
ア 第1回団交及び第2回団交における会社の対応は、定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る議題であるにもかかわらず、売上げ、利益等の会社の財務状況が分かる資料を組合に対して示さず、会社の財務状況を把握するための資料とはいえない資料を示したのみで、当該資料と会社の回答額との関連についての説明をしなかったものであって、当該議題について組合と合意達成の可能性を模索したものではなく、誠実に団体交渉に当たったものとはいえない。
イ 会社は、非公開会社にとっての計算書類は会社法その他の法令で利害関係者に開示を義務付けられる場合を除き開示を義務付けられるものではない旨及び組合に対する説明義務の観点で重要なのは過去の労使交渉の慣行ないし支給水準との比例であることから必ずしも計算書類の開示を伴った説明を義務付けられるものではない旨主張する。
 団体交渉では、経費の削減、内部留保の取崩し等の経営上の努力によってもなお賃金等の引上げをする余地がないかどうかをめぐって交渉が行われることが通常であり、組合にとっては、会社の回答の妥当性を判断し、組合からの対案を示すために各種経営資料の提示を受け、これに分析及び検討を加えることが必要不可欠であるため、法令上の開示義務がある場合はもとより、たとえ当該義務がない場合であっても、また、組合及びA2分会と会社が24年協約を締結していることからすれば、会社が各種経営資料により自己の回答の根拠を明確にすることは当然要請されているものといえることから、当該会社の主張は採用できない。
ウ 会社は、組合においても客観的な数値及び指標に基づくことなく交渉を妥結しようとしてきた旨主張するが、A2分会の分会長であるA3が、第1回団交より前の団体交渉において、会社側が賃上げないし一時金の上積みに応じて組合側の妥協できる範囲に回答額が近づいた場合は従業員の生活、賞与の支給のタイミング等のために組合側も譲歩して妥結していた旨証言していることからすれば、組合は、会社側からの財務状況に係る資料の提示や回答についての説明がない場合であっても、団体交渉において一定の成果を得られたときには組合側の事情を理由に議歩し妥結してきたのであって、過去に組合側が交渉を妥結してきたからといって第1回団交及び第2回団交における会社の誠実交渉義務を尽くしたことにはならないのであるから、当該会社の主張は採用できない。
エ したがって、第1回団交及び第2回団交における定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求に対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
2 会社が平成30年6月15日に団体交渉を開催しなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。(争点2)
ア 会社は、第1回団交及び第2回団交におけるやり取り、特に第2回団交の終盤における組合側の発言から、定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求についての交渉が進展する見込みがないと判断し、第2回団交の後の組合からの3回の団体交渉の申入れを断ったものといえる。
イ 団体交渉において、労使双方が当該議題についてそれぞれ自己の主張、提案及び説明を出し尽くし、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至った場合には、使用者は交渉を打ち切ることも許されるところ、第1回団交及び第2回団交における会社の対応は、定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る議題について合意達成の可能性を模索したものとはいえず、誠実に団体交渉に当たったものとはいえないことからすれば、第2回団交の後の組合からの3回の団体交渉の申入れを断った会社の対応は、正当な理由なく団体交渉を拒否したというほかない。
ウ 会社は、双方において交渉を尽くした結果、相互にこれ以上の讓歩はないということが確認され、団体交渉の終結が確認されたものである旨主張するが、第2回団交の終盤における組合側の発言については、当該団体交渉の後に定期昇給を含む平成30年の賃上げ及び夏季一時金に係る要求について組合が3回にわたり会社に団体交渉を申し入れていることからすれば、団体行動権の行使との引換えに会社から何らかの護歩を引き出すことを意図した交渉の駆け引きの中での発言であって、真に団体交渉の終結を認める趣旨の発言ではなかったと評価するのが相当であり、当該会社の主張は採用できない。
エ したがって、会社が平成30年6月15日に団体交渉を開催しなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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