労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第32号
日本郵便(人事異動)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X(個人) 
再審査被申立人  Y株式会社(以下「会社」) 
命令年月日  令和2年1月22日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合A1支部執行委員であるXに対し、平成28年4月1日付けで組合支部の所属変更を伴うB1郵便局からB2郵便局への配転(「本件人事異動」)を命じたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審神奈川県労委は、本件人事異動は不当労働行為には当たらないとして、本件救済申立てを棄却したところ、Xは、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、再審査申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件人事異動による労働組合法第7条第1号該当性について
ア 本件人事異動による不利益について
 Xには、本件人事異動に伴い、業務内容等や通勤時間に不利益は存在しないものの、組合A1支部の執行委員の地位を失い、支部執行委員としての組合活動ができなくなったことについて、不利益があったとみることができる。
イ 本件人事異動における不当労働行為意思について
(ア) Xは、会社がXの組合内における「C1組合派」としての活動を認識していたことを前提に、本件人事異動は、当該活動を嫌悪して行われた不利益取扱いであると主張する。
 しかし、Xは、①初審の審問において(組合内における「C1組合派」の代表である)A2との活動を公然とは表明していなかった旨供述するなど、「C1組合派」としての活動をあくまで非公然に行っていたと認められること、②C1組合を支援するC2センター(共同代表A2)らの呼び掛けにより開催されたC3結成集会にA2と参加したが、集会の写真を掲載した報告集は会社に提供されておらず、ほかに会社がXの同集会への参加を認識し得たことを認めるに足りる証拠もないこと、③C2センターの全国組織C4センターに、同センター発行の月刊C5の分会への郵送を依頼し、B3総務部長は、少なくとも4回にわたりこれを借り受け、会社との窓口担当であるXに返却したことがあったが、同誌には、(A2の氏名やコラム等の掲載はあるものの)Xの氏名、写真等の記事の掲載はないこと等から、同総務部長はXが「C1組合派」に関心を持っていたことを推認し得たとはいえるものの、組合内で「C1組合派」として活動していることを認識していたとまで認めることはできないこと、④28年4月1日、A2とB1郵便局の周辺でビラを配布したが、これ以前に同郵便局周辺でA2とビラを配布したことを認めるに足りる証拠はないこと等からすると、Xが組合内において「C1組合派」として活動していた事実について会社が本件人事異動の内命以前に認識していたということはできず、Xの主張はその前提を欠く。
(イ) そして、会社は、毎年度、定期人事異動を行っており、郵便局に勤務する課長代理以下の役職の社員については、組織の活性化や社員のスキルアップを図る目的で、同一局におおむね5年以上勤務する社員が対象であるところ、Xは、B1郵便局に10年勤務し、上位役職への昇進を目指すために能力を高めたい等と「社員申告書」により自ら申告し、スキルアップにも意欲的な姿勢を見せていたことなどが認められる。そうすると、会社は、Xのモチベーションや能力の高さを考慮し、他の職場を経験することで能力を伸ばし、組織の活性化に貢献してもらうことを期待して、定期人事異動の一環として本件人事異動を行ったとみるのが相当であり、本件人事異動には業務上の必要性があったと認められる。
 また、会社が、定期人事異動を行うに当たり、対象者が組合の執行委員であることを考慮していることはうかがわれず、Xについてもこれと異なる事情は見いだし難いことからすれば、本件人事異動は、業務上の必要性がある上、その人選も不合理なものであったとはいえない。
(ウ) 以上によれば、本件人事異動は、Xの組合内における「C1組合派」の活動を嫌悪して行われたものであるとは認められず、会社に不当労働行為意思があったとはいえない。
(2) 本件人事異動による労働組合法第7条第3号該当性について
 上記(1)で判断したとおり、本件人事異動は、会社がXの「C1組合派」としての活動を認識して行われたものではない。また、A1支部からは、本件人事異動に対する抗議等はなされておらず、執行委員からXが外れたことにより、同支部の組合活動が停滞したことなどを認めるに足りる証拠もない。
 したがって、本件人事異動は、組合内における「C1組合派」を含む組合の運営に対する支配介入に当たらず、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神労委平成28年(不)第12号 棄却 平成30年6月11日
 
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