労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成28年(不再)第58号
エミレーツ航空不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y(会社) 
再審査被申立人  X1労働組合X2支部(組合) 
命令年月日  令和2年1月22日 
命令区分  棄却・一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、大阪コールセンターの廃止に伴い、同センターで勤務していた組合員3名が希望退職に応じなかったため、平成26年6月26日付けで自宅待機を命じたこと(本件自宅待機命令)、及び組合員3名を同年9月1日付けで解雇したこと(本件解雇)が、労働組合法(労組法)第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、組合が、同年9月1日及び同月12日に大阪府労委に救済申立てを行った事件である。
2 初審大阪府労委は、本件自宅待機命令及び本件解雇は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、会社に対して、解雇がなかったものとしての取扱い及びバックペイ並びに文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として、救済部分の取消し及び救済申立ての棄却を求めて、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、再審査申立てを棄却し、初審命令の一部を変更した。  
命令主文  1 本件再審査申立てを棄却する。
2 ただし、初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
会社は、組合組合員A2、同A3及び同A4に対する平成26年6月26日付け自宅待機命令及び同年9月1日付け解雇をなかったものとして取り扱い、現実に就労させなければならない。 
判断の要旨  争点(本件自宅待機命令及び本件解雇は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。)
(1)会社は、平成26年5月20日、大阪コールセンターを廃止するとして、①国内の新設ポジションへの48時間以内の応募、②海外での欠員への応募、③早期希望退職の応募を口頭で提示し(本件三択提示)、組合と組合員3名の雇用維持の団体交渉を3回行ったが妥結には至らず、同年6月26日、本件自宅待機命令を行い、その後、団体交渉等を行ったが妥結に至らず、同年9月1日、本件解雇を行った。
(2)ア会社が能力不足などを理由に残業申請を認めないとして、組合員Aは、平成25年1月に労働基準監督署(労基署)に未払割増賃金について申告するとともに、組合員3名は同月組合に加入し、パワハラ問題及び未払残業代問題について団体交渉を4回行った。
イ平成25年11月の団体交渉において、会社は、パワハラについては一定の改善措置を講じたと述べるとともに、パワハラによるサービス残業の証拠はないが、解決のために善意で金銭を支払う旨提案し、平成26年3月に「未払残業代及びパワハラは既に解決済みと信ずる」旨の書面に同書面通知を受けたことを確認する署名を求めたが、組合は署名をせず、同年4月、組合員Aは、パワハラや未払残業代の証拠等を会社にメールで送信し対応を求め、組合員Bは、パワハラによる労災申請を会社に求めていた。
ウ以上のことから、会社は、パワハラ問題や未払残業代問題を巡る労使間の対立が継続していることについて認識していた。
(3)ア本件希望退職の募集対象者は、大阪コールセンター等の13名であり、会社は、同時期に同内容の説明を組合員と非組合員にしている(ただし、平成21年名古屋空港支店を閉鎖時は日本支社の従業員全員を対象としている。)。
イしかしながら、組合がパワハラ問題及び未払残業代問題について要求を続ける中で、中国の広州コールセンター開設後の平成25年6月の団体交渉において、組合が会社から大阪コールセンターの廃止はなく、雇用は保障される旨の説明を受けていたという事情の下では、会社が本件三択提示をすれば、組合員3名が大阪コールセンター廃止を前提とした本件三択提示のいずれか、すなわち、欠員ポジション及び希望退職への応募はもちろん、新設ポジションへ48時間以内の応募はありえず、組合が大阪コールセンター廃止の理由の説明を求める団体交渉等を申し入れることや本件三択提示に異議を唱えることは容易に想定できたといえ、新設ポジションへの組合員3名の応募がおよそ想定できない48時間以内に締め切れば、事実上、希望退職条件についての交渉しかなしえない状況となる。
ウ実際、会社は、組合が本件希望退職等手続の保留を求めたにもかかわらず、48時間以内で締め切ったとの態度を堅持している。このような本件希望退職等手続は、手続として拙速かつ杜撰であったのみならず、新設ポジションへの応募期限を組合の要求にもかかわらず延長することなく、雇用維持の機会を消滅させ、結果として組合員3名を希望退職の選択肢しか残されない状況に置いたものである。
エかかる会社の対応は、組合員Aが組合加入直前に行った労基署への申告を契機として労働基準法違反に係る是正勧告がなされ、会社がこれに対応し、問題は全て解決したと主張した後も、組合はなお未解決の未払残業代問題及びパワハラ問題があるとしてその解決を求めるという対立関係が生じていた中で、組合員3名を退職に追い込むことを想定してなされたといえる。
(4)本件解雇に至る団体交渉においても、会社は、組合員3名の雇用維持の努力をしたとはいえないのみならず、雇用維持できない理由及び大阪コールセンター廃止の理由について抽象的な回答に終始していることから、かかる団体交渉も組合員3名を排除する既定の方針を維持しつつ、形式的になされたにすぎない。
(5)以上から、会社は、大阪コールセンター廃止を契機としてなされた人員整理において、組合員であることを理由に組合員3名を会社の職場から排除したものと認められ、本件自宅待機命令及び本件解雇はいずれも労組法第7条第1号の不当労働行為に当たり、会社の職場から組合員3名を排除することによって、組合を弱体化させる支配介入であって、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成26年(不)第50号及び第54号 全部救済 平成28年10月11日
 
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