概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成30年(不再)第59号
国際自動車7社不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y株式会社外同一名称会社6社(以下「会社」) |
再審査被申立人 |
Xユニオン(「組合」) |
命令年月日 |
令和元年12月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、基本契約を5組合とは締結しながら、組合とは締結しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審東京都労委は、会社が組合と基本契約を締結しなかったことが労働組合法(労組法)第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、会社に対し、①組合との基本契約の締結及び②履行報告を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 基本契約締結拒否の労組法第7条第3号該当性について
会社は、会社乗務員の定年後の雇用について、就業規則の規定に基づく雇用に代わるものとして、労働組合と基本契約を締結して労働者供給による雇用のみとし、会社乗務員のみで組織する労働組合(社内組合)である5組合とは基本契約を締結しておきながら、組合が社内組合であるにもかかわらず、組合との基本契約の締結を拒否している。このような差別的取扱いは、合理的な理由が存在しない限り、組合の弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、支配介入に当たる。
会社は、申立外C1労働組合(C1労)は社内組合ではなく、組合とC1労とは実質的に同一であるとして種々の主張をするけれども、採用することができず、会社が5組合とは基本契約を締結しているのに、組合との基本契約の締結を拒否するという差別的な取扱いは、合理的な理由が存在しないから、組合の弱体化を図ろうとする意図が推認され、組合への支配介入となり、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(2) 基本契約締結拒否の労組法第7条第1号該当性について
会社が、組合との基本契約の締結を拒否しているため、労働者供給による雇用の道が開かれないことから、組合の組合員らの定年後の雇用についてはおよそ不可能になる。したがって、会社が組合との基本契約の締結を拒否したことは、組合の組合員らに対する不利益な取扱いに当たる。
このように、会社が組合と基本契約を締結しないのは、C1労の執行委員長であるC2が中心人物となってC1労の組合活動として別件未払賃金請求訴訟(未払賃金訴訟)の提起に取り組み、C1労及びC2が組合に影響力を及ぼしているとみた会社が、このことを嫌悪し、C1労及びC2の影響力を排除するために、未払賃金訴訟の原告となっている組合の組合員らに対して定年後の雇用をしないという不利益を与えることを企図して行った不利益取扱いであり、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
(3) 救済方法について
前記(1)及び(2)で判断したとおり、会社が組合と基本契約を締結していないのは、労組法第7 条第1号及び第3号の不当労働行為に当たる。このような不当労働行為から組合及びその組合員らを救済するには、会社に対し組合との間で基本契約を締結させることが必要不可欠であるから、救済命令においてこれを命ずべきである。
会社は、この点について、会社がどの労働組合と基本契約を締結するかについては、契約自由の原則が妥当するところ、初審命令によれば、契約自由の原則に反して組合との基本契約の締結を強制される結果となり、受け入れられないと主張するが、初審命令が会社に対し組合との基本契約の締結を命じたことは、会社が組合と基本契約を締結しなかったことによる団結権の侵害状態を是正し、正常な労使関係秩序の回復を図るとともに、差別的状況を解消し、組合の組合員らの救済を図るためにも必要不可欠でかつ適切なものであり、もとより労働委員会に委ねられた裁量の範囲内であって適法である。 |
掲載文献 |
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