労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第45号
国際自動車不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  会社Y1~Y7(併せて「会社」) 
命令年月日  平成30年11月6日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社7社(併せて「会社」といい、(略)新宿区に本社を置く会社を「会社新宿」、台東区に本社を置く会社を「会社城東」という。)は、タクシ一乗務員の65歳の定年後の雇用を労働組合との労働者供給契約によることとし、会社乗務員のみで構成されている労働組合とは労働者供給に関する基本契約締結していた。
 しかし、会社は、別件未払賃金等請求訴訟を提起している乗務員らの加入するC1労組については、同労組の執行委員長が他のタクシー会社に勤めているとして、基本契約を締結しなかった。
 そこで、C1労組に加入している会社乗務員8名は、申立人組合を結成し、会社城東を除く6社に対して、基本契約の締結を要求したが、6社は、組合がC1労組と同一であるとして、これを拒否した。
 本件は、会社が、組合と基本契約を締結しないことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合活動に対する支配介入に当たるか否かが争われた事件で、東京都労働委員会は、会社に対し、基本協約の締結等を命じた。 
命令主文  1 被申立人会社7社は、申立人組合と、労働者供給に関する基本契約を締結しなければならない。
2 被申立人各会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 会社が、基本契約の相手方を会社乗務員のみで構成された労働組合に限定していることについて
 会社は、会社による乗務員としての指導教育を受けた者を雇用できることを理由に、基本契約の相手方を会社乗務員のみで構成された労働組合に限定するとしている。この理由で、会社が、定年後の雇用を会社乗務員であった者に限定することまでは、理解できるところではある。
 しかし、基本契約には、「会社が就業させる組合員は、労働組合から供給される組合員で会社とその関連会社の定年者のみとする。」との規定があるから、会社は、会社乗務員以外の者を組織する労働組合と基本契約を締結したとしても、雇用する者を会社乗務員の定年者に限定することができ、会社乗務員以外の者を雇用する義務が生じるわけではない。
 したがって、会社が基本契約の相手方を会社乗務員のみで構成された労働組合に限定し、このことに強くこだわることには、合理的理由は認められない
 そして、会社は、過去に、C4労組組合員に対しては、定年後期間が空いても雇用した例があるにもかかわらず、C1労組に対しては、C5が会社の指導教育を受けた元会社乗務員である事情は考盧せず、C1労組組合員のうち同人一人だけが他のタクシ一会社に勤めていることを捉え、同人が退任して会社乗務員が執行委員長となれば契約するなどと述べて、頑なに基本契約の締結を拒否し続けている。このことは形式的かつ不合理な対応といわざるを得ない。
 さらに、C1労組の組合員らが、計4回の未払賃金訴訟を提起したこと、C1労組と同様に組合員らが未払賃金訴訟を提起したC4労組に対し、会社新宿は、定年後の雇用を拒否し、未払賃金訴訟を提起した人とは契約するつもりは一切ないなどと述べたこと、定年後の雇用を求めるC4労組組合員らの請求を一部認容する仮処分命令や、定年後の雇用を拒否したことが不当労働行為にあたるとする一部救済命令が出ていることが認められる。
 これらのこと等を考慮すると、会社がC1労組との基本契約の締結を拒否した本当の狙いは、C1労組が取り組んでいる未払賃金訴訟提起の組合活動を阻害し、その中心人物であるC5を会社から排除するとともに、未払賃金訴訟の原告となっている同労働組合の組合員らに対して定年後に雇用しないという不利益を与えることであるとみるほかない。

2 組合とC1労組は、実質的に同一であると判断し、基本協約の締結を拒否した旨の会社の主張について
 会社は、①別件裁判及び申立て等の経緯、②組合員らのC1労組との二重加入、③組合の規約に組合費の規定がないこと、④所在地、結成通知から、組合とC1労組は実質的に同一であると判断し、基本契約の締結を拒否したと主張する。
 上記判断のとおり、会社がC1労組との基本契約締結を拒否することに合理的な理由は認められないから、C1労組と組合が実質的に同ーであったとしても、基本契約の締結を拒否する理由とはならないが、会社の主張は、組合が独立した労働組合とはいえないという主張も含んでいると考えられるので、その点について、判断する。
 確かに、組合は、基本契約の締結のために組織され、組合員はC1労組にも加入していることが認められる。しかし、組合は、既に当委員会の資格審査手続でも認められたとおり、独自の規約をもち、執行委員長等の役員を選出し、執行機関、決定機関を有する等自主性を持ち、独自の財源を持ち、独自の活動を行っているもので、独立した組合と認められる。
 そして、規約に組合費の規定がなければ組合活動ができないとはいえず、現に組合は、組合費の徴収を行っている。また、所在地やファクシミリについて、上部団体等の助力を得ることにより、組合の独立性が否定されるものではない。
 したがって、組合とC1労組は実質的に同一ということはできず、会社の主張は採用することができない。

3 結論
 会社は、未払賃金訴訟を提起した組合員らを会社から排除するために、およそ合理的とはいえない理由を述べて組合との基本契約を締結しなかったものといわざるを得ない。この会社の対応は、未払賃金訴訟の提起という組合活動を阻害し、組合に不利益を与えるものであり、個々の組合員に対しても定年後の雇用が奪われるという不利益を与えるものである。
 したがって、会社が、組合と基本契約を締結しないことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合活動に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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