労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第31号
日本郵便外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X1、X2(いずれも個人) 
再審査被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  令和元年11月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、Y1会社において、①時給制契約社員の賃金を基礎評価及びスキル評価(「スキル評価等」)により決定したこと、②組合の組合員である課長代理等に、同じく組合の組合員である時給制契約社員のスキル評価等を行わせたこと、③期間雇用社員の労働契約を労働契約法第18条に基づき無期労働契約に転換する制度(「無期転換制度」)を導入しようとしたことが、Y1会社及びY2会社(「Y1会社ら」)による組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるとして、組合のX1及び同X2 (「X1ら」)が救済を申し立てた事件である。

2 初審大阪府労委は、Y2会社は、Y1会社の従業員の労働組合法上の使用者には当たらず、上記1の①ないし③についてY1会社らによる不当労働行為はいずれも成立しないとして、救済申立てを棄却したところ、X1らは、これを不服として再審査を申し立てた。

3 中労委は本件再審査の申立てを棄却した。 
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) Y2会社は、Y1会社の従業員の労働組合法上の使用者には当たるかについて
 Y2会社は、Y1会社に対し、一定の影響力を及ぼしていたとみることはできるものの、Y2会社の関与が、グループの経営戦略的な観点から行う管理・監督の域を超えたものであったとはいえず、Y2会社が、Y1会社の従業員の基本的な労働条件について、部分的にも雇用主であるY1会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあったとはいえない。したがって、Y2会社は、Y1会社の従業員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(2) Y1会社において、時給制契約社員の契約更新時の時間賃金をスキル評価等により決定したことは、労使交渉による賃金決定を無力化するものとして、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるかについて
 スキル評価等については、Y1会社と組合との間で人事協約及び覚書が締結され、両者の合意の上で実施されているし、その評価基準等についても格別不合理な点は認められない。
 そして、スキル評価制度の恣意的な運用が行われたことを認めるに足りる証拠もない。その他、スキル評価等による賃金決定において、団結権侵害が行われたことをうかがわせる事情は認められない。したがって、Y1会社において、時給制契約社員の契約更新時の時間賃金をスキル評価等により決定したことが、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。

(3) Y1会社において、組合の組合員である課長代理等に、同じく組合の組合員である時給制契約社員のスキル評価等を行わせたことは、組合員間に対立と分断を持ち込み団結を破壊するものとして、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるかについて
 課長代理等が評価者になることは、Y1会社と組合との間で締結された人事協約及び覚書に規定されており、両者の合意に基づくものといえる。また、課長代理等が、班の責任者としてその班に所属する時給制契約社員の第一次評価を行うことは、格別不自然とはいえない。その他、スキル評価等の実施において、組合員間の分断が企図されたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、Y1会社において、組合の組合員である課長代理等に、同じく組合の組合員である時給制契約社員のスキル評価等を行わせたことが、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。

(4) Y1会社において、無期転換制度を導入しようとしたことは、団結権を侵害するものとして、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるかについて
 組合中央本部は、会社側(Y2会社及び事業子会社3社)と協議を積み上げ、合意できる内容に達したとして、会社側の平成28年5月27日付け提案書と同様の内容を、同日付け組合報により組合員に周知し、後日、組合は、その内容を盛り込んだ労働協約をY1会社との間で締結している,また、同組合報には、組合中央本部が無期転換制度の早期実現を日指し、交渉を積み上げて、会社側に決断させた旨も記載されており、Y1会社らが無期転換制度を一方的に導入しようとしたり、これを強要しようとして、上記提案をしたとみることはできない。その他、無期転換制度の導入に当たり、団結権侵害が行われたことをうかがわせる事情は認められない。したがって、Y1会社において、無期転換制度を導入しようとしたことが、組合に対する労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。

(5) Y2会社による不当労働行為は成立するかについて
 上記(1)で判断したとおり、Y2会社は、Y1会社の従業員の労働組合法上の使用者には当たらないので、Y2会社による不当労働行為は成立しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成28年(不)第47号 棄却 平成30年5月25日
 
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