概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成29年(不)第46号
はなまる不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合(「組合」)・X2(「個人」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」)・東京都 |
命令年月日 |
令和元年7月16日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
会社は、都の使用許可を受けて、C2レストランを運営している。
申立外C1組合の組合員であったX2は、平成28年9月5日、会社と有期雇用契約を締結し、同日、C2レストランでの勤務を開始した。X2が、職場の同僚にビラを配布したり、署名への協力を求めたりしていたことに対し、会社は、注意を2回行ったことがあったが、29年3月30日、X2は職場でビラ配布を行った。
4月3日、会社は、X2に対し、2回も注意をしたのにビラ配布を続けたなどとして、同月30日付けの雇止めを通告した。4月3日、X2は、組合に加入し、組合は、会社に対し、同人の雇止め撤回を議題とする団体交渉を申し入れた。
4月30日、会社とX2との雇用契約は、終了した。
5月8日の第1回団体交渉において、X2の雇用契約書の会社控では、雇用期間が29年4月末日までとなっているが、本人控では、28年10月末日までとなっていることが発覚した。6月6日の第2回団体交渉において、会社は、X2の雇用期問は会社控の記載が正しく、本人控に誤記が生じたのはシステム上のエラーであるなどと説明した。
6月21日、組合らは、本件不当労働行為救済申立てを行った。
本件申立て後、組合と会社との間では、7月13日に第3回団体交渉、9月12日に第4回団体交渉、30年5月2日に第5回団体交渉が開催された。
本件は、以下の(1)ないし(3)が争われた事案である。
(1)会社が、29年4月3日付けの通告により、X2を同月30日付けで雇止めとしたことは、同人が組合員であることや同人の組合活動を理由とした不利益取扱い及び組合の組織運営に対する支配介入に当たるか否か。
(2)X2の雇止めに係る団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか否か。
(3)都は、X2の使用者に当たるか否か。使用者に当たる場合、都は、X2の雇止めに関与したといえるか否か。関与した場合、都の行為は、X2が組合員であることや同人の組合活動を理由とした不利益取扱い及び組合の組織運営に対する支配介入に当たるか否か。
東京都労働委員会は、会社に対し、X2の雇止め理由に係る団体交渉における対応は不誠実な団体交渉に該当するとして、文書の交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A殿
会社
代表取締役 B1
貴組合の組合員X2氏の雇止め理由に係る団体交渉における当社の対応は、東京都労働委員会iこおいて不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 被申立人東京都に係る申立てを却下する。
4 その余の申立てを乗却する。 |
判断の要旨 |
1 X2の雇止めについて
X2が3月30日に配布した都や都知事を批判するビラの内容が、本件雇止めの決定に影響しているといえるものの、会社が、本件雇止め決定時において、同人が組合員であることや、同人の活動が組合活動ないし組合結成活動であることを認識していたとまで認めることはできない。したがって、本件雇止めが、X2が組合員であることや同人の組合活動を理由とした不利益取扱い、又は組合活動の抑制を図る支配介入に当たるということはできない。
2 会社の団体交渉における対応について
会社は、X2の雇止めの理由について、契約期間満了による雇止めなので、就業規則上の根拠や雇止めの理由は必要ないとの説明を行ったが、それだけではなく、同人が、職場内でビラ配布や署名活動を行い、他のスタッフから苦情があったこと、それに対し、会社が2回の注意を行ったにもかかわらず、改善されなかったことなどを考慮したことも説明しており、組合の主張するように、契約期間満了による雇止めであること以外の説明を拒否したとまではいえない。
しかしながら、X2の雇止め理由については、29年3月30日にX2が配布したビラの内容が雇止めの決定に影響したものとみざるを得ないにもかかわらず、団体交渉における組合の質問に対し、B2部長は、ビラの中身の問題ではなく、ビラの内容については審議していない、ビラの内容には興味がないので具体的な報告は聞いておらず、問題のポイントはそこではないなどと答え、飽くまでもビラの内容は雇止めの決定とは何の関係もないという説明を繰り返した。そうすると、会社は、雇止めの理由に関わる重要な部分について虚偽の発言を行っていたものとみざるを得ず、このような対応は、雇止めの撤回を議題とする団体交渉の核心部分への進展を妨げたものとして、不誠実であるといわざるを得ない。
以上のとおりであるから、X2の雇止め理由に係る団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に該当する。
3 都の使用者性等について
都が、会社の従業員の労働条件の決定に関与したり、影響力を及ぼしたということはできないのであるから、都は、X2との関係で労働組合法上の使用者に当たるとはいえず、都に対する申立ては、却下を免れない。 |
掲載文献 |
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