労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第27号
関西工房不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  株式会社Y(会社)  
再審査被申立人  X労働組合(組合) 
命令年月日  令和元年7月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の元従業員である組合員Aが同社退職後に組合に加入し、組合が会社に対し、団体交渉を申し入れたところ、会社が、2回の団体交渉に応じたものの、①平成28年2月13日付けの団体交渉申入れに応じなかったことが労組法第7条第2号の、②組合に対し、会社に組合の分会は存在しない旨記載した同月26日付け返書を送付したことが労組法第7条第3号の、③組合が会社に対して行つた3回の抗議申入れの際、会社が警察に通報したことが労組法第7条第3号の不当労働行為であるとし、④Aの在職中の未払賃金の支払を求め、28年3月22日、大阪府労委に救済を申し立てた事案である。さらに、組合は、初審において、⑤初審における「労働時間管理は労働組合には関係ない。」旨の会社の新たな主張の取下げを求める追加申立てをした。

2 初審大阪府労委は、30年4月9日付けで、会社が28.2.13団交申入れに応じなかったこと(上記1①)及び会社に組合が分会に存在しない旨記載した返書を送付したこと(上記1②)が不当労働行為に該当するとして、会社に対し、団体交渉に応じること及び文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、救済部分を不服として、再審査を申し立てた。

3 中労委は、本件申立てをいずれも棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  (1) 平成28年2月13日付けの団体交渉申入れに対する会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア Aは、退職直後に過去4年分の未払賃金を請求し、会社は、労基署からのAの最低賃金違反に関する是正勧告を受け、その後、Aはさらに労基法第37条の残業代に関する未払賃金請求を会社に対して行つたことが認められ、また、Aは未払賃金の請求から程なく組合に加入し、組合は、未払賃金を要求事項に含んだ団体交渉を求めていることが認められることから、未払賃金請求に関する限り、Aは、会社の「雇用する労働者」に該当するものと認められ、組合は、会社に団体交渉を求めることができるものと解される。
イ 会社は、28.2.13団交申入書には、Aの在職中の賃金に関する要求事項は含まれておらず、会社においてはAの在職中の賃金に関する要求事項が含まれているとの認識は持ち得なかったと主張する。
確かに、28.2.13団交申入書には、要求事項として、「2015年5月26日に行われた団体交渉での確認事項を遵守すること」等が記載されているところ、Aの労働契約が存在した間に発生した未払賃金等の請求が含まれることが明記されているわけではない。
しかし、上記アのとおり、組合は、Aの未払賃金請求後、Aの組合加入を通告し、是正勧告分に含まれていない時間外労働に伴う未払賃金をも主要議題として団体交渉を申し入れたことは明らかであって、第2回団体交渉において、組合は、是正勧告の金額以上の割増手当等を含めた未払賃金全体を問題にして、基本給や割増賃金手当等が記載されている正誤表中の「本来の支払明細額」の欄への記入を要求し、会社もそれに応じて、次回団体交渉において正誤表をもとに、Aの賃金全体にっいて交渉することになっていたというべきであり、組合が職場全体の労働条件を問題視していたことはあったにしてもAの未払賃金の支払を要求していたこと自体は明らかであり、会社が未払賃金にっいて議題になっていることを認識できなかった旨の主張を採用することはできず、会社も、組合が、是正勧告分のみならずAの残業代を含む未払賃金を問題としていたことを認識していたのも明らかである。
ウ 以上のとおり、 28年2月13日付団体交渉申入書に記載のある「2015年5月26日に行われた団体交渉での確認事項を遵守すること」とは、Aの未払賃金にっいて次回団体交渉を行うことを含むものであったこと、会社もそれを認識していたことは明らかであり、正当な理由のない団体交渉拒否に該当し、労組法7条第2号の不当労働行為に該当する。

(2) 会社が28.2.26返書を組合に送付した行為は、労組法第7条第3号に当たるか。
上記(1)のとおり、会社は、Aの未払賃金に関する部分に限り団体交渉に応じる義務があったものであるが、組合に対し、「Aなる人物は退職した。従つて関西工房分会など存在しません。団体交渉はありません。」旨記載した28.2.26返書を送付していることが認められ、このような会社の行為は、組合の存在を殊更に無視し、その団結権ないし団体交渉権を軽視して組合による団体交渉を妨害するなど、その弱体化を招来する効果を有するものといえ、会社が28.2.26返書を組合に送付した行為は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。

(3) 救済方法について。
会社は、初審命令後、団体交渉を開催し、また、Aの未払賃金債権は時効により消減したので団体交渉応諾の命令は理由がない旨主張するが、上記(1)イのとおり、会社は正誤表を記入した上、団体交渉を行うとしていたにもかかわらず団体交渉に応じないという態度に転じたことは、組合の団体交渉に対する信頼を裏切る行為であり、また、弁護士法人ではない申立外会社に一切の権限を委任し、団体交渉を拒否して時効の援用をしたこと等を踏まえ、なお、団体交渉を命ずべきものである。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成28年(不)第14号 一部救済 平成30年4月9日
 
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