労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第14号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年4月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社を退職した従業員1名が組合に加入し、組合が団体交渉を申し入れたところ、会社が、①2回の団体交渉に応じたものの、3回目の団体交渉申入れには応じなかったこと、②組合に対し、会社における分会は存在しないなどと記載した書面を送付したこと、③組合が行った3回の抗議申入れの際、警察に通報を行ったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、①及び②について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成28年2月13日付けで申し入れた、申立人組合員A2の在職中の未払賃金の支払に係る団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
               
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様                       
会社                      
代表取締役 B1

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。                

 (1)当社が、平成28年2月13日付けで申し入れられた貴組合員A2氏の在職中の未払賃金の支払に係る団体交渉申入れに応じなかったこと(2号該当)。
 (2)当社が、平成28年2月26日付けの返書において、貴組合の分会の存在を否定する旨の記載をしたこと(3号該当)。
3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(28.2.13団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
 団交応諾義務を規定する労働組合法第7条第2号でいう「雇用する労働者」とは、「現に雇用する労働者」のみと解すべきではなく、仮に雇用契約が終了していても、未払賃金等の在職中の労働条件等について使用者と労働者の間で争いが継続している場合は、その限りにおいて当該労働者も含まれると解すべきである。
 A2組合員については、本人や組合が、同人の未払賃金等を繰り返し会社に対して、請求していることが認められるのであるから、A2組合員が、既に退職しているとしても、いまだ「雇用する労働者」に該当すると考えられる。そこで、28.2.13団交申入れにA2組合員の未払賃金等の請求に係る要求事項が含まれているのであれば、それは、義務的団交事項に該当し、会社には、その要求事項について団交応諾義務が生じることになる。
 27.5.26団交においては、少なくとも、A2組合員の在職中の未払賃金について、27.5.26賃金等明細正誤表の空欄を会社が埋めた後、それを基礎として組合がA2組合員の残業代を含む未払賃金について要求を行い、次回団交ではそのことについて交渉する予定であることについては労使間で了解されていたものとみることができる。そうだとすると、27.5.26団交に続く団交がその後開催されていない状況において提出された28.2.13団交申入書に記載された「2015年5月26日に行われた団体交渉での確認事項を遵守すること」という要求事項の中には、当然、27.5.26賃金等明細正誤表に会社が記入した数字を基に組合がA2組合員の在職中の未払賃金の支払について要求を行うのに対し会社が交渉に応じる旨の同意が含まれるというべきである。
 そして、27.5.26団交には会社の代理人を辞任したA弁護士以外にB2取締役も出席していたのだから、27.5.26団交の交渉内容については、会社も当然認識できる状態にあったといえる。
 したがって、28.2.13団交申入書には、A2組合員の在職中の賃金に関する要求事項が含まれており、その限りにおいては、義務的団交事項に該当するのであるから、組合員に会社従業員が存在しないので会社には団交に応じる義務はないとの会社の主張は採用できない。
 以上のとおり、A2組合員の在職中の未払賃金に係る交渉申入れである28.2.13団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であって、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(28.2.18要求書に対する28.2.26返書は、組合に対する支配介入に当たるか。)について
(1)C1分会は存在しない旨の記載について
 A2組合員は、会社を退職した後も、在職中の賃金請求等について団交を求める限りにおいては、会社の「雇用する労働者」とみることができるのであり、そのA2組合員が組合に加入し、C1分会を名乗ることは、労働組合の組織や運営等の労働組合が自主的に決定すべき事項であり、会社に否定されるものではないというべきである。
 したがって、A2組合員がすでに退職したことを理由として、C1分会は存在しないと回答することは、組合の存在を明らかに無視ないし否定するものであって、組合の自主的な組織や運営に対する不当な干渉として、団交を拒否する目的でなされた組合活動を妨害する支配介入とみるのが相当である。
(2)不法不当な行為を行った場合は法的処置等を取る旨記載したことについて
 28.2.26返書の当該記載は、「不法不当な行為を行った場合は」として、仮定形である上、不法不当な行為が何を指すかは具体的な記載がなく、特定されていない。そうであるとすれば、会社が、28.2.26返書に、組合が不法不当な行為を行った場合は法的措置を取る旨を記載したことをもって、使用者の表現の自由を逸脱して、組合員を威嚇し、組合活動を殊更誹謗、中傷したものとまでは見ることはできない。
 以上のとおり、28.2.26返書の記載内容のうち、「C1分会は存在しません。」と記載した部分に関しては、組合を無視ないし否定し、組合の弱体化を企図した支配介入とみるのが相当であり、28.2.18要求書に対する28.2.26返書は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(本件3回の抗議申入れの際、会社が、警察に通報を行ったことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 警察の介入を必要とするようなことが起こる可能性があるとして、会社が警察に通報して出動要請を行ったとしても、そのこと自体が、直ちに不当であったり、不合理であるとまではいえない。
 しかも、組合は、本件3回の抗議申入れの全てにおいて、その目的である要求書の読み上げと会社への手交を完遂しており、さらに、それぞれの抗議申入れにおける組合と警察の接触の実態は明らかではないが、組合の主張によっても、警察が組合の活動を妨害した事実は存在せず、反対に組合は、警察に対して、組合活動に警察が介入できないことを述べ、警察はそれを認める応答をしているといえる。
 これらを総合的に判断すれば、本件3回の抗議申入れの際、会社が、警察に通報を行ったことがそれ自体直ちに不合理とは認められず、また、このことにより組合の抗議申入れに何らかの支障や影響を受けたと認めるに足る疎明はなく、むしろ組合は一連の抗議活動を警察からの制限を受けることなく完了していることからすれば、会社の当該通報行為を支配介入に当たるとまでみることはできないというべきである。
 以上のとおり、本件3回の抗議申入れの際、会社が、警察に通報を行ったことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為には該当せず、この点に係る組合の申立ては棄却する。 
掲載文献   

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