労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第7・10号
島崎エンジニアリング外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人兼再審査被申立人  X1東京地方本部 
再審査申立人兼再審査被申立人  X1東京地方本部X2支部 
再審査被申立人兼再審査申立人  株式会社Y1 
再審査被申立人  株式会社Y2 
命令年月日  令和元年7月3日 
命令区分  一部変更・棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①Y1が組合員A1及び組合員A2(組合員2名)を27年3月末日をもって雇止めした(本件雇止め)こと、②Y1が同月16日以降、地本及び支部(組合)に対し会議室貸与を拒否したこと及び地本役員の同社構内への立入りを禁止したこと、③Y2が組合の申し入れた団体交渉を拒否したこと等が労組法第7条各号の不当労働行為に当たるとして、組合が東京都労委に救済を申し立てた事案である。
2 初審東京都労委は、上記①及び②は不当労働行為に当たるとして、組合員2名との雇用契約を更新したものとして取扱い、組合員A1について70歳に達した以後の契約満了日までの原職又は原職相当職へ復帰させること及びバックペイ、組合員A2について70歳に達した以後の契約満了日までのバックペイを命じるとともに、①②に係る文書交付及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、Y1は救済部分を不服として、組合は棄却部分を不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、本件申立てを棄却した。ただし、初審命令主文第1項を変更した。 
命令主文  1 本件各再審査申立てを棄却する。
2 ただし、初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
 株式会社Y1は、X1東京地方本部及びX1東京地方本部X2支部の組合員A1及び同A2に対し、平成27年4月1日から70歳に達した以後の契約満了日までの間の賃金相当額をそれぞれ支払わなければならない。  
判断の要旨  (1) 本件雇止めは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか
ア Y1は、団体交渉において、組合に対し「70歳まで働いて取り損なった退職金を回収してください。」と述べ、70歳まで再雇用契約が更新されるという期待を抱かせるものであった。
Y1と組合との間では、前件事件について初審が一部救済する内容の命令書を交付し、組合が同命令の再審査を申し立てた直後の26年9月3日、組合員2名の契約は、月給制の「再雇用『契約社員』契約」に変更され、さらに同年11月27日には、週3~4日勤務の時間給となる月収が大幅に減となる「再雇用『アドバイザー』契約」を提示し、同契約を締結したのは組合員2名のみであった。
イ 一方で、65歳以上の再雇用者(非組合員)10名のうち、Y1との再雇用契約が終了した後に業務委託や派遣に移行しなかった者は、その経緯が不明な1名を除き、いずれも69歳に達した後もY1の業務に従事しているのに対し、組合員A1は66歳、組合員A2は67歳で雇止めされ、当時のY1の再雇用者の取扱いとしては例外的なものであったといえる。
ウ そうすると、前件事件が中労委に係属中で労使関係が良好と言い難い時期に、組合員2名のみが「再雇用『アドバイザー』契約」の提示を受け、同契約の初めての期間満了時に雇止めされたことに鑑みれば、本件雇止めは組合員であることを決定的な理由として行われたものと認められる。

(2) Y1が組合に対し会議室貸与を拒否したこと及び地本役員の同社構内への立入りを禁止したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
ア Y1は、これまで組合の施設利用を認める取扱いをしていたにもかかわらず、事前に組合に十分な説明をすることもなく、施設利用に関する協議の申入れや代替案の提示などの配慮を行わないまま、一方的に従前の取扱いを変更した。
イ したがって、Y1が、組合に対して会議室貸与を拒否したこと及び地本役員の同社構内への立入りを制限したことは、施設利用に関する従前の取扱いを一方的に変更したことによって、組合活動に支障を生じさせたものであって、不当労働行為に該当する。

(3) Y2は、労組法上の使用者といえるか
ア Y2はY1の株式を100%保有し、Y1の社長はY2の取締役を兼務していること、Y2出身者2名が取締役に就任していること及びY1が27年3月25日の団体交渉において再雇用者の賃上げ等のやりとりの中で、Y2の了解がなければ難しいとする発言があったことからすれば、Y2はY1の経営について一定の支配力を有していたといえる。
イ しかしながら、同日の団体交渉におけるY1の上記発言は、誰が賃金を決定するのかという組合の問いに対し、賃上げの決定権はY1にあるが、決定のプロセスとして、再雇用者の賃上げをするためにはY2の了解がなければ困難である旨を述べたうえで、現状ではY2に掛け合う必要性は感じられないと述べているところ、これは、Y1の再雇用者の賃金とY2のそれとが同水準であることから、Y2から借り入れがあるY1が再雇用者の賃上げを決定するには、Y2の意向確認がなければ困難であるという事情を説明したものと解され、それ以上に、Y2がY1の従業員の労働条件を現実かつ具体的に決定していたと認めるに足る証拠はない。また、Y1の施設使用についても、その方法についてY2が具体的に決定したと認めるに足りる証拠もない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成27年(不)第18号 一部救済 平成29年12月19日
 
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