労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年(不)第18号
島崎エンジニアリング不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2支部(X1とX2を合わせて「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成29年12月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①Y1会社がA3らを本件雇止めとしたこと、②本件雇止め、春闘等に関する団体交渉におけるY1会社の対応、③上部団体の出席を理由にB1社長が団体交渉を欠席したこと、④Y1会社が、個々の組合員に労働条件を提示すると回答したこと、⑤Y1会社が会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたこと、⑥Y2会社が団体交渉を拒否したこと、⑦Y2会社が会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、会社に対し、雇用契約を更新したものとしての取扱い、原職相当職復帰、バックペイ、①及び⑤について文書の交付・掲示、履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人X1組合及び同X2支部の組合員A3及び同A4との雇用契約を平成27年4月1日以降更新したものとして取り扱い、A3を70歳に達した以後の契約満了日までの間原職又は原職相当職に復帰させるとともに、A3に対し、同日から原職又は原職相当職に復帰させるまでの間の賃金相当額を、また、A4に対し、70歳に達した以後の契約満了日までの間の賃金相当額をそれぞれ支払わなければならない。
2 被申立人Y1会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
                
                         
年 月 日
 X1組合
  執行委員長 A1 殿
 X2支部
  執行委員長 A2 殿
Y1会社                       
代表取締役 B1

 当社が、平成27年3月19日に貴組合に対する会社会議室の貸与を拒否したこと及び貴X2支部の組合事務所に貴X1組合の役員の立入りを認めなかったこと、並びに貴組合の組合員A3氏及び同A4氏の雇用契約を同月31日をもって終了し、更新しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
3 被申立人Y1会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 A3らを本件雇止めとしたこと
 Y1会社は、A3ら及び組合に退職金が一部支払われなかったことに対する補償の意味合いで70歳まで雇用する旨の発言をしておきながら、前件の再審査申立て等が行われて労使関係が良好とはいえない状況下で、合理的な理由もなく、何の説明もなく上記発言を翻し、雇止めに係る具体的な基準のない中で、組合員以外の従業員について雇用あるいは業務委託等を継続しながら、組合員であるA3らのみを本件雇止めとしたのであるから、組合を嫌悪し、組合員をY1会社から排除するため、A3らを本件雇止めとしたものというほかない。したがって、A3らを本件雇止めとしたことは、同人らが組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たる。
2 本件雇止め、春闘等に関する団体交渉
 B1社長は、2月12日以降の団体交渉に出席していないが、B1社長の出席について協約等の取決めはなく、また、Y1会社側出席者が交渉に関して権限がないため団体交渉に具体的な支障があったなどの事情は認められないのであるから、B1社長が団体交渉を欠席したことは、団体交渉の拒否若しくは不誠実団体交渉に当たるということはできない。
 Y1会社は3月25日に本件雇止めについての団体交渉に応じでいるのであるから、Y1会社が本件申立てを理由に団体交渉を拒否したとはいえない。
 また、2月12日の団体交渉においては、B1社長の出席を巡るやり取りに終始し、同月25日の団体交渉は賃上げを議題としたため、本件雇止めについて協議はされていない。しかし、B1社長の出席を繰り返し要求したのは組合であり、上記のとおり、B1社長が団体交渉を欠席したことは、団体交渉の拒否あるいは不誠実団体交渉に当たらないのであるから、B1社長の出席の要求のために本件雇止めについて団体交渉が進まなかったことをY1会社のみの責任ということはできない。
 Y1会社は、本来、本件雇止めについて、十分に説明してしかるべきではあるが、限られた交渉時間において、いまだ十分な交渉が行われていない状況であり、Y1会社が意図的に説明を回避したものとみることはできないから、不誠実団体交渉であるということはできない。
 Y1会社は、この団体交渉において、再雇用者について明確に有額回答を行うと述べたわけではなく、3月16日には、回答期日が遅れはしたものの正社員の賃上げを回答しており、同月25日の団体交渉においては、2月25日の発言は、説明が足りなかったが、全員有額回答という趣旨ではなかった旨を説明しているのであるから、組合を欺こうとしたとまではいえない。
 したがって、Y1会社が団体交渉において誤解を与えかねない発言をしたことは問題がないとはいえないが、不誠実な団体交渉とまではいうことはできない。
 事前協議・同意協定は、組合が要求しているものの、Y1会社との間で合意には至っていない。また、その後の団体交渉において、Y1会社が本件雇止めについて協議することを拒否したなどの事情はないのであって、Y1会社が労働条件を従業員個人に提示すると回答したことをもって団体交渉の拒否若しくは不誠実団体交渉とはいうことはできない。
 したがって、本件雇止め、春闘等に関する団体交渉におけるY1会社の対応は、いずれも団体交渉の拒否若しくは不誠実団体交渉には当たらない。
3 上部団体の出席を理由にB1社長が団体交渉を欠席したこと、Y1会社が個々の組合員に労働条件を提示すると回答したこと、会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたこと
 Y1会社がB1社長の団体交渉への出席を拒否した事実は認められるものの、Y1会社が上部団体の出席を理由に団体交渉に出席しないと述べたとまで認めるに足りる疎明はない。
 そして、B1社長が出席しなかったことによって団体交渉に支障が生じたとは認められないのであるから、B1社長が団体交渉を欠席したことは、組合運営に対する支配介入に当たるということもできない。
 Y1会社が個々の組合員に労働条件を提示すると回答したことにより、団体交渉を形骸化したとか、組合活動を阻害したなどということはできないのであるから、組合運営に対する支配介入に当たるということもできない。
 Y1会社への立入りの厳格化は、機密保持のための厳格な管理を求められたことに由来するとのY1会社の主張は、理解できなくはないが、Y1会社は、従来Y1会社施設の貸与やX1組合役員の立入りを規制せずに認めており、X1組合役員が立ち入ったために機密保持上の問題が実際に起きたなどの事情もなかったにもかかわらず、事前に組合と話し合うことも、組合に手続案を提示するなどの配慮も一切なく、一方的に従来の取扱いを変更し、会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたものであるから、Y1会社のこのような対応は、組合運営に対する支配介入に当たるといわざるを得ない。
 したがって、B1社長が団体交渉を欠席したこと及びY1会社が個々の組合員に労働条件を提示すると回答したことは、支配介入に当たらないが、Y1会社が会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたことは、組合運営に対する支配介入に当たる。
4 Y2会社が、団体交渉を拒否したこと、会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止をしたこと
 Y1会社は、組合員らの賃金など労働条件を、組合と団体交渉を行い、決定してきたことが認められる。また、Y1会社は、3月25日の団体交渉においては、賃上げはY1会社の取締役が決定すると述べている。そうすると、団体交渉におけるY1会社の発言も、Y2会社から資金援助を受けている以上、Y2会社の資金援助の意向を損なわない範囲で労働条件を決めざるを得ない旨を表明したものと解すべきであり、労働条件について、Y2会社が決定していると解するのは相当ではない。
 したがって、Y2会社の意向に従わざるを得ず、Y2会社の了解がないと賃上げできないとの会社の発言のみを捉えて、Y2会社が100パーセントの株式を所有する株主としての地位を越えて、組合員らの労働条件を決定しているということはできない。
 また、会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止について、Y1会社は、3月25日の団体交渉においてY2会社が決定した、Y2会社の方針であるなどと述べている。
 しかし、3月18日の回答書においては、Y1会社は、Y2会社の定めた「体制の整備に向けて」の一環として、機密保持契約の遵守のため、社外の者の立入りを制限すると回答している。この回答を踏まえると、Y2会社がグループ会社に対して、「体制の整備に向けて」を方針として示し、Y1会社がこれを受けて、方策を検討しX1組合役員をY1会社敷地内へ入れないこととしたものと解さざるを得ず、団体交渉におけるY1会社の発言もその旨を述べたものと解するべきである。そうすると会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止について、Y2会社が決定したものと解することはできない。
 したがって、上記Y1会社の発言のみをもって、Y2会社が100パーセントの株式を所有する株主としての地位を越えて、会議室貸与拒否及びX1組合役員立入禁止について決定しているということはできない。
 以上のとおり、Y2会社は、組合員らの労働条件並びに会議室貸与拒否及びX1組合役員の組合事務所立入禁止について決定しているとはいえないから、本件申立内容について、使用者に当たるとはいえず、Y2会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否にも、組合運営に対する支配介入にも当たらない。 
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