労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第15号
三協技研工業外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Xユニオン 
再審査被申立人  Y1株式会社(Y1会社) 
再審査被申立人  Y2株式会社(Y2会社) 
命令年月日  平成31年2月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合員A1は、Y1会社に雇用され、同社の請負業務の注文者であるY2会社の工場で就労していたが、平成26年2月、出勤時に同社敷地内の凍結した路面で転倒し、負傷した (「26年事故」)。
本件は、①Y1会社及びY2会社が、26年事故に関する組合員Aの損害賠償問題等を議題とする組合の団体交渉申入れ(「本件 団交申入れ」)に応じなかったこと、Y2会社が、②取引先に対する組合の宣伝活動について、再び同様の活動を行った場合は法 的手段を採ると警告したこと、③本件初審の審査手続において、組合には組合員Aの損害賠償請求権を代理して行使する権限がな い旨の主張をしたこと、④本件救済申立て後の団体交渉で、組合の提示した損害賠償額の交渉に応じなかったことが不当労働行為 であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、Y2会社は26年事故に関連する交渉事項の限りにおいて労組法第7条の使用者に当たるが、Y1会社及びY2会社の対応はいずれも不当労働行為に当たら ないとして救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、本件申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件団交申入れに対するY1会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 Y1会社が、本件団交事項について「特に指摘されるような問題はない」と回答書に記載したのは、組合の要求に応じて交渉前 に自身の見解を明らかにしたものと解されること、団体交渉については、組合の都合の良い日時を連絡するよう求め、団体交渉の 開催に向けて組合との調整に応じる姿勢を示していること等に鑑みれば、同社が団体交渉を拒否したとは認められない。
 したがって、本件団交申入れに対するY1会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。
(2) Y2会社は、組合員Aの労組法第7条の使用者に当たるか。
 本件では、組合員Aの負傷について安全配慮義務違反に起因する損害賠償責任が問題となっており、26年事故の発生場所を所 有し、組合員Aの就労場所を提供しているY2会社が、民事上、安全配慮義務に基づく責任を負う可能性はあり得る。また、労働 安全衛生法には、労働災害を防止するため、労働契約上の使用者以外の事業者に対する一定の規制も定められており、Y2会社が かかる規制の対象となる可能性もあり得るところである。
 しかし、集団的労使関係の一方当事者たる労組法上の使用者といえるためには、単に、安全配慮義務を負う可能性があり得るこ とや、労働安全衛生法上、一定の規制の対象となり得ることのみでは足りず、当該労働者の基本的な労働条件等について、雇用主 と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができることが必要である。
 本件についてみると、Y2会社では、朝礼や打合せにY1会社の従業員も参加していたこと、及び、組合員Aは、仕事が早く終 わったときに、Y2会社の担当者から隣の従業員の仕事を手伝うよう指示を受けたことがあったという事情は認められるものの、 それ以上に、Y2会社が組合員Aに対して、労務提供について具体的な業務上の指示を行っていたとは認められない。また、Y2 会社が同人の作業環境を支配、決定していたといった事情を認めるに足りる立証もなく、本件において、Y2会社の労組法上の使 用者性を肯定することはできない。
(3) Y2会社は組合員Aの労組法第7条の使用者に当たらないから、その余の点について判断するまでもなく、Y2会社の上記の各行為は、いずれも不当労働行為に該当しな い。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神労委平成28年(不)第8号 棄却 平成30年2月26日
 
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