労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第51号
全日本海員組合(その2)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y組合X労働組合(X組合) 
再審査被申立人  Y組合(Y組合) 
命令年月日  平成30年12月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 Y組合は、X組合に対し、Y組合の組合従業員規定の一部改定(本件一部改定)について意見書の提出を求めたところ、X組合は、本件一部改定について団体交渉により労使協議をするよう求め、平成28年3月14日、同年4月6日及び同月27日に団体交渉(それぞれ「第7回団交」、「第8回団交」及び「第9回団交」)が開催された。
 本件は、本件団交における本件一部改定に関するY組合の対応が、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案。
2 初審石川県労委は、本件団交におけるY組合の対応は不当労働行為に該当しないとして、救済申立を棄却したところ、これを不服として、X組合が再審査を申し立てた。
3 中労委は申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 争点1 本件団交における「本件一部改定」に関する交渉事項は、義務的団体交渉事項に当たるか。
ア 本件団交の経緯や交渉事項の記載を踏まえると、本件団交の交渉事項は、本件一部改定につき、就業規則の不利益変更に当たるかも含めた、具体的変更内容であったと認められる。
 本件団交において、X組合は、本件一部改定の内容のうち、具体的な説明等を求めたのは、執行部員及び先任事務職等(執行部員等)に対して、時間外手当を支給しないとする規定を削除し、執行部員等の手当に時間外手当等の一部が含まれることとした執行部員等の時間外手当等に関する規定(時間外手当規定)である。そして、従業員組合は、時間外手当等の一部が含まれるとしたことが不利益変更に当たる見解に立ち、不利益変更であるかどうか繰り返し質問をするとともに、時間外手当規定が不利益変更か繰り返し質問し、本件一部改定前には執行部員手当等に時間外手当等が含まれていなかったので、時間外手当等を支払うよう要求した。
 ところで、執行部員手当及び役職手当は執行部員に対するもの、先任事務職員手当は先任事務職員に対するもの等であるところ、本件団交の申入れ時及び開催時において、X組合の組合員に執行部員等の職責にある者が在籍していたと認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、本件一部改定のうち時間外手当規定は、X組合の組合員らの労働条件、権利等に関わる事項に当たらない。
 また、執行部員手当等には時間外手当等の一部を含むとする本件一部改定が、従業員組合の組合員の給与等に影響を与えるものではなく、執行部員等の少なからぬ者が近い将来加入するというような事情が存するとも認められないことからすれば、執行部員等の時間外手当等に関する事項が将来にわたってX組合の組合員に影響を及ぼす可能性が大きいと認めることができず、従業員組合の組合員の労働条件との関わりが強い事項ともいえない。
 したがって、本件団交において、X組合が取り上げた本件一部改定のうち執行部員等の時間外手当等に関する事項は、義務的団交事項に当たらない。
イ X組合は、第8回団交及び第9回団交において、本件一部改定に関連して労働時間管理に関する事項については、X組合の組合員を含む他の従業員にも直接関係する事項である旨主張するが、本件団交を通じて、従業員組合が一貫して問題として取り上げていたのは、本件一部改定前に執行部員手当等に時間外手当等が含まれていたかということであり、それに関連して、労働時間管理に関する事項の質問がされている経緯からすると、労働時間管理に関する事項は、独立した交渉事項と認めることはできず、本件一部改定のうち執行部員等の時間外手当等に付随して質問及び要求されたものと認められるので、義務的団交事項に当たらない。
(2) 争点2 上記(1)で義務的団体交渉事項に当たる場合、本件団交におけるY組合の対応は、労組法第7条2号の不当労働行為に当たるか。
 本件一部改定は、義務的団交事項に当たらないのであるから、海員組合が誠実交渉義務を負うと解することはできない。
 したがって、本件団交におけるY組合の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為と認めることはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
石労委平成28年(不)第1号 棄却 平成29年9月27日
 
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