労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  石労委平成28年(不)第1号
全日本海員組合不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y組合(「組合」) 
命令年月日  平成29年9月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   Y組合が、X組合に対し、Y組合の組合従業員規定の一部改定(以下「本件一部改定」という。)について意見書の提出を求めたところ、X組合は、本件一部改定について団交を開催して説明するよう求め、これにY組合が応じ3月14日、4月6日及び27日に団交が両者間で開催された。
 本件は、本件団交において、本件一部改定に関する事項についてY組合が誠実に対応しなかったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、石川県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(本件団交において本件一部改定に関する事項が義務的団交事項であるか、義務的団交事項でない場合に、信義則等によりY組合に誠実交渉義務が生じるか。)について
(1)義務的団交事項について
① 組合員従業員規定について、執行部員等に対し時間外手当を支給しないとする規定を削除し、執行部員手当等の一部に時間外手当等の一部が含まれることを明示するなどの一部改定がなされ、本件団交においては、執行部員手当等の改定に関する事項(以下「本件割増賃金事項」という。)について団交がなされるとともに、X組合からは労働時間管理に関する資料の提出などが求められた。
 本件団交時にX組合には、執行部員等のいずれについても在籍していたとは認められない。
 本件については、近い将来にX組合に執行部員等が在籍する具体的可能性があることを認めるに足りる証拠はなく、近い将来X組合に執行部員等が加入したり、現在の組合員が執行部員等となる具体的可能性があるとは認められない。
 以上からすると、本件割増賃金事項は、X組合の組合員の労働条件等に関するものとはいえないといわざるを得ない。
② 本件割増賃金事項は、執行部員等の割増賃金に関するものであるところ、近い将来執行部員等がX組合に加入したり、X組合の現在の組合員が執行部員等となる具体的可能性は認められない。また、割増賃金は、初任給や基本給のようにその後の賃金のベースになるものでもない。
 当該労働条件等の変更についての解釈や主張が、当該変更について影響がある場合があったとしても、当該変更事項以外の将来の変更事項について、具体的な変更事項が確定していない現時点において、どのような影響が生じるかについては予想が困難であり、将来にわたり組合員の労働条件や権利等に影響があると認めるのも困難である。
 また、将来、Y組合が、X組合とは異なる解釈や主張でX組合の組合員の労働条件等を改定することがあったとしても、Y組合が、本件割増賃金事項についてX組合と異なる解釈や主張をもって改定したことと直接の因果関係があるとは認めがたい。
 以上からすると、本件割増賃金事項は、将来にわたりX組合の組合員の労働条件、権利等に影響を及ぼす可能性が大きいものとは認められず、かつ、X組合の組合員の労働条件との関わりが強い事項や一般的にX組合の組合員の処遇に影響を及ほすものとも認められない。
③ 義務的団交事項であるかは、使用者から意見を求められた事項であったか否かであるとか、唯一の交渉事項であったかによって定まるものではない。本件割増賃金事項は、既に検討したとおり、X組合の組合員の労働条件等に関するものでなく、また、非組合員の労働条件に関する場合において義務的団交事項が認められるものに該当するものではない。
④ 当委員会を含む複数の労働委員会において、Y組合のX組合に対する不当労働行為が複数回認定されているが、X組合に執行部員や先任事務職員が加入しなかったのは、Y組合の不当労働行為が原因であったかは明らかでない。
 仮に、X組合に執行部員や先任事務職員が加入していない原因がY組合の不当労働行為にあったとしても、不当労働行為の目的が、執行部員等の労働条件に関する事項は、義務的団交事項ではないと主張するためのものであったことが明らかな場合は別として、Y組合が義務的団交事項ではなく任意的団交事項であると主張することと、過去の不当労働行為とは直接の関係があるものとは言えず、Y組合に労働組合法上の誠実交渉義務が生じるものではない。
⑤ 本件団交時にX組合に執行部員等が在籍していたとは認められないこと、また、X組合の組合員であり先任事務職員であったA2は、平成25年9月には退職しており、未払時間外手当があったとしてもその請求権は、本件団交時においてはすでに時効により消滅していたと考えることができることからすると、執行部員等に関する労働時間の管理方法は、本件においては義務的団交事項とはならない。
 本件割増賃金事項は、Y組合の組合従業員規定において従前は明示されていなかった執行部員手当等と時間外割増賃金との関係を明示するための改定であり、本件団交では、執行部員等の労働時間の管理方法が主な問題とされており、それ以外の従業員の労働時間の管理方法は、いわば派生的に持ち出されたもので、中心となる争点ではない。
 加えて、執行部員等以外の従業員の労働時間の管理方法には特段の問題があったとは思われない。
 以上からすると、一般的には義務的団交事項であったとしても、本件の争点との関係では、執行部員等以外の従業員の労働時間の管理方法は、義務的団交事項であるとまではいえない。
(2)信義則等により誠実交渉義務が生じるか。
 本件割増賃金事項が義務的団交事項でなく、労働組合法上の誠実交渉義務を生じさせるものではないことからすれば、Y組合に課される説明義務は、道義的義務に過ぎず法的義務ではない。
 したがって、一応の説明がなされればその義務は果たされたというべきものである。
 本件団交において、Y組合は、改定の趣旨等の説明をしていることが認められる。Y組合の説明がX組合の見解に一致しないものであったり、X組合にとっては必ずしも納得できる内容の説明でなかったとしても、Y組合からは一応の説明がなされているものとして、Y組合の説明義務は果たされているというべきである。
2 争点2(使用者であるY組合に誠実交渉義務が生じると判断された場合に、不当労働行為に該当するか。)について
 本件割増賃金事項は、団交を拒否しえない事項に当たらず、また、労働時間の管理方法についても本件では団交を拒否しえない事項には当たらないので、争点2については判断を要しない。
 
掲載文献   

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