労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第5号
全日本海員組合不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y組合X労働組合(X組合) 
再審査被申立人  Y組合(Y組合) 
命令年月日  平成31年2月20日 
命令区分  変更、却下 
重要度   
事件概要  1 本件は、X組合とY組合との間で、平成27年4月10日(第2回団交)、同年5月20日(第3回団交)及び同年7月29日(第4回団交)に実施された団体交渉における「新再雇用職員規定の遡及的撤廃と旧再雇用職員規定が有効であることの確認」(団交事項①)及び「組合従業員規定の労働基準監督署への届出」(団交事項②)について、Y組合が誠実に団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、X組合が、石川県労働委員会(石川県労委)に救済を申立てた事案。
2 初審石川県労委は、第2回から第4回団交における団交事項①について、Y組合が理由として挙げた再雇用職員の就業体系の違い(理由①)及び財政上の理由(理由②)のうち、第3回から第4回団交における理由②及び団交事項②についての海員組合の対応は不当労働行為に当たるとして、Y組合に対し、団交事項①については、団体交渉において財政事情について具体的な数値を示すなどした説明及び文書交付を、団交事項②については文書交付を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、初審命令を不服として、従業員組合が再審査を申し立てた。
 さらに、X組合は、27年11月19日(第5回団交)及び28年2月6日(第6回団交)の団体交渉における団交事項①②についてのY組合の対応について、不当労働行為に当たるとして、29年2月14日、本件再審査申立てに追加して救済申立てを行った(再審査追加救済申立て)。
3 中労委は、初審命令を変更し、文書交付を命じ、その余りの申立てを却下した。 
命令主文  1 初審命令主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。 Y組合は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書をY組合X労働組合に交付しなければならない。
平成 年 月 日

Y組合X労働組合
組合長 A 殿
Y組合      
組合長 B 印

 当組合と貴組合との間で開催された平成27年4月10日、同年5月20日及び同年7月29日の団体交渉において、「新再雇用職員規定の遡及的撤廃と旧再雇用職員規定が有効であることの確認」及び「組合従業員規定の労働基準監督署への届出」 の議題に一ついての当組合の対応が、 中央労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。

 今後、このようなことを繰り返さないようにします。
(注:年月日は、文書を交付する日を記載すること。)

2 初審命令主文第3項を取り消す。
3 その余の本件再審査申立てを却下する。 
判断の要旨  (1) 争点1 第2回から第4回団交における団交事項①②のY組合の対応
ア 従業員組合が、再雇用職員規定を改定(本件改定)し、期末手当を不支給とした理由の質問に対して、Y組合は、理由①と理由②と回答した。
しかし、それまで再雇用職員には出向先から支払われる期末手当とY組合の規定により支払われる期末手当との差額を支払っていたにもかかわらず、差額を支払わないこととした本件改定について、X組合は、労働条件の不利益変更であり手続き的にも無効であるので撤廃し、遡及的に支給するべきと要求をした。
 これに対して、海員組合は、出向先から支払われる期末手当は「個別の契約」によること、本件改定により差額が支払われなくなっても、それを前提とした再雇用契約等は、個別の契約によるので不利益変更ではなく有効であるので、期末手当は支給しないと主張した。
 このように、従業員組合は、本件改定を問題としたのに対し、Y組合は、本件改定は不利益変更ではないとして、その理由は、理由①に終始し、結局のところ、不利益変更問題については何ら説明を行っていないことに帰する。
 理由②についての説明をみても、X組合から事前質問として、具体的な数値を挙げて理由②の説明を求められていたにもかかわらず、理由①しか文書で回答せず、第2回団交において、理由②を質問されると、「認識がもれていた。」「申し訳ありませんでした。」と謝罪したが、第3回団交でも資料を提示せず、第4回団交においても、定期全国大会資料の年度別収支推移と勘定科目月別収支表の提示にとどまり、初審命令に従って実施した第10回団交において、ようやく、各種財政状況の資料を提示して説明した。
 そうすると、第2回団交から第4回団交における団交事項①についてのY組合の対応は、全体として誠実交渉義務を尽くしたということはできない。
イ Y組合は、第1回団交において、X組合から就業規則未届出の理由の質問に対し、理由を答えなかったが、届出について「真摯に検討させていただきます。」と述べていた。
 その後、X組合から、第2回団交申入れ時に、就業規則未届出の理由の文書回答を求められると、Y組合は、文書回答どおり「従業員規定を整理している。」と回答し、第3回団体交渉でも「整理中」との回答にとどまり、第4回団交では、「現実にそぐわない部分を見直しつつ、アドバイスを受けているため時間を要している」と説明したところ、従業員組合から「現実にそぐわない部分」の質問や届出時期の見込みの求めに何ら回答しなかったにもかかわらず、従業員規定を改定等することなく就業規則として届け出ている。
 そうすると、第2回団交におけるY組合の対応は、抽象的な回答にとどまり、あるいは回答を拒否したといわざるを得ないもので、不誠実と認められる。
(2) 争点2 再審査追加救済申立て
 X組合が、初審において「救済を請求した事実」は第2回団交から第4回団交までの不誠実団体交渉であるのは明らかであり、第5回団交及び第6回団交は含まれない。
 よって、その余の点について判断するまでもなく、第5回団交及び第6回団交の救済申立ては、労委規則第54条第1項の規定により却下を免れない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
石労委平成27年(不)第2号 一部救済 平成28年12月12日
 
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