労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成29年(不)第9号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成31年1月24日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人会社が、①平成27年10月30日、申立人組合の分会との間で締結した、平成21年7月10日付け確認書(以下「本件確認書」という。)の一部を破棄したこと、②平成28年7月21日、申立人組合のA4組合員を被申立人会社が正社員として直接雇用することを拒否したこと、③平成29年5月22日から同月26日まで、申立人組合のA5組合員を就労させなかったこと、④同年9月以降、申立人組合の組合員を就労させなくなったことが不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件で、兵庫県労働委員会は、②について却下し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 本件申立てのうち、平成28年7月21日、被申立人会社が申立人組合A2支部のA4組合員の直接雇用を拒否したことに係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 除斥期間について
ア 13日確保協定の破棄に係る申立ての除斥期間
 被申立人会社は、13日確保協定の破棄について、申立人組合の申立ては、(本事件の救済申立てが行われた平成29年10月13日の時点では)起算日から1年が経過しているから、却下は免れない旨主張する。
 被申立人会社は、平成29年7月24日以降、申立人組合の組合員の就労日数を減少させる行為をしており、申立人組合の組合員の就労日数の減少は、被申立人会社が13日確保協定を破棄することによってなされたものであるということができ、両者を全体として一個の行為とみることもできる。
 確かに、被申立人会社は、13日確保協定を破棄して以降も、1年以上にわたって申立人組合の組合員を月13日以上就労させており、この間は、事実上、破棄の効果は発生していないが、これは被申立人会社において、組合員の就労日数を減少させる時期を見計らっていたにすぎないものといえる。
 したがって、13日確保協定の破棄に係る申立ては、却下されるべきであるとする被申立人会社の主張は採用できない。
イ A4の採用拒否に係る申立ての除斥期間
 申立人組合は、A4の採用と13日確保協定の破棄は、団体交渉において、関連する事項として同時に論じられており、A4の不採用は被申立人会社が18日確保協定を破棄したことから始まった一体の行為であり、継続する行為に該当する旨主張する。
 被申立人会社は、A4の採用を拒否した際、被申立人会社の当該時点での経営状況に基づく判断を根拠に、申立人組合に対して当該時点でA4を採用することができないと回答したものであり、これは13日確保協定の破棄通告とは別個の行為であるというべきであって、労組法第27条第2項の継続する行為に該当するものと解することはできない。また、被申立人会社が平成29年9月以降、申立人組合の組合員を就労させなくなったものであるところ、このことと被申立人会社がA4の採用を拒否したこととは関連性があるとはいえず、両者が一体の行為であると認めることはできない。したがって、これらが労組法第27条第2項の継続する行為に該当するものと解することはできない。
 したがって、平成28年7月21日、被申立人会社がA4の採用を拒否したことに係る申立てについては、労組法第27条第2項により申立期間を経過しているので、却下する。

2 平成27年10月30日、被申立人会社が13日確保協定の破棄を通告したことは、申立人組合の組合員に対する不利益取扱い及び申立人組合に対する支配介入に該当するか。(争点1)
(1) 13日確保協定の破棄理由について
ア B2営業所では、ここ数年大幅な赤字を計上していたところ、被申立人会社は、正規乗務員の稼働率向上等を課題として収支改善に取り組んでいた
 しかし、申立人組合の組合員がB2営業所の業務量にかかわらず月13日以上就労していたことからすると、被申立人会社は、B2営業所の業務量にかかわらず申立人組合の組合員の業務量を確保していたことになり、正規乗務員の稼働率が改善できない状況にあったと推認できる。
 そうすると、B2営業所の経営状況に照らし、その収支改善のために13日確保協定を破棄したとする被申立人会社の主張には一定の合理性が認められる。
イ 日雇労働求職者給付金(給付金)は、日雇労働被保険者が失業した日の属する月の前2月間に印紙保険料が通算して26日分以上納付されているときに支給されるところ(雇用保険法第45条)、13日確保協定によって確保される就労日数と、給付金の支給要件を満たすために必要な就労日数が一致しており、また、申立人組合は、申立人組合の組合員の就労日数を月13日確保することで、申立人組合の組合員が給付金を受給できると認識してした。
 しかし、同法の目的は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図ること等であるところ(同法第1条)、13日確保協定に基づく給付金の受給は、同法が定める日雇雇用保険制度の制度趣旨から逸脱するものであったとの疑念は拭えない。このため、13日確保協定が、日雇雇用保険制度の制度趣旨に抵触する問題を内包していたとの被申立人会社の主張は首肯できる。
 したがって、その是正のため、被申立人会社が13日確保協定を破棄したことには、一定の合理性がうかがえる。
(2)不当労働行為の成否
 被申立人会社が、13日確保協定の破棄を通告したことは申立人組合の組合員であるが故をもってなされた不利益取扱いに当たるとはいえないから労組法第7条第1号に該当しない。
 また、申立人組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図して行われたことをうかがわせる事情は認められないので、労組法第7条第3号に該当しない。

3 平成28年7月21日、被申立人会社がA4の正規雇用を拒否したことは、A4に対する不利益取扱い及び申立人組合に対する支配介入に該当するか。(争点2)
 被申立人会社は、A4の採用について、当初申立人組合に対し期待を持たせる回答をしながら、結果としてA4の採用を拒否したものであって、被申立人会社の対応は不適切なものであったといわざるを得ない。
 しかし、そもそも2月17日付け確認書が、申立人組合の組合員の採用について、会社の業績又は経営計画等を考慮しながら検討する旨留保を付していることからすると、申立人組合と被申立人会社との間でA4を採用する旨の合意が確定的に成立していたとまでは認められない。
 加えて、B2営業所ではここ数年大幅な赤字を計上しており、収支改善の差し迫った必要性があったものと認められる。また、A4の採用を拒否した当時、被申立人会社では、正規乗務員の稼働率が低く、会社の経営を圧迫していた。このような被申立人会社の経営状況に鑑みると、被申立人会社がA4を採用することは困難であったといわざるを得ず、被申立人会社がA4を採用しなかったことには、経営判断として一定の合理性が認められる。
 したがって、被申立人会社がA4採用を拒否したことは、直ちに申立人組合との間の合意に反するものであったとはいえない。
 被申立人会社がA4の直接雇用を拒否したことは、A4が組合員であるが故をもってなされたものということはできず、労組法第7条第1号に該当しない。
 また、当該行為は、申立人組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図して行われたと認められないので、労組法第7条第3号に該当しない。

4 平成29年5月22日から同月26日までの間、被申立人会社がA5の就労を拒否したことは、A5に対する不利益取扱い及び申立人組合に対する支配介入に該当するか。(争点3)
 申立人組合は、被申立人会社がA5を日雇労働者として受け入れることに抵抗し、A5が日雇手帳を取得していないことをロ実として就労を拒否した旨主張する
 被申立人会社は、A5を供給する連絡を受けたことに対して異議を述べていないこと及び平成29年5月27日以降は、A5が日雇手帳の交付を受けずに就労することを認めた上、不就労手当を支払っていることが認められ、これらの事実からは、被申立人会社がA5を就労させること自体を拒否していないと認められる。
 また、被申立人会社が、A5に対し日雇手帳の交付を求めたのは、雇用保険法に則した手続を行うためにすぎないと考えられる。加えて、被申立人会社で就労する日雇労働者は、従前から日雇手帳の交付を受けてから就労を開始しており、他の日雇労働者と比べ、A5だけに異なる取扱いを求めたわけではなく、被申立人会社が日雇手帳の交付をロ実にして、A5の就労を拒否したとは認められない。
 以上のことからすると、被申立人会社は、雇用保険法上必要な手続が行われていないため、A5の就労を拒否したということができ、被申立人会社がA5の就労を拒否したことは、A5が組合員であるが故をもってなされたものとは認められないので、労組法第7条第1号に該当しない。
 また、当該行為は、申立人組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図して行われたと認められないので、労組法第7条第3号に該当しない。

5 平成29年7月24日以降、被申立人会社が申立人組合の組合員を1日に3人しか就労させなくなり、同年9月以降は全く就労させなくなったことは、申立人組合の組合員に対する不利益取扱い及び申立人組合に対する支配介入に該当するか。(争点4)
 被申立人会社が申立人組合の組合員を就労させなくなったことは、業務受託量の減少により、申立人組合の組合員を就労させる業務上の必要性が低下していたからであり、組合員であるが故をもってなされたものではなく、また、申立人組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図して行われたと認められないので、労組法第7条第1号及び第3号に該当しない。 
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