労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29 年(不再)第47 号・第48号
交通機械サービス不当労働行為再審査事件
再審査申立人  X組合(第47号)、Y会社(第48号) 
再審査被申立人  Y会社(第47号)、X組合(第48号) 
命令年月日  平成30年12月19日 
命令区分  取消、棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合員Aの有期雇用契約不更新に係る団体交渉を3回で打ち切り、それ以降の団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、会社が第4回団体交渉の申入れに応じなかったことは労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、誠実団体交渉応諾、文書交付及び東京都労委への履行報告を命じたところ、組合は救済方法の拡充を求め、会社は救済部分の取消しを求めて、再審査を申し立てた。 
命令主文  1 初審命令を取り消し、本件救済申立てを棄却する。
2 X組合の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 第4回団体交渉を拒否したことの不当労働行為該当性
会社は、第1回から第3回までの団体交渉において、組合員Aの雇用契約不更新の理由について口頭で一定程度回答してはいるものの、それ以上の説明を行う姿勢をみせず、組合が求める資料も一切開示しないという不十分な対応に終始していたのであるから、組合に対し必要な説明を尽くしたという会社の主張は採用できない。したがって、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとはいえないから、会社が、交渉の行き詰まりを理由に組合からの第4回団体交渉の申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
2 救済利益の存否
ア 初審命令交付までの事情における救済利益の存否
 組合が団体交渉を行うことを希望していないとの前提に立った会社の主張は採用できず、また、組合が会社と折衝する機会を自ら放棄したとする主張も採用できない。よって、救済の必要性が失われたということはできない。
イ 初審命令交付後の事情における救済利益の存否
 初審命令交付後、会社は、組合に対し速やかに第4回団体交渉の申入れを行い、その後実施された第4回団体交渉では、自らが保有する組合員Aの雇止めの根拠を示す資料を可能な限り提示し、存在しない資料についてはその理由を繰り返し説明した上、組合員Aの上司を立ち会わせ、既に一定程度説明した雇止め理由について相当に詳細な説明を加えるなど、組合の理解を得るべく可能な限りの説明を尽くしたものとみることができる。そして、その後の組合の更なる団体交渉要求に対して、未だ説明が行われていない事項を個別具体的に特定するように会社が要求したところ、組合はこれに応じていないとの事情にも照らせば、これ以上交渉を重ねても進展がみられない状態となったものとみるのが相当である。よって、改めて会社に誠実団体交渉を命じることは要しない。
 また、会社は、初審命令に従い、同命令交付後速やかに、組合に対する文書の交付及び東京都労委への履行報告を行っているから、今後の同種行為の再発防止等の措置を講じることについても、特段の必要はない。
 以上のことから、会社の団体交渉拒否によって生じた組合の団結権侵害の状態は、既に是正されていると認めるのが相当であるから、救済の利益は失われたものということができるため、初審命令を取り消すこととする。
3 救済利益が認められる場合の救済方法
 本件については救済の利益が失われているのであるから、救済方法に係る組合の主張について判断することは要しないが、組合は誠実団体交渉応諾だけでなく、その先にある雇止めの撤回まで命じなければならないと主張しているので、この点について付言する。
 本件については、組合員Aに対する雇止めの通告は組合加入前に行われたものであり、組合は、同人の雇用問題に関する団体交渉拒否が労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であると申し立てていることから、本件の救済としては、団体交渉拒否の状態を是正することにより正常な集団的労使関係秩序の回復を図るべきものであり、組合員Aの雇用問題は当該団体交渉を通じて解決されるべきものである。これについて組合は、誠実な団体交渉が行われていれば雇止めの撤回及び雇用継続がなされる方向に交渉が進んだことは明らかであるから、その実行まで命じることが必要であるとも主張するが、誠実交渉を命じながら一方でその交渉結果を決定づける旨の命令を労働委員会が行うことは、救済の方法として適切ではない。したがって組合の主張は採用できない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成28年(不)第34号 全部救済 平成29年8月1日
 
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