概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成29年(不再)第8号
日本郵便輸送不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社 |
再審査被申立人 |
X組合 |
命令年月日 |
平成30年11月7日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①平成26年9月30日に開催された団体交渉において、組合に対し、和歌山営業所に勤務する期間雇用社員Aの加入確認を行い、組合員であることの確認ができないことを理由に、同人の解職に係る議題について回答しなかったこと、②別組合には組合事務所を貸与しているにもかかわらず、組合に対し組合事務所を貸与しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労委は、①については労組法第7条第2号及び第3号に該当し、②については同法同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、会社に対し、組合に対する組合事務所の貸与及び具体的条件についての協議、及び①に係る文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 Aの解職に係る団体交渉における対応について
組合が、Aの未払賃金の支払に加えて、3か月分の給与保障、賞与の支払等を求める団体交渉申入書を会社に提出した後、Aは、退職に当たり精算した未払賃金以外に請求するものは一切ない旨の記載がある誓約書に署名押印して会社に提出した。このことは、Aの解職をめぐる問題について解決済みであることをうかがわせ、また、同人が組合の組合員であるかどうかを疑わせる事情といえるが、会社は、団体交渉申入書と誓約書の内容との間の齟齬、矛盾を認識しながら、Aが組合の組合員であるか否か確認するための必要な措置を団体交渉前に何ら講じることはなく、また、その後も誓約書がAから提出されていることを説明せずに、Aが組合の組合員であることが確認できないとの理由でAの解職をめぐる問題について回答しなかったものである。
このことは、組合との合意の達成を誠実に模索したものとはいえず、団体交渉拒否
の正当な理由に当たるということはできず、また、組合の団体交渉申入れを無意味とし、組合員の利益を代表して労使紛争を円滑に解決するという労働組合の団体交渉権を侵害するものであり、労使間における問題の解決を遅らせ組合活動を妨害するものというべきであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。 2 組合事務所の貸与拒否について
会社は、現状において企業施設にスペースがないとするだけでなく、各労働組合に中立的な態度を保持すべく、組合事務所として利用できるスペースの有無を適切に調査し、組合に対し組合事務所を貸与するためにスペースの捻出や確保に努力するなどの具体的な対応が求められるところ、組合事務所として利用できるスペースを適切に調査したとはいい難く、組合に対して組合事務所貸与のための必要な措置を取らなかったものと認められる。
よって、会社が、組合に対して企業施設の制約等を理由に組合事務所を貸与しなかったことに合理的な理由が存在したとはいえず、このような合理的な理由のない組合事務所の貸与拒否は、組合の活動に支障を来すものであり、ひいては組合の活動力を低下させその弱体化をもたらしかねない不当な行為というべきであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。 |
掲載文献 |
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