概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成28年(不再)第5号
伊藤鋼業不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合 |
再審査被申立人 |
Y会社 |
命令年月日 |
平成30年1月10日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 大型トラックドライバーのA1は、平成19年12月、通勤災害によって約1年間休業した後職場復帰し、従前の業務に従事していた。
2 本件は、会社が平成25年4月1日付けでA1をパソコン解体開梱作業等へ配置転換(以下「本件配置転換」という。)したこと、これに伴い賃金月額を従前の約30万ないし35万円から約17万円に減額(以下「本件賃金減額」という。)したこと、A1、A2、A3(以下「組合員ら」という。)に対し適正な人事考課を行わずに24年年末一時金及び25年夏季一時金を支給したこと、A1の配置転換を議題とする25年3月4日から同年5月28日までの4回の団体交渉(以下「本件各団体交渉」という。)における会社の対応が不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事案である。
3 初審兵庫県労委はXの申立てを棄却したところ、Xはこれを不服として、再審査を申立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件配置転換及び本件賃金減額は労組法第7条1号及び同条3号に当たるか
A1の診断書、自己申立書のいずれにおいても、集中力の低下等の症状が見てとれる。加えてA1が「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」との障害認定を受けたことを知り、会社が、安全管理の観点から軽作業に配置転換をしたことには相当の理由がある。
組合支部結成通知以降、会社は団体交渉に応じ、団交ルールや事前協議約款、一時金等数次の確認書を締結するなど相応の対応をしている。
会社は本件配置転換後の賃金について、各団体交渉において説明しており、提示された賃金額には一応理由がある。また、会社が、本件賃金減額分が障害年金によって補填されると考えていても、そのことが直ちに不合理であるともいえず、このことのみから本件賃金減額が恣意的に過剰に減額したものとは認められない。さらに本件配置転換後の賃金について団体交渉において協議しており、配置転換に伴う労働条件の変更に係る就業規則の規定に反するものとまではいえない。
よって、本件配置転換及び本件賃金減額が不当労働行為であるとはいえない。
2 組合員に対する24年年末及び25年夏季一時金に係る人事考課は労組法第7条1号及び同条第3号に当たるか
24年年末の人事考課点の原点について、A1は通勤定期代金を受領したが、これを購入していない。また、A2の配車係に対する抗議が行き過ぎたものと捉え、けん責処分としたことには相応の理由があり、A2は遅刻を繰り返し、同時期に非組合員にも同様の理由で重い処分を科している。このことからA1及びA2に始末書を提出させたことは、差別的取扱いであるとはいえない。
各組合員と同様の評価区分の者の中に組合員らと同様に加算されなかった者や減算された者がいること、当時の労使事情をみても、会社の組合嫌悪をうかがわせる事情もないことから、組合員に対する24年年末及び25年夏季一時金における加減算が組合嫌悪に基づくものということはできない。
よって、組合員らに対する24年年末及び25年夏季一時金にかかる人事考課及び支給は不当労働行為であるとはいえない。 3 本件各団体交渉における会社の対応は労組法第7条第2号に当たるか
社労士が団体交渉に出席し、発言していることは必ずしも適切であったとは言い難い点もあるが、各団体交渉には3名ないし4名の会社団交担当者が出席し、それぞれ自己の所掌事項について責任をもって回答していることに照らせば社労士の発言を考慮したとしても各団体交渉は不誠実なものであったとはいえない。
会社はA1の配置転換の理由を述べ、配置転換先の労働条件について資料を示して説明した上で、組合の要求に対し3月末までの間の運行手当の譲歩案を提示し、4月以降の配置転換先についても配車係等の組合提案を検討した上でできない理由を述べ、他に希望する職種を尋ねてもいる。これに対し、A1及び組合は、具体的な配置転換先の希望を述べなかったことからすると、会社は、組合の要求及び主張に回答し、自己の主張の根拠を示し説明を行ったといえる。
よって、本件各団体交渉における会社の対応は、不当労働行為であるとはいえない。 |
掲載文献 |
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