概要情報
事件名 |
兵庫県労委平成25年(不)第8号 |
事件番号 |
兵庫県労委平成25年(不)第8号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成27年12月24日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①組合員X2を平成25年4月1日付けで製鋼原料部(大型トラックドライバー)から施設管理部(パソコン解体梱包作業等)に配置転換したこと、②当該配転に伴い、同人の賃金月額を減額したこと、③X2を含む組合員3名に対して行った平成24年年末一時金及び平成25年夏季一時金の人事考課、及び④25年3月4日以降に行われた団交における会社の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
兵庫県労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員X2に対する配置転換及び賃金減額について
認定した事実によれば、X2は平成19年12月、バイクで通勤中にトラックと衝突事故を起こして負傷し、20年12月まで通勤災害で休業した。申立人組合は、本件配置転換は同人がこの事故の後も支障なくドライバー業務を続けているにもかかわらず、業務上の必要もなく、また、時期的にも不自然な時期に実施されたものであると主張する。
しかし、その後の事実経過からすれば、被申立人会社はX2の症状固定後の状況について、集中力、注意力が低下しているにもかかわらず、その自覚症状がなく、適切な安全対策が取れないような状態であって、大型トラックを運転させることは非常に危険であると判断したものであり、同人を大型トラックドライバーから配転したことには合理的な理由があると認められる。
したがって、会社が本件配転を行った時点において、組合に対する嫌悪がなかったとはいえないとしても、本件配転がそのことを決定的な動機としてなされたものということはできず、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当するとは認められない。
また、本件賃金減額については、本件配転によって職務が変更になったことに伴うものであること、結果としてX2の明確な同意が得られたとはいえず、その点において私法上問題があると評価される余地があるものの、会社は同人の同意を得るべくそれなりに話合いをしていること、加えて、会社は25年3月21日の団交において、同人に障害年金が支給されることによって減額分は補填されるなどと説明しており、賃金が減少するとしても障害年金により補填されると認識していたと推認できることを併せ考えれば、会社の組合に対する嫌悪を決定的な動機としてなされたものということはできず、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当するとは認められない。
2 組合員3名に対して行った一時金の人事考課について
組合は、会社が組合を嫌悪するようになった平成24年5月以降、組合員の人事考課が不当に行われるようになったと主張する。
X2に対する人事考課の結果をみると、24年年末一時金について、同人が通勤定期代金を不正に取得したために減点されたことは別として、少なくとも23年夏季一時金以降、24年年末一時金までの点数評価は「普通」であり、組合が会社の組合に対する嫌悪が顕著になったと主張する24年5月以降において、それほど大きな差は認められない。また、25年夏季一時金について、「やや劣る」の点数評価となっているが、組合員以外にも2人が同じ評価であったことが認められる。
以上のことを総合すると、24年年末一時金及び25年夏季一時金の人事考課において、会社がX2に対し、組合の組合員であるが故に不当な人事考課をしたとまで認めることはできない。
組合員X3及び同X4についても、同様である。
したがって、上記一時金に係るX2ら3名に対する人事考課は、会社が組合を嫌悪してなされた不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当すると認めることはできない。
3 団交における対応について
組合は、社会保険労務士Aが団交において会社の代理人として交渉しているが、これは弁護士法等に違反するものであり、会社がこの違反状態を放置し続けたことは不誠実団交に該当すると主張する。
しかし、団交の状況をみると、Aの発言の中には仮に会社側のアドバイザーとしての発言とみても、誠実に団交に臨む態度として適切とはいい難いというべきものもあるものの、団交全般における会社の態度については、本件配転、本件賃金減額等の議題について組合の要求事項に対して具体的な説明や必要な資料の提示をしており、また、Aの発言自体によって交渉の中断があったり、交渉の進行を阻害するというような状況はなく、かえって組合が当初、弁護士法違反の問題に固執したために交渉が円滑に進展しなかったことも併せ考えれば、会社に誠実交渉義務違反があったとまではいえない。
したがって、25年3月4日以降の団交は、不誠実団交の不当労働行為であるということはできない。 |
掲載文献 |
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