労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成29年(不)第54号
重田不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年3月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①組合が平成29年7月20日付けで申し入れた団体交渉に会社が応じなかったこと、②会社が、平成29年7月21日付回答書の中で、団体交渉申入書にある、会社が団体交渉を拒否する場合は、ビラ配り、街頭宣伝行動、親会社・主要取引銀行・主要顧客や監督官庁への要請行動等に取り組む準備があるとの記載(以下「本件記載」という。)が恐喝であり、実行した場合、警察への通報を含め法的措置を執るとしたこと、③A2が退職届を提出しない場合、懲戒手続を執り解雇すると言明したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、会社に対し、誠実団交応諾、①について文書の交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が平成29年7月20日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
               
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 殿                       
会社                    
代表取締役 B1

 当社が、貴組合から平成29年7月20日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合が平成29年7月20日付けで申し入れた団体交渉に会社が応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉拒否及び支配介入にそれぞれ当たるか否か(争点1)
(1)会社が団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったといえるか否かについて
 会社は、組合が正当な組合活動の範囲を逸脱した情宣活動について言及したことが、会社が組合の主張及び要求を全て認めるよう強要するものであるから正当な団体交渉の申入れではないと主張する。
 しかし、組合が記載した情宣活動は直ちに違法と判断されるような内容のものではなく、しかも、いまだ実行されてもいなかった。また、そもそも本件記載は、団体交渉の「申し入れを拒否する場合は」と書かれており、会社が組合の主張や要求を全て認めなければ、組合が本件記載の行為を実行すると理解することもできない。
 したがって、会社の主張は、団体交渉を拒否する正当な理由とはなり得ないものであり、採用することができない。
 会社は、組合が7月20日付けで申し入れた団体交渉に応じておらず、会社の主張は、団体交渉を拒否する正当な理由とは認められないのであるから、会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
(2)会社が団体交渉に応じなかったことが支配介入に当たるか否かについて
 会社は、A2が、ごみ箱内にあったわけでもないワインを拾得したことについて報告や引継ぎも行わず、自身の専用ロッカーに入れていたこと等から、同人によるワインの拾得が窃盗ないし横領に当たることが明白であると考えたことに加え、同人も会社の処分に従うと申し出て退職の意思を表示したと判断していたことから、もはや組合との団体交渉により復職に向けて交渉する段階にはないと考え、7月21日付回答書に至ったとみるのが相当である。そして、組合も、それ以上に会社に団体交渉を働きかけることなく、同回答書の受領後直ちに本件不当労働行為救済申立てを提起していることからすると、この回答が組合の活動を制限し、組合の運営を阻害し弱体化させるものであったとまでは認めることはできない。
 したがって、会社が団体交渉に応じなかったことが支配介入に当たるとまではいえない。
2 会社が、平成29年7月21日付回答書の中で、本件記載が恐喝であり、実行した場合、警察への通報を含め法的措置を執るとしたこと及びA2が退職届を提出しない場合、懲戒手続を執り解雇すると言明したことが、それぞれ組合活動に対する支配介入に当たるか否か(争点2)
 会社の「恐喝である」、「警察への通報を含め法的措置をとる」という記載は相当なものとはいい難い。
 しかしながら、「インターネットを活用した本件の社会化」や「親会社・主要取引銀行・主要顧客への要請行動」などの本件記載の内容が、それまで組合との労使関係のなかった会社が初めて受けた団体交渉の申入書に記載されたものであったことからすると、会社がその内容を不穏当なものであると受け止めたのも無理からぬことであったといわざるを得ない。そうすると、7月21日付回答書は、会社が、過激な情宣活動等により会社の事業に大きな影響が出るとの危惧を抱き、過剰な記載をするに至ったものとみるべきであり、この記載をもって、殊更に組合を誹謗したり、正当な組合活動を制約したりするものとみるのは相当ではない。
 会社は、ワインの持ち主の友人である顧客先のビルオーナーの立会いの下に検証した監視カメラの映像により、A2によるワインの拾得が窃盗ないし横領に当たることは明白であると判断し、ビルオーナーと会社の恩情により、A2を刑事処分に付すことなく、自主退職の機会を与えたとの意識の下に、自主退職しない場合には懲戒解雇を行う所存である旨の会社の姿勢を示したものとみるべきであり、それ以上に、組合の団体交渉権を無視ないし軽視したものとみることはできない。 
掲載文献   

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