労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成27年(不)第34号
EMGマーケティング不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年3月5日 
命令区分  却下、棄却 
重要度   
事件概要   本件は、平成24年12月末をもって被申立人会社と雇用関係にある組合員が存在しなくなったことを受け、会社が、申立人組合に対し、団体交渉の趣旨や目的を文書で提出することを要求するなどして、従前行われていた団体交渉を拒否したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、神奈川県労働委員会は、団体交渉事項の一部に係る申立てを却下し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 申立人が被申立人に申し入れた団体交渉事項中、「2013年10月15日付「本年10月10日付貴『会議室使用申入書』について」の件」、「2014年2月25日付『貴組合からの申入及び要求書について』の件」及び「2014年4月23日付『貴組合からの要求について』の件」に係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(組合は、会社との関係で労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たるか否か。)
(1)除斥期間について
 団体交渉事項中タンクフリーベントの毎年点検を10年としたことについて、25.10.15会社文書の件、26.2.25会社文書の件及び26.4.23会社文書の件は、平成26年12月3日以前に申し入れられており、また、同日以降に組合が団体交渉を申し入れた事実は認められないことから、同団体交渉事項に関する会社の対応についての組合の申立ては、却下を免れない。
 これに対し、団体交渉事項のうち首都圏直下型地震に対する対応策、雨水排水の抜本的改善、24.11.9会社文書の件、C3工場閉鎖による潤滑油製品の製造受託契約締結に伴うB2工場の設備増強計画の件及び27.2.26諸要求については、組合は平成26年12月4日以降も、27.2.26諸要求等により団体交渉事項として申し入れていることから、同月3日以前に行われた団体交渉申入れにおける上記団体交渉事項に対する会社の対応については、「継続する行為」に該当するというべきであるから、本件審査の対象とすることが相当である。
(2)使用者が団体交渉に応ずべき労働組合について
 労働組合法第7条第2号に規定する「使用者が雇用する労働者の代表者」とは、使用者との間に現実に雇用関係が存在する労働者の代表者をいうのが原則である。しかしながら、労働組合法の趣旨が、労使の代表者が労働者の待遇又は労使関係上のルールについて合意を形成することを主たる目的とする団体交渉を通じて正常な労使関係の構築を図る点にあることに照らすと、労働者と使用者との間に雇用関係が存在していた期間の清算されていない労働関係上の問題が争われている場合に当該労働者が所属する労働組合が使用者が団体交渉に応ずべき労働組合に該当することはもちろん、労働組合に使用者と雇用関係のある労働者が存しなくなった後も、現に継続する便宜供与について争いがあるなど、労使間で交渉によって解決すべき団体的労使関係の運営に関する事項が存する場合には、当該労働組合は、なお使用者が団体交渉に応ずべき労働組合に該当すると解するのが相当である。
① 安全衛生に係る労働者の職場環境に関する労働条件に当たる団体交渉事項については、A2書記長が退職して以降、会社には従業員たる組合員がいないことから、同団体交渉事項に関する関係では、組合と会社には、そもそも団体交渉を行うべき労使関係が存在せず、会社は組合と団体交渉を行うべき相手方には該当しない。
② A2書記長に対して過去行われた会社による処分が不当であるとして、その撤回を求める団体交渉事項については、同処分は30年以上前という相当以前になされたものであるところ、平成25年2月22日以降の団体交渉申入れについて、同団体交渉事項に関する団体交渉申入れが繰り返しなされた事実は認められない。また、同団体交渉事項は、27.2.26諸要求になって初めて交渉事項として挙げられたものであること、これに加え、当該処分の不当労働行為該当性に関する判断は、平成21年の東京高等裁判所の判決により確定していることを併せ鑑みれば、同団体交渉事項が、労使間で清算されていない労働関係上の問題に当たるということはできない。
③ 24.11.9会社文書により示された組合員のB2工場への出入り等に係る交渉事項については、組合は、A2書記長退職後の平成25年1月以降も、平成29年5月25日に返還するまでの間、組合室及び組合掲示板の使用を継続している。組合室等の使用にあたっては、同工場への出入りが必要であることからすると、同団体交渉事項は、現に継続する便宜供与の利用に直接関係するものであり、労働組合に使用者が雇用する労働者たる組合員が存しなくなった後であっても、交渉によって解決するべき団体的労使関係の運営に関する事項に該当するというべきである。
④ 会社に対し便宜供与として会議室の使用等を新たに求める交渉事項については、組合は、会議室等の使用を求める具体的な理由を会社に対し何ら述べておらず、使用者が雇用する労働者が存しなくなった組合が、さらに会議室等の使用を必要とする理由は認められない。
 よって、同団体交渉事項は、使用者が雇用する労働者たる組合員が組合に存しなくなった以降も現に継続する便宜供与に関するものということはできず、労使間で交渉によって解決すべき団体的労使関係の運営に関する事項には該当しない。
2 争点②(組合が平成25年2月22日から平成27年4月22日までの間に行った団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。)
 組合員のB2工場への出入り等に係る交渉事項は、A2書記長が会社を退職後も、組合が現に使用している組合室及び組合掲示板の使用の前提となるB2工場への入構制限に関するものであることから、当該団体的労使関係の運営に関するものとして、義務的団体交渉事項に該当する。
 当該団体交渉事項は、A2書記長退職後も組合が現に使用している組合室や組合掲示板を使用するにあたっての制約となる24.11.9会社文書により示された同工場への入構のルール等の撤回ないしは緩和を求めるものであったことは明らかであり、当該団体交渉事項について団体交渉を行うにあたって事前にその趣旨や目的を明らかにすべきほどの疑義があったとはいえない。
 むしろ、こうした会社の対応は、A2書記長が会社を退職し、従業員たる組合員が組合に存しなくなったことを機に、組合からの団体交渉申入れに対し、団体交渉議題の趣旨や理由を求める回答を繰り返すことで、団体交渉を実質的に拒否しようとしたものと言わざるを得ない。
 以上のことから、組合員のB2工場への出入り等に係る交渉事項が交渉事項として追加された平成25年11月28日以降の組合からの団体交渉申入れに対し、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断する。
3 救済の必要性
 組合員のB2工場への出入り等に係る交渉事項に対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。しかしながら、当該団体交渉事項は、会社に対し、A2書記長退職後も組合が現に使用している組合室や組合掲示板の使用に関わるB2工場への入構ルール等の撤回ないしは緩和を求めるものであったところ、組合は、平成29年5月25日までに会社に対し組合室及び組合掲示板を返還しており、交渉の前提となる事実が存しなくなったこと、また、A2書記長が退職後、組合には会社の従業員たる組合員はおらず、本件結審日までにその状況に変わるところはなく、現時点で組合と会社に団体的労使関係に関する事項は存しないと言わざるを得ないことからすると、救済命令を発するまでの必要性はないものと判断する。 
掲載文献   

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