労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第12号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年12月11日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人は、雇用契約書の様式に別組合への加入についての質問等を追加した。本件は、①被申立人が、パートタイマーとの雇用契約にこの雇用契約書を使用したこと、②各店長らが、パートタイマーとの雇用契約に当たり、別組合への加入を勧奨又は強要したこと、③被申立人が、この雇用契約書において別組合に加入する旨の記載のあるパートタイマーの賃金から、かかる記載があることのみをもって、別組合の組合費のチェック・オフをしたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、雇用契約の締結及び更新に当たり、労働組合への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書の使用の禁止、雇用契約書が作成されたことを理由に、チェック・オフをすることの禁止、既にチェック・オフした組合費相当額をパートタイマーに支払うこと、①、②の一部及び③について文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを却下した。 
命令主文  1 被申立人は、パートタイマーとの雇用契約の締結及び更新に当たり、労働組合への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書を使用したりしてはならない。
2 被申立人は、C1ユニオンの組合員となることを認めるかとの質間の回答として「はい」に○を付した雇用契約書が作成されたことを理由に、パートタイマーの賃金から組合費のチェック・オフをしてはならず、既に、このことを理由にチェック・オフした組合費相当額を各パートタイマーに支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートルX横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、B2番地の被申立人の本部建物の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様

会社               
代表取締役 B1   


(1)平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新に当たり、「労働協約に基づき、原則としてC1ユニオンの組合員となること」との記載のある雇用契約書を使用したこと。
(2)平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新に当たり、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要したこと。
(3)平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新において、C1ユニオンの組合員となることを認めるかとの質問の回答として「はい」に○を付した雇用契約書を作成した者について、C1ユニオンの組合費をチェック・オフしたこと。
4 申立人のその他の申立てを却下する。 
判断の要旨  1 争点1(会社が、パートタイマーの雇用契約の締結・更新に当たり、「労働協約に基づき、原則としてC1ユニオンの組合員となること」との記載のある雇用契約書を使用したことは、支配介入に当たるか。)について
 通常、雇用契約の締結において、使用者が労働者よりも優位な立場にあるのだから、各パートタイマーが本件ユニオン条項にはいと回答しなければ、契約が締結されない可能性があると感じるのも無理からぬものであって、様式の変更は、実質的には、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要するものと解され、中立保持義務に違反し、C1ユニオンの組織強化を助け、もって組合の弱体化をもたらすものであることは明らかである。また、会社は、C1ユニオンの組織強化を助け、もって組合の弱体化を企図して、本件ユニオン条項を追加するなどしたものと推認される。
 会社が、平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新に当たり、「労働協約に基づき、原則としてC1ユニオンの組合員となること」との記載のある雇用契約書を使用したことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(各店長らは、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要したか。このことは会社による支配介入に当たるか。)について
 B4副店長がB3店のパートタイマーに対し、雇用契約の更新について話をし、C2福祉会がC1ユニオンに統合される旨発言したのは、平成27年3月6日頃であり、この点に関しては、行為の日から1年を経過してから申し立てられており、この行為が継続する行為に当たると認めるに足る疎明はない。また、組合は、同月16日以降にも、B4副店長は同趣旨の発言をした旨主張するが、このことを認めるに足る疎明はない。
 したがって、この点に関する組合の申立ては、却下する。
 B14店での経緯は、各店長らがC1ユニオンへの加入を勧奨又は強要したことが会社による支配介入に当たるとする本件申立ての内容というべきものであるから、平成28年7月26日に、組合が新たに申立てをしたとは解せない。したがって、この点に関しては、行為の日から1年を経過してから申し立てられたとは判断されず、具体的に主張された時期を理由に却下されるべきものには当たらない。
 会社が、パートタイマーとの雇用契約書の様式を定めており、その様式では、その店舗の店長との間で契約を締結するようになっていることから、雇用契約に携わった店長らは、会社からの指示に従い、会社を代表する者として、本件雇用契約書を用いてパートタイマーとの契約を締結・更新したことは明らかである。
 また、本件雇用契約書を用いて雇用契約の締結・更新を求めることは、当然に本件ユニオン条項への回答を求めるものと解され、本件ユニオン条項自体が、実質的には、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要するものであると判断される。したがって、店長らが本件ユニオン条項に回答する必要がないと明言するなどの特段の事情がない限り、当該店長らはC1ユニオンに勧誘する意思があったか否かにかかわりなく、パートタイマーにC1ユニオンへの加入を勧奨又は強要するものと判断され、また、その行為は会社の行為とみなすべきものである。
 ①B7店のB8店長は、本件ユニオン条項について、「はいでいいよね」等と発言し、本件雇用契約書のはいに○を付したこと、②B14店のB15店長は、本件ユニオン条項を読み上げ、はいでよいかを確認した後、はいに○を付けて本件雇用契約書を完成させたこと、が認められ、これら店長は、明示的に、本件ユニオン条項のはいに○を付すよう誘導したと判断される。
 一方、B5店のB6店長及びB12店のB13店長については、パートタイマーとの間での詳細なやり取りは判然としない。しかし、これら店長が、パートタイマーに対し、雇用契約の締結・更新に際して、本件ユニオン条項への回答を求めたと解されることは、変わらない。
 以上のとおりであるから、B6店長、B8店長、B13店長及びB15店長は、パートタイマーとの雇用契約の締結・更新に際し、本件ユニオン条項により、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要したものと解される。
 B9店については、パートタイマーに本件雇用契約書の様式を配付したのはB11副店長であり、B10統括店長とB17統括店長は、B9店での雇用契約の締結・更新を直接担当していたとはいい難い。
 しかし、B10統括店長及びB17統括店長は、本件ユニオン条項について、いいえに○を付した組合員に対し、その直後にC1ユニオンに入ってほしい旨発言するなどしたこと等が認められ、パートタイマーとの雇用契約の締結・更新を機に、組合員に対し、C1ユニオンへの加入を勧誘したことは明らかである。
 B10統括店長は、B9店の統括店長でありB11副店長の上司に当たり、会社では、統括店長が当該店舗のパートタイマーの採用者を決定するなどしていることが認められることから、B9店に勤務するパートタイマーとの関係では、実質的には使用者の利益代表者に相当する地位にあるというべきである。さらに、B10統括店長が、部下であるB11副店長を通じて、本件ユニオン条項について、いいえに○を付したパートタイマーが多数いることを知り、統括店長の立場にある者として、そのことを問題視していたことが窺われる。
 C1ユニオンへの勧誘が就業時間外になされていたとしても、B10統括店長は、パートタイマーの雇用契約の締結・更新を機に、少なくとも会社の意を体して、部下に対し、C1ユニオンへの加入を勧奨したと判断される。
 B17統括店長は、B9店のパートタイマー全員が本件ユニオン条項のいいえに○を付していると聞いて、B9店をB10統括店長とともに訪ねたことが認められ、雇用契約書上の質問への各人の回答という人事上の情報を入手し、これを利用して、C1ユニオンへの勧誘を行ったことは明らかである。また、これに対して、会社がB17統括店長の処分を検討したり、防止策を講じようとしたとする疎明もなく、むしろ、一旦、パートタイマーが記名押印し会社に提出した本件雇用契約書が最終的には本件ユニオン条項にはいに○を付したとして作成されている。
 そうすると、C1ユニオンへの勧誘が就業時間外になされていたとしても、B17統括店長は、パートタイマーの雇用契約の締結・更新を機に、少なくとも会社の意を体して、部下に対し、C1ユニオンへの加入を勧奨したとみるのが相当である。
 以上のとおりであるから、平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新に当たった各店長らの行為のうち、B4副店長の行為については、労働組合法第27条第2項に定める期間を徒過して申し立てられたものであり、却下する。一方、B6店長、B8店長、B10統括店長、B17統括店長、B13店長及びB15店長の行為は、パートタイマーに対し、C1ユニオンへの加入を勧奨又は強要したものであり、このことは会社による組合への支配介入に当たると判断され、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(会社は、雇用契約書のC1ユニオンの組合員となることを認めるかとの質問の回答として「はい」に○が付されていることのみをもってチェック・オフしたか。そのことは、支配介入に当たるか。)について
 賃金控除に関連した記載は、賃金控除に基づく労使協定が締結された場合に、C1ユニオンの組合費の賃金控除を行うことを一般的に記載したにすぎないというのが相当で、本件ユニオン条項の文言を、賃金からC1ユニオンの組合費を控除することへの同意を含むものとまでは解せない。
 さらに、平成27年7月、C1ユニオンは、初めて組合費を徴収したことからすると、同年3月にパートタイマーが本件ユニオン条項に回答した時点では、C1ユニオンは、チェック・オフはもとより、組合費の徴収すらしていなかったと解され、そもそも組合費の控除への同意を確認する前提を欠いているといわざるを得ない。
 一方、本件ユニオン条項への回答以外の手段により、各パートタイマーが会社に対し、賃金からのC1ユニオンの組合費の控除を委任したとする疎明はない。
 そうすると、会社が本件ユニオン条項に対し「はい」に○を付されていることでチェック・オフについての承認を得ているとして各パートタイマーの賃金からC1ユニオンの組合費をチェック・オフしたことには正当な根拠は認められない。
 以上によれば、会社は、本件ユニオン条項に対し「はい」に○が付されていることを理由に、正当な根拠なく、各パートタイマーからC1ユニオンの組合費をチェック・オフしたと解され、このことは、財政面でC1ユニオンを優遇ないしは支援し、もって組合を弱体化させるものであると判断される。
 以上のとおりであるから、会社は、平成27年3月のパートタイマーの雇用契約の締結・更新において、本件ユニオン条項に対し「はい」に○を付した雇用契約書を作成することとなった者について、正当な根拠なく、C1ユニオンの組合費をチェック・オフしたと解され、このことは、会社による組合への支配介入に当たると判断され、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。 
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