労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第64号・平成28年(不)第21号
不当労働行為審査事件  
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y同業組合(「同業組合」) 
命令年月日  平成29年9月11日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①被申立人の理事が、被申立人の会議において、申立人の執行委員長が行った業務に関して、同人を批判、叱責するなどし、被申立人は、理事のこれらの行為を制止せず、又は、放置して何ら対策を講じなかったこと、②被申立人の理事が、申立人の執行委員長に対し、不当労働行為救済申立てをしたことについて叱責をしたこと、③被申立人が、朝礼において、申立人の執行委員長に対して、団体交渉の内容について報告を求めたこと、④被申立人が団体交渉で誠実に協議を行うことなく、就業規則を変更したこと等の就業規則の変更に関連する一連の対応、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、同業組合に対し、③について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
同業組合        
理事長 B1

 平成27年10月2日の朝礼において、当同業組合副理事長B2が、貴組合執行委員長A1氏に対し同月1日に開催された団体交渉についての発言を求め、また、同団体交渉の内容について発言したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会における、26.10.11消防設備点検についてのA1委員長に対するB5常務理事の言動及び同言動に係る理事らの対応は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
① B5常務理事のA1委員長に対する27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会における発言が、同業組合の意を体して行われたものであるとは認めることができない。
 そうすると、27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会におけるA1委員長に対するB5常務理事の言動については、同業組合の行った行為とみることはできない。
 したがって、かかるB5常務理事の言動は、その余を判断するまでもなく、いずれも同業組合によるA1委員長に対する組合員であるが故の不利益取扱いには当たらないし、組合に対する支配介入であるともいえない。
② 27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会における他の理事らの言動をみると、いずれの会議においても、他の理事らがB5常務理事の発言をするに任せていたとは認められず、他の理事らが、A1委員長が組合員であることや、同人の組合活動を嫌悪していたと認めるに足る具体的事実の疎明もない。
 また、27.4.27理事会は本件和解協定書の締結された日から3日後のことではあるが、他の理事らがB5常務理事の発言をするに任せていたとは認められないから、他の理事らの対応が本件和解協定書第2条に違反する旨の組合の主張についても採用できない。
 したがって、27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会における他の理事らの言動は、A1委員長が組合員であるが故の不利益取扱いであるとも組合に対する支配介入に当たるともいえず、27.4.27理事会における他の理事らの対応が、本件和解協定書第2条に違反するともいえない。
③ 以上のことから、27.1.13役員・支部長合同会議、27.1.26常務会及び27.4.27理事会におけるB5常務理事の言動及び同言動に係る理事らの対応は、いずれも労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認めることはできないから、この点に関する組合の申立てを棄却する。
2 争点2(A1委員長に対する27.4.6B5発言は、不当労働行為救済申立てをしたことを理由とする同業組合による不利益取扱いに当たるか。)について
 27.4.6話合いにおける他の理事らの発言やその後の状況をみると、27.4.6話合いにおいて、組合が27-19申立てを行ったことに対する他の理事らの報復的な発言は見受けられず、同業組合としては、27-19申立てについて和解による解決を望んでいたと考えられ、その後、実際に組合と同業組合は和解しているのであって、27.4.6話合いにおけるB5常務理事のA1委員長に対する発言が、同業組合の意を体して行われたものとは到底認められない。
 以上のことから、27.4.6B5発言は、組合が27-19申立てを行ったことに対する同業組合の報復的な取扱いと認めることはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
3 争点3(27.10.2朝礼において、副理事長らが、A1委員長に27.10.1団交についての発言を求め、また、27.10.2理事発言をしたことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 27.10.2朝礼において、A1委員長に対し、過去に前例がないのに、団交での交渉内容についての発言を求め、団交が組合からのクレームに終始して終わったと総括するようなB2副理事長の発言は、組合に対する否定的言辞と受け取られてもやむを得ない発言といえる。
 したがって、組合との団交での協議が継続中であったにもかかわらず、27.10.2朝礼において、B2副理事長が、団交での交渉内容に係る発言をA1委員長に求めたことは、組合の活動に干渉するものであり、また、否定的言辞を用いて交渉内容を説明したことは、組合を貶めるものであるから、組合の弱体化を図った支配介入行為であると判断せざるを得ず、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
4 争点4(就業規則の変更に関連する同業組合の一連の対応は、不誠実団交又は支配介入に当たるか。(1)27.10.1団交が行われる前に、非組合員に対して、就業規則の変更について話をし、同意を得たこと、(2)27.10.1団交における同業組合の対応、(3)27.11.5職員会議において、同業組合が、職員全員に対し、就業規則の変更について説明し、同意書への署名及び押印を求めたこと、(4)平成28年4月1日付けで就業規則を変更し、退職金規定を改定したこと。)について
① 本件和解協定書第1条についてみると、労働協約に定める条項については、まずその文言どおり解釈されるべきであり、同条項中の「事前に」という文言は、その前段の「従業員の労働条件の変更を行う」場合を指すとみるのが相当であって、同業組合が労働条件の変更を行う際には、具体的根拠を事前に組合に示し説明を行うとともに、組合と誠実に協議を行うことを定めたものと解すべきである。
 そうすると、同業組合が、27.10.1団交が行われる前に、非組合員に対して就業規則の変更について話をし、同意を得ていたことが本件和解協定書第1条違反であるとの組合の主張は採用できず、このことをもって、組合を不当に軽視していたとはいえない。
② 27.10.1団交において、同業組合が、組合に対し、退職金規定の改定に関する資料を示し説明しようとしたところ、組合は、同業組合がC1主任から退職金規定の改定について同意書を取ったことが本件和解協定書第1条に違反しているとの主張に固執し抗議を繰り返したため、本件和解協定書の履行について、具体的な説明や協議が行われず継続協議となったとみるのが相当であり、組合が抗議すると同業組合が激昂したという組合の主張する事実を認めるに足る疎明はなく、具体的説明や協議が行われなかった原因は組合の態度にあったとみるのが相当である。
 以上のことからすると、27.10.1団交における同業組合の対応が不誠実であったとまではいえない。
③ 組合との協議が継続中の段階で、同業組合が、職員に対し就業規則の変更について説明をし、同意書への署名及び押印を求めた行為は、本件和解協定書第1条違反に該当するとはいえず、同業組合が組合との協議中に、組合の存在を無視したとする組合主張は採用できない。
 組合からの継続協議の申出で退職金規定の改定等の協議は継続されたところ、組合から、その後1か月以上も同協議事項について団交の申入れ等がない中で、同業組合が、27.11.5職員会議において、就業規則の変更について説明及び質疑応答をし、異議がなければ、同意書に署名、押印して提出してほしい旨述べたこと自体、不合理とはいえない。
 したがって、同業組合が、27.11.5職員会議において、職員全員に対し就業規則の変更について説明をし、同意書への署名及び押印を求めたことは、組合に対する支配介入に該当するとはいえない。
④ 同業組合は、組合との間で一定の手続を踏んだ上で就業規則を変更し、退職金規定を改定したといえる。
 したがって、同業組合が、本件和解協定書第1条の規定に反し、27.10.1団交及び28.1.25団交において誠実協議を行わず、組合との間でさらなる協議を重ねたり、組合の主張にも耳を傾けて合意達成の可能性を模索したりしようとすることなく、就業規則の不利益変更を断行した旨の組合主張は認めることはできないことから、同業組合が、平成28年4月1日付けで就業規則を変更し、退職金規定を改定したことは、組合に対する支配介入に該当するとはいえない。
⑤ 以上のことから、就業規則の変更に関連する同業組合の一連の対応は、労働組合法第7条第2号又は第3号に該当する不当労働行為であると認めることはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成29年(行ウ)第174号 却下 平成30年2月5日
 
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