労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡労委平成28年(不)第9号
ケミサプライ・アマックス不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年8月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合と会社との間で平成28年11月24日に行われた組合員A2の解雇問題等に係る団体交渉において、会社が、①就業規則を明示していたとの根拠を示さないまま退席し、団交申入れの要求事項に係るその後の協議を拒否したこと及び②会社役員らを出席させず、代理人弁護士のみを出席させたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、福岡県労働委員会は、会社に対し、誠実団交応諾、①について文書の交付・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が平成28年11月10日付けで申し入れた団体交渉に直ちに応じなければならない。
2 被申立人会社は、今後の団体交渉において、団体交渉申入事項に対する回答及び自己の主張について、その根拠を具体的に説明しなければならず、また、以下の対応をしてはならない。
(1)団体交渉申入事項について文書で回答するのみで協議に応じないこと。
(2)十分な団体交渉を行うことなく、裁判で争えばよいとして協議に応じないこと。
(3)十分な協議を行うことなく団体交渉を打ち切ること。
3 被申立人会社は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、下記内容の文書(A4判)を申立人組合に交付するとともに、A1判の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)全面に下記内容を明瞭に記載し、被申立人会社本社食堂内の見やすい場所に30日間掲示しなければならない。

平成  年  月  日
 組合
  代表執行委員長 A1 殿
会社            
代表取締役 B1

 当社が、貴組合との平成28年11月24日の団体交渉において行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為と認定されました。
 今後はこのようなことを行わないよう留意します。


1 就業規則の周知方法を明らかにせよとの組合の質問に対し、就業規則は言われれば出す旨述べるのみで、就業規則の備付けの場所等の具体的な内容を答えなかったこと。

2 就業規則の周知方法を明らかにせよとの組合の質問に対し、次の議題に移るのであれば交渉を続けるが義務違反を認めよというのならば交渉は決裂であるとして、団体交渉を打ち切ったこと。

4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(本件団交における会社の対応について)
(1)要求事項(1)から要求事項(6)の義務的団交事項該当性について
 要求事項(1)から要求事項(6)は、いずれも「労働条件その他の待遇」に関する事項であって、労働者の労働時間、給与、労働の内容等は、「使用者に処分可能」なものである。
 加えて、要求事項(4)については、A2の給与明細書には「業績時間外手当」に相当する時間を含めた時間外労働時間の記載がなく、また、会社が同人に対して「業績時間外手当」とは別に支給される差額の計算方法について説明した事実がなかったことから、組合が要求事項として説明を求めたことには相当な理由がある。
 以上から、要求事項(1)から要求事項(6)は、いずれも義務的団交事項に当たる。
 就業規則は労働条件を規定したものであって、それを従業員にどのように周知するかということは労働条件に関する事項であり、また、使用者に処分可能な事項である。したがって、就業規則の周知方法に係る説明は、義務的団交事項に当たるものである。
(2)本件団交において、会社は就業規則を明示していたとの主張の根拠を示さないまま退席したといえるかについて
 会社の回答は、言われれば出すというものに止まるから、会社が、質問された就業規則の備付けの場所等の具体的な内容について誠実に答えていたとは到底いい難い。
 また、「就業規則の存在を知らないなら、どこかに置いていたって同じことでしょう。」とのB5弁護士の発言に見られるように、会社には誠実な対応を通じて組合の理解を得ようとする姿勢に欠けていたといわざるを得ない。
 このように、会社は本件団交において、使用者が果たすべき義務、即ち相手方の納得を得るべく誠意をもって団交に当たる義務や、自己の主張の根拠を具体的に説明するなど努力すべき義務を果たさないまま、一方的に退席したといわざるを得ない。
(3)本件団交において、会社は団交申入れにおけるその余の要求事項について協議をしなかったといえるかについて
 B5弁護士の発言に見られるように、会社には組合の理解を得るために誠実に対応する姿勢に欠けていた。
 このため、組合が、就業規則の周知の具体的な方法について繰り返し質したこと、そして、会社は就業規則を労働者に周知しておらず違法であるとして、その点で会社を追及したことは、いずれも無理からぬものであったとみるべきである。
 したがって、そのような状況の中で、会社の次の議題に移るのであれば交渉を続けるが、義務違反を認めよというのならば交渉は決裂であるとした姿勢は、十分な説明を尽くさないまま一方的に団交を打ち切ろうとしたものと評価せざるを得ず、結局、会社は、団交申入れにおけるその余の要求事項についても正当な理由なく協議をしなかったものといわざるを得ない。
 また、団交については直接労使が話し合う方式によることが原則であり、本件でも、当事者間に書面によって交渉するとの合意はないので、会社が書面により回答したからといって、それで使用者の団交応諾義務が尽くされたことにはならない。
(4)上記(2)、(3)の会社の対応が不誠実団交に当たるかについて
 本件団交における会社の対応が、使用者に求められる合意形成の可能性を模索する姿勢とはかけ離れたものであることは、上記のとおりである。
 本件団交以前の会社の一連の不誠実な対応は、その後に開かれた本件団交において、労働条件の明示に係る具体的な方法について真摯に回答しようとせず、また、裁判で争えばよい旨の発言を繰り返すなどの姿勢にも表れているものである。
 以上のように、本件団交における会社の対応は不誠実であるといわざるを得ず、労組法7条2号に該当する。
2 争点2(団交出席者について)
 団交において、組合が使用者に対し、要求事項に関連する事柄についての事実関係の確認を求めることは当然予測されることであるから、使用者にはそうした事実関係の確認を求められる事態に対応できる者を出席させることが望まれる。しかし、使用者にはそのような事実関係の確認に対応できる者を常に団交に出席させなければならないというまでの義務があるとはいえない。B5弁護士が組合の事実確認に対応ができなかったのは本件団交が初めてであり、同弁護士のみが団交に出席したことによって直ちに団交に支障を来したとまではいえない。
 したがって、本件団交において、会社がB5弁護士のみを出席させ、会社の取締役ないしは会社と雇用関係にある者を出席させなかったことが不誠実団交に該当するとまではいえない。 
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