労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成27年(不再)第47号
樟蔭学園不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y会社 
再審査被申立人  X組合 
命令年月日  平成29年6月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、①Yが運営する大学に勤務する非常勤講師であるAを雇止めにした(「本件雇止め」)こと、②本件雇止めに関する団交において誠実に対応しなかったこと、③解決方法を示すことなく団交を打ち切って本件雇止めを行ったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事案である。
2 初審の大阪府労委は、①について不当労働行為に当たると判断し、Yに対し、本件雇止め通知の撤回、Aの労働契約が更新されていれば得られたであろう賃金相当額のバックペイ及び文書手交を命じたところ、Yはこれを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する 
判断の要旨  1 本件雇止めは労組法第7条第1号にいう「不利益な取扱い」に当たるか否か
 Aは約18年間にわたりYとの間で雇用期間約1年間の有期労働契約の更新を毎年度繰り返しており、また、その更新手続はAの意向等を申告すれば足り、契約更新を左右する面接等が行われるものではないことや、Aの業務が臨時的なものとはいえない上、学部や授業の廃止等特段の事情はうかがえないことに加え、Aが学園提示の労働契約書への署名を拒絶してもなお雇用が継続されている事情を併せ考慮すれば、Aは26年度においても自身の労働契約が更新されることにつき合理歴な期待を有していたというべきであり、本件雇止めは労組法第7条第1号にいう「不利益な取扱い」に当たる。
2 本件雇止めはAがXの組合員であることの故をもって行われたものか否か
 Aの担当授業コマ数をめぐって、数次にわたる救済申立てが行われるなど労使紛争が係属・拡大する一方、同コマ数を26年度から3年間保障することを求めるXと、27年度にキャンパス統合を控え、Xが求めるコマ数保障は困難とするYとの間で意見が対立するなどしていた状況の中、Yは本件雇止めを決定・通告している。このことに加え、「授業観察」に関してAからXへの説明を求められても連絡すらしないなど、Yの態度にはXの関与を避けようとする意図がうかがわれることや、本件雇止めが権限と責任を有する組織・機関等により適切に検討、決定されたものと認めることはできないこと、そしてYが非組合員講師のBに対しては個別に事情を聴取し、次年度は契約を締結しない予定である旨をあらかじめ告知するなどしているにもかかわらず組合員であるAに対しては事情の聴取等は何ら行うことなく雇止めを決定・通知していることなどを総合して考慮すると、YはXとの労使紛争の中心にあり、かつYにおけるXの唯一の組合員であるAを排除してXとの関係を断ち切ることを企図してAを雇止めにしたものと推認される。
 YはAが休講が多い上、事前補講を実施したことや、Yの指導教員との意見交換を拒否したこと、Yが求めた出席簿の提出を履行しなかったことなどの事情から、非常勤講師としての資質を欠くと評価し雇止めとした旨主張するが、本件雇止めに合理的な理由があるとは認め難い上、YがAに対して注意や警告等を行っておらず、本件雇止めに関し権限と責任を有する組織等が適切に検討、決定したとみられる証拠もないことを踏まえると、本件雇止めがAがXの組合員であるとの故をもって行われたものであるとの推認を覆すには足りない。
3 不当労働行為の成否
 以上のとおり、本件雇止めはAがXの組合員であることの故に行われた不利益な取扱いと認めるのが相当であり、不当労働行為に該当する。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成26年(不)第29号  一部救済 平成27年10月6日
 
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