労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第29号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第29号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成27年10月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   組合員X2は平成8年以降、毎年、被申立人法人との間で労働契約を締結し、法人の設置・運営する大学等で非常勤講師として勤務していたが、25年11月、法人から26年度の労働契約を締結しない旨の通知を受けた。26年1月14日、申立人組合は当該通知の撤回等を求めて法人に団交を申し入れ、翌月3日、団交が開催された。本件は、①法人が上記の通知によりX2を雇止めしたこと、②上記の団交申入れに対する法人の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、1 X2に対する25年11月の通知がなかったものとして取り扱うこと等、2 文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X2に対する平成25年11月25日付けの通知がなかったものとして取り扱い、同人の労働契約が更新されていれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
  X労働組合
   執行委員長 X1 様
学校法人 Y
理事長 Y1
  当法人が、貴組合員X2氏との間で、平成26年度の労働契約を締結しなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2の雇止めについて
 被申立人法人が申立人組合に交付した労働契約不更新理由書によれば、組合員X2の雇止めの理由は、①直近2か年において休講回数が多く、学生に負担を強いている、②授業改善の目的である授業観察の機会を正当な理由なく避けている、③勤務先である大学のシステムに対する理解を欠いているというものであるが、これらの内容についてみると、いずれも一定程度合理性を首肯できる部分はあるものの、法人が従前、個別具体的に指導又は注意等を行っていなかったものであり、法人が雇止めに相当する重大事由として同人に対応していたとは認められない。したがって、法人がこれらの理由をもってX2を雇止めしたことを、客観的合理性があり、社会通念上相当なものということはできない。
 組合と法人との労使関係についてみると、平成21年以降、X2の授業のコマ数及びそれに係る団交を巡って、当委員会に不当労働行為救済申立事件が3件係属し、そのうち1件は命令書が交付されたこと、当該1件について法人から再審査申立てがなされ、その後、中労委から、団交に関する法人の対応が労組法7条2号の不当労働行為である旨の命令書が交付されたことが認められる。このように、法人の対応が不当労働行為である旨の確定した命令が存することからすれば、X2のコマ数に関し、徐々に法人は減少させ続けており、そのことについて組合と法人との間で紛争が生じ、継続していたとみることが相当である。そして、X2を雇止めにすれば、法人内に組合の組合員がいなくなるとの状況が生じることを法人も認識していたものと推認される。
 以上のことを総合的に勘案すると、法人がX2を雇止めしたことは、法人内の組合員を消滅させるとの意思をもって行ったものとみざるを得ず、組合活動を行ったが故の不利益取扱いであり、労組法7条1号に該当する不当労働行為である。
2 団交申入れへの対応について
 組合は、①X2の雇止め理由に関する組合の指摘について、法人は持ち帰って調査、確認の上で回答するとしたにもかかわらず、解雇期限の3日前になって、組合の質問や指摘に全く答えない内容の文書を送付してきた旨、②組合が法人に別の方法による解決について要請したにもかかわらず、法人は団交を打ち切ったまま別の解決方法を示すこともなく雇止めを強行した旨主張する。
 しかし、上記①については、法人は組合からの指摘について団交及び回答書において一定の回答を行っており、組合の質問や指摘に全く答えない内容の文書を送付したとはいえないから、組合の主張は採用できない。また、②については、法人は団交において交渉を進めようとしていることが認められ、団交を打ち切ったとみることはできないこと、法人に別の解決策の案を能動的に示す義務があるとはいえないこと、組合が自ら解決策の案を提示したり、団交を申し入れたりするなどの対応をしていないこと等からすれば、組合の主張は採用できない。
 組合はまた、法人の上記②の対応は、労働条件の変更について組合に事前に通知し、協議を行う旨の労働協約の不履行に当たるなどと主張する。
 しかし、法人が行ったX2の雇止めに関する通知は、労働条件について変更しなければならない事情が生じた時期に行われているものといえ、労働協約等に違反するものとまではいえない。また、その後の団交及び法人の一連の対応についてみても、前述の判断のとおり、団交拒否に当たるものとはいえないから、法人が労働協約所定の協議を尽くしていないということはできない。
 したがって、法人の一連の対応は、労働協約等を反故にするものとも、労働契約の不履行に当たるものともいえないから、組合の主張は採用できない。
 以上のとおりであるから、法人の一連の対応は、団交拒否に当たるとも、組合への支配介入に当たるともいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第47号 棄却 平成29年6月7日
 
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