労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  岡労委平成26年(不)第3号・27年(不)第1号・28年(不)第2号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成29年6月22日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、
① 平成26年夏季一時金について、労働協約の規定に基づいて組合が行ったあっせん申請に応じなかったこと、
② 平成22年1月27日の新賃金制度と定年延長制度・第5回労使協議会における、ア「新賃金制度下では、年間一時金を新基準内賃金(本給、資格給、管理職手当、家族手当、教育手当)の最低7か月分支払う。」、イ「予測がはずれて儲かれば、年間一時金を新基準内賃金の8か月分以上支払う」との労使合意を否定し、平成26年夏季一時金及び冬季一時金をめぐる団体交渉において、各3.6か月分とすると提案し固執したこと及び同年夏季一時金を3.6か月分しか支払おうとせず、同年冬季一時金を3.6か月分しか支払なかったこと、
③ 平成27年夏季一時金及び冬季一時金をめぐる団体交渉において、上記②イの合意を否定し、3.6か月分とすると提案し固執したこと及び同年夏季及び冬季一時金を3.6か月分しか支払わなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、岡山県労働委員会は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社があっせんに応じなかったことについて
(1) 会社が、あっせん申請に応じなかったのは協約97条に違反する。
(2) 本件あっせん申請に会社が応じなかったのは、会社側の労務担当者の間で、問題によっては出席しなくてもよいとの話があったことに加え、会社としては既に解決済みと認識している一時金支給月数について、あっせんに出席することで再燃化し、一時金につき7か月の発言のみならず8か月以上の発言についても、24年4月23日付けの別紙4での確認事項同様の事態に陥ることを嫌ったためと認められる。
 したがって、本件あっせん申請に応じなかったことにつき、会社に反組合的意思ないし組合を弱体化させる意図があったとまでは認めることができず、組合への支配介入があったとは認められない。
 ただし、報道という公益性の高い業種に携わっている会社がこのような対応を繰り返していることは遺憾であり、当委員会において出席義務があると判断されているにもかかわらず、今後もあっせん申請に応じない場合には、支配介入と判断される余地があることを付言しておく。
(3) 以上のとおり、会社があっせんに応じなかったことは、協約97条に違反するが、会社に反組合的意思ないし組合弱体化の意図は窺われず、支配介入にはあたらない。
 さらに、会社があっせんに応じないことは、あっせん不調に該当し、争議を行うことは可能であり、組合の争議権を制約するものではないから、この点も支配介入にあたらず、ともに労働組合法第7条第3号に違反しない。
2 平成26年及び同27年夏季及び冬季一時金に関する団体交渉等における会社の対応ついて
(1) 組合が主張する「年間一時金最低7か月分」、「予測がはずれて儲かれば年間一時金8か月分以上」支払うとの労使合意が成立したものと認められない。
(2) 「年間一時金最低7か月分程度」支払うことは、新賃金制度導入において激変緩和措置としての意味合いを持ち、新賃金制度でほぼ7か月分以上を支給することが労使双方の共通認識となっており、売上げが140億円台を維持していれば、特段の事情がない限り、会社には年間7か月分程度の一時金を支払うべき信義則上の義務が発生していると認められる。
 「予測がはずれて儲かれば年間一時金8か月分以上」支給することも、新賃金制度導入の激変緩和措置としての意味合いを持つものであるが、その支給の前提が明確ではなく、現在、8か月分以上支給する信義則上の義務が具体的に発生している状況にあるとは認められない。
(3) 本件夏季及び冬季一時金に関する団体交渉において、会社は「予測がはずれて儲かれば年間一時金8か月分以上支払う」との本件労使協議会における発言を否定したものとは認められず、また、設備投資資金の必要性など具体的な質疑、応答、反論等が行われていたことが認められ、両者は、それぞれの立場を維持したため、議論が進展せず、歩み寄りが困難となり平行線に至ったものと認められるから、会社の交渉態度が不誠実であったとまで認めることはできない。
(4) 予測がはずれて儲かれば年間一時金8か月分以上支払うことについては、労使合意も現在の状況下での信義則に基づく具体的な支払義務も認めることはできない。
 したがって、会社が、26年夏季一時金については新基準内賃金の3.6か分(年間では、7.2か月分に相当)を組合に提案し、26年冬季一時金及び27年夏季及び冬季一時金については新基準内賃金の各3.6か月分を組合員に支払ったことにつき、会社に反組合的意思ないし組合を弱体化させる意図を認めることはできず、いずれも支配介入は成立しない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成29年(不再)第36号 棄却 平成30年11月7日
 
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