労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  香労委平成27年(不)第3号
カズ・エクスプレス不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  有限会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成29年2月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が行った
① 申立人組合の組合員A1にする平成27年4月2日付け整理解雇並びに同A2に対する同年3月31日付け解雇予告通知及び同年4月30日付け普通解雇、
② 申立人組合の組合員A1及び同A2に対する業務配分差別及び同A3に対する調整手当等の減額・不支給、
③ 組合が申し入れた団交に対する団交拒否及び不誠実団交、
④ 会社の役員及び申立外C1社の職制らを通じた組合の団結権を侵害する行為、
が不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、香川県労働委員会は、会社に対し、解雇の取消し及びバックペイを命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A1に対し、平成27年4月2日付け解雇をなかったものとして取り扱い、原職に復帰させるとともに、解雇の日の翌日から原職に復帰するまでの間の賃金相当額から高松地方裁判所平成27年(ヨ)第22号事件審尋証書(第3、和解)第2和解条項に基づき同人に対して既に支払済みの賃金仮払金額を控除した残額を同人に支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員A2に対し、平成27年4月30日付け解雇(同年3月31日付け解雇予告通知)をなかったものとして取り扱い、原職に復帰させるとともに、解雇の日の翌日から原職に復帰するまでの間の賃金相当額から高松地方裁判所平成27年(ヨ)第22号事件審尋証書(第3、和解)第2和解条項に基づき同人に対して既に支払済みの賃金仮払金額を控除した残額を同人に支払わなければならない。
3 その余の申立ては棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(本件解雇について)
(1)A1整理解雇の不当労働行為該当性
① A1整理解雇の有効性
ア A1整理解雇にあたって、会社における人員整理の必要性が一定程度認められたとしても、会社がA1や組合との間で説明・協議を尽くす余裕がないほどに人員整理の必要性が切迫していたとまでは認められない。
イ A1整理解雇について、会社による解雇回避努力義務が履行されたとはいえず、会社が被解雇者(対象者)としてA1を選定した理由についても合理的・客観的なものとはいえない。
ウ したがって、A1の解雇は有効なものであるとはいえない。
② A1整理解雇に至るまでの経緯、 
 A1整理解雇にあたって、会社側は、A1や組合に対する事前の説明や協議といった手続きを全くといってよいほど踏んでおらず、A1や組合にとって不意打ち的に行われた解雇であったものといえる。
③ 本件解雇前後の会社の組合に対する対応・態度
 A1や組合に対する事前の説明や協議が一切行われていなかったことに加え、本件解雇後の組合からの解雇の抗議・撤回要求に対し平成27年4月5日の団体交渉までの間に会社側が誠実に回答しなかったこと及び同日の団体交渉における本件解雇に関する会社側の説明内容・態度等に照らせば、本件解雇に関して会社側には組合を軽視する態度があったことが認められる。
④ 本件解雇によって組合に与えた影響
 A1整理解雇がなされた当時は、組合と会社との間で、A1・A2を含む組合員の労働時間・賃金などの労働条件に関して、団体交渉が継続しており、ことに、平成27年3月15日の団体交渉後、会社・組合間の対立点が顕在化していた中で、すでに合意されていた団体交渉を会社側が一方的に延期した上で、延期された団体交渉に近接した時期に、組合員(副執行委員長)・A2の解雇予告とともにこれと機を同じくして組合の代表者であり組合活動の中心的人物である執行委員長・A1の解雇に及んだという点は看過できない。
 加えて、組合は、平成27年に入ってから上部団体であるC1労組のC2委員長の指導のもとで組合活動を活発化させていたものであり、上部団体との重要な連絡役としての役割をも果たしていたA1を解雇することによって、組合活動を混乱・弱体化させる結果となることは明らかである。
⑤ 本件解雇後の団体交渉等の事情
 本件解雇によって、組合側はこれに対する抗議・撤回要求といった緊急の対応が必要となり組合活動に混乱が生じる事態となったことや、本件解雇によって組合・会社間の団体交渉に変容が生じたこともうかがわれる。
 ①~⑤を総合的に考慮すれば、A1整理解雇については、組合活動の混乱・弱体化を意図してなされた不利益取扱い(労組法第7条第1号に規定する不当労働行為)に該当するとともに、組合の弱体化を図る支配介入(労組法第7条第3号に規定する不当労働行為)に該当する。
(2)A2解雇の不当労働行為該当性
① A2解雇の有効性
 A2解雇に関して、会社側が解雇理由として主張するA2の業務上の事故・違反歴については、いずれも客観的・合理的な解雇の理由に当たるとは認めるに足らない。
 また、そもそも、会社側は、A2に対し、十分な教育・指導等を行っておらず、A2に対する管理・監督等についても十分であったとはいえない。
 したがって、A2の解雇は有効なものであるとはいえない。
② A2解雇に至るまでの経緯
 会社側は、A2について、平成26年に至るまでの間、度重なる事故・違反が発生しても、A2に対して詳細な事情を聴取をするなどして事実関係を確定させた上で、就業規則に照らしてその都度段階的な懲戒処分を検討・実施するなどの措置を講じることなく、A2の就労を継続させていた。
 それにもかかわらず、平成27年に入って組合活動が活発化するとともにA2が団体交渉に参加するなどして組合員としての活動を顕在化させて以降、ことに、会社・組合間の団体交渉において会社と組合間の対立点が顕在化していた、平成27年3月15日の団体交渉以降、特段の前置きもなく、突然にA2に対する解雇の予告通知を発してA2解雇に及んでいる
③ 本件解雇前後の会社の組合に対する対応
 A2の解雇予告通知がなされた当時は、組合と会社の間で、A1・A2を含む組合員の労働時間・賃金などの労働条件に関して、団体交渉が継続しており、ことに平成27年3月15日の団体交渉後、組合・会社間での対立点が顕在化していた中で、会社側は、すでに合意されていた団体交渉を一方的に延期した上で、その延期された団体交渉に近接した時期に、組合の執行委員長であるA1を解雇するのと機を同じくして、組合員(副執行委員長)であるA2の解雇(予告通知)に及んだのである。
④ 本件解雇による組合活動への影響
 当時の組合はA1を含めて3名の組合員によって構成されたきわめて少人数の組合であり、このような組合の執行委員長であるA1とともに組合員(副執行委員長)であるA2を解雇することによって、会社に在籍する組合員は残りわずか1名となり、これによって組合活動が混乱・弱体化するに至ることは明らかである。
 また、本件解雇に関して会社側に組合軽視の態度が認められることや本件解雇による組合活動や団体交渉への影響も看過できない。
 ①~④を総合的に考慮すれば、A2解雇は、組合活動の混乱・弱体化を意図してなされた不利益取扱い(労組法第7条第1号に規定する不当労働行為)に該当するとともに、組合の弱体化を図る支配介入(労組法第7条第3号に規定する不当労働行為)に該当する。
2 争点2(業務配分差別及び賃金の減額・不支給等について)
 会社側から提出された賃金台帳に照らしても、組合員と非組合員との間で賃金について差別的取扱いが行われていたものと認めるには足りず、その他、業務配分差別の点を含めて組合側の主張は認めるに足りない。
3 争点3(不誠実団交の成否について)
 平成27年3月15日に団体交渉が行われた後の同年4月5日の団体交渉に至るまでの経緯や会社側の態度・対応、ことに(争点1においても言及したとおり)同日の団体交渉に至るまでの経緯をみても本件解雇に関して組合を軽視する態度が会社側に認められることに加え、同日の団体交渉における本件解雇に関する会社側の回答内容・回答態度等に照らせば、本件解雇に関する同日の団体交渉における会社側の対応については、組合を軽視した不誠実な対応であったというべきであり、不誠実団交(労組法第7条第2号に規定する行為)に該当する。
4 争点4(組合への加入妨害等の成否について)
 本件救済申立て前の1年間において、組合への加入妨害や組合からの脱退教唆があったことを認めるに足りる組合からの立証もなく、組合への加入妨害・脱退教唆といった事実も認められない。
5 救済方法
 本件解雇は不利益取扱い及び支配介入にあたると認められ、平成27年4月5日の本件解雇に関する団体交渉は不誠実団交にあたると認められるところ、救済方法としては、主文1・2記載のとおり、本件解雇をなかったものとして取り扱い、A1・A2両名についての原職復帰及び原職復帰までの賃金相当額(但し、賃金仮払金として支払済みの既払い金を控除したもの)を認めることが相当である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
高松地裁平成29年(行ウ)第5号 却下 平成29年12月8日
 
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