労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第31号
東京都(非常勤賃金改定等)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人   組合 
再審査被申立人   都 
命令年月日  平成29年2月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、組合が都総務局長宛てに、22年11月から24年9月にかけて10回にわたり、都が任用する非常勤職員の賃金改定等の労働条件に関する団交を申し入れ(「本件団交申入れ」)、総務局の出席を求めたのに対し、都が、非常勤職員の勤務先を所管する産業労働局、生活文化局等の各局を交渉担当部局として団交を行うことを提案し、総務局を交渉担当部局としなかったことが、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるなどとして救済が申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文   本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交の担当者について
 本件では、本件団交申入れに対して団交が行われる前に、都側が総務局ではなく各局を交渉担当部局として対応する方針を示したのに対し、組合側が総務局の出席を求めたため、結局団交が行われなかった。このような事案では、具体的な事情に照らし、都側が上記の方針をとったことにより、交渉事項に関する団交が誠実に行われないおそれが明らかに存在すると認められる場合には、組合側が実質的に交渉権限を有する者との団交を求め、実質的な交渉権限がないとして当該担当部局との団交を拒んだとしても、都の対応は労組法第7条第2号に該当するものである。
 そして、本件では、本件団交申入れ以前にそれと共通する要求内容について組合と各局との間で団交が行われていること等に鑑みれば、総務局ではなく各局が交渉担当部局とされたことにより、組合が交渉を求めた事項に関する団交が誠実に行われないおそれが明らかに存在すると認められるかについては、交渉事項に係る決定権限等の所在に加え、本件団交申入れ以前に行われた各局との団交等の状況を踏まえて判断するのが相当である。また、付加的に、本件団交申入れ後の団交の状況等の事情も併せて考慮した上で判断するのが相当である。
2 都の対応に係る不当労働行為の成否
 (1) 本件団交申入れにおける組合の要求のうち、各非常勤職員に共通する賃金制度の見直しなどの制度的な対応を必要とするものについては、各局が一定の影響力をもつとしても、実質的には、非常勤職員制度の企画、立案や条例の立案を所管する総務局が知事部局内での意思決定について実質的な権限を有していたとみざるを得ない。また、職業能力開発センター講師の報酬算定に係る要求については、総務局が一定の影響力を有していたものと推認される。
 (2) 本件団交申入れ以前に、組合と都は消費生活相談員や職業能力開発センター講師の賃金等労働条件に係る団交を行い、都側は各局が対応した。それらの団交では、総務局が実質的な決定権限や一定の影響力を有し、各局は決定権限を有していなかった要求事項があるものの、全体としてみれば要求に応じられない理由について相応の説明を行っており、また、都においては団交の前後に総務局と各局の連絡協議会を開催し、要求内容について決定権限がなくとも実質的な交渉を行い得る体制をとっていた。各局がした回答の一部には、要求に関する団交が誠実に行われない抽象的なおそれを感じさせるものがないではないものの、要求の性格等団交の経過全体をみれば、それを超えて、総務局ではなく各局が交渉担当部局とされたことにより、組合の要求に関する団交が誠実に行われないおそれが明らかに存在すると認められるとはいえない。したがって、本件団交申入れ以前の交渉状況をもって、都が実質的に交渉権限を与えられていない者を交渉担当としたものと評価することはできない。
 また、本件団交申入れ後に行われた非常勤職員制度の見直しに係る各局及び総務局との交渉状況や、職員団体等の要請に総務局が対応したことを考慮しても、上記の評価を左右するものではない。
 したがって、都が本件団交申入れに対し、総務局ではなく各局を団交の担当部局として対応しようとしたことは、労組法第7条第2号に該当するとはいえない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年(不)第108号、平成24年(不)第77号 棄却 平成26年4月15日
 
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