概要情報
事件名 |
東京都(非常勤賃金改定等)・東京都(団体交渉) |
事件番号 |
都労委平成23年不第108号、同24年不第77号 |
申立人 |
東京公務公共一般労働組合 |
被申立人 |
東京都 |
命令年月日 |
平成26年4月15日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合が、非常勤職員である専務的非常勤職員、臨時的非常勤職員及び専門的非専務的非常勤職員の賃金、退職手当等に係る労働条件についての団交を被申立人都の総務局に申し入れたのに対し、都が団交担当部局を総務局とせず、産業労働局、生活文化局又は病院経営本部としたことが不誠実な団交に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団交に総務局の担当者が出席しないことについて
(1)総務局の担当者が出席しないことと不誠実な団交との関係
申立人組合は、非常勤職員の報酬等に係る団交には総務局が交渉担当部局として応じるべきであり、交渉権限のない各局のみが交渉に応じることは事実上の団交拒否である旨主張する。
被申立人都の非常勤職員の報酬決定の方法についてみると、①専務的非常勤職員については、職によっては所管の局の意向が反映される余地もあるものの、総務局が東京都専務的非常勤職員設置要項に基づき最終的に報酬等を決定しており、②臨時的非常勤職員については任用する各局が職ごとに設置要綱を定め、報酬等を決定しているが、総務局により各局の報酬決定についての標準的枠組みが示され、各局は実際上これに従っている。
しかし、団交担当者が当該労働条件につき組織内部での決定権限がない者、あるいは決定の枠組みを定める内部的な権限がない者であっても、交渉事項に関して交渉権限が適切に付与されていれば、誠実な団交が行われることが期待できる。したがって、総務局を直接の団交担当部局としないという都の対応が不誠実な団交に当たるとするためには、各局には実質的な交渉権限が付与されているとはいえず、内部的な決定権等を有する総務局の担当者が出席しなければ、非常勤職員の報酬決定等に関する団交が誠実に行われないおそれのあることが、それまでの交渉の経緯等から明らかでなければならないというべきである。
(2)これまでの団交の状況
組合は、平成22年11月26日付けから24年9月20日付けまでの計10回の団交申入れに係る都の対応を問題にしているが、21年3月から24年7月までの間に生活文化局又は産業労働局を団交担当部局として5回の団交が行われている。これらの団交において各局の対応が誠実な団交を期待できないような交渉権限に疑いのあるものであったかどうかについてみると、21年3月の団交では一部疑問を生じさせるような発言もあったものの、その後の経緯を全体としてみれば、各局の団交担当者に交渉権限が与えられていなかった、あるいは実質的な交渉権限がないために団交が形骸化していたということはできない。
また、本件において組合が申し入れた団交事項は、各非常勤職員の賃金ないし退職手当等に係る労働条件といった抽象的な内容であったから、都がまず、総務局ではなく、それぞれの所管局を団交担当部局としたことにはそれ相応の合理性が認められる。仮に組合と各局との団交が開催され、その中で当該要求事項については総務局が対応しなければ実質的な団交が期待できないことが明らかになったというのであれば別として、本件において組合は、都が所管局を窓口として団交に対応するなどと回答した段階で団交の開催自体を拒否してしまっており、団交が開催されなかった原因が都の対応にあるということは困難である。
以上のとおり、これまでの団交の経緯等からは、各局におよそ交渉権限が与えられていなかったとはいえないし、総務局の担当者が出席しなければ、団交が誠実に行われないおそれがあることが明らかであったともいえない。
(3)地公法55条4項との関係
組合は、地公法55条4項により、職員団体が交渉することのできる地方公共団体の当局は交渉事項について適法に管理し、決定することのできる当局である旨規定されているところ、同条同項は組合にも類推適用されるべきであり、総務局が当局として組合との団交に対応すべきであるとも主張する。しかし、地公法上の登録団体である職員団体と地方公共団体の当局との交渉について定めた上記規定が労組法上の労働組合である組合と都との団交に適用され、都がそのような方式の交渉を行わなければならないとされる理由はないのであるから、組合のこの主張は採用できない。
(4)専門的非専務的非常勤職員についての対応
組合は専門的非専務的非常勤職員についての都の対応をも問題にするが、本件で問題になっている東京都公立小中学校非常勤講師については、任命権者である教育委員会が交渉権限を有しており、教育委員会の担当者に交渉権限が与えられていないことを窺わせるような事実は何ら疎明されておらず、また、交渉に総務局の担当者が出席しなければ団交が誠実に行われないおそれのあることを認めるに足りる事実も疎明されていないのであるから、組合の主張は認められない。
2 都の都庁職(都労連)との交渉との関係について
職員団体である都庁職を含む都労連との間で総務局は毎年一定の時期に賃金等の都職員に共通する事項について統一交渉を行っている。この点に関し、組合は総務局が都労連や都庁職と非常勤職員の賃金等の労働条件についても交渉している以上、組合とも同様に交渉すべきであるなどと主張する。
しかし、前記判断のとおり、本件においては組合の要求事項について各団交担当部局では実質的な交渉ができないという事情を認めることはできない。また、組合の組合員のいる職場は、専務的非常勤職員については生活文化局所管の消費生活総合センターのみであり、臨時的非常勤職員及び専門的非専務的非常勤職員については全体状況は明らかではないが、産業労働局所管の職業能力開発センター、病院経営本部所管の墨東病院、教育委員会所管の東京都公立小中学校のみであるという状況を考慮すれば、都が組合と都労連等とで全く同じ対応をしなければ不当労働行為になるとまではいえない。
よって、組合の上記主張は採用できない。 |
掲載文献 |
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