労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第57号
不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成29年3月13日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合員の再雇用後の労働条件を議題とした団体交渉申入れに対し、被申立人は、労働条件に当たらず義務的団交事項でないとして、当該議題の団交に応じないことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、団交応諾及び文書の手交を命じた。  
命令主文  1 被申立人は、申立人から申し入れのあった申立人組合員であるA2組合員の定年退職後の再雇用時の労働条件に係る団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
 組合
  委員長     A1様
法人       
理事長 B1
 貴組合からの平成27年7月21日、同年9月18日及び同年10月14日付けの団体交渉申入れに対する当法人の対応は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。  
判断の要旨  1 平成27年7月21日、同年9月18日及び同年10月14日付け団交申入れ(以下、「本件団交申入れ」という。)に対する法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるかについて
(1)  法人は、教職員は満60歳をもって一旦法人を定年退職するため、再雇用後の労働条件は、採用時の労働条件の決定と同様に法人の専権事項であり、労働条件の変更に当たらないため義務的団交事項には該当しない上、以前、定年退職後に再雇用された組合員については、組合から団交の申入れを受けたことは一度もなかったにもかかわらず、A2組合員についてのみ団交を求めるのは、一貫性がない旨主張する。
① 義務的団交事項に該当するかについて
ア まず、A2組合員が定年退職後に法人に引き続き再雇用される前提であったことについては、当事者間で争いがない。
 そして、平成25年4月1日、高年齢者雇用安定法が一部改正され、65歳までの雇用確保が事業者に義務付けられたところ、法人の就業規則においても、同日以降の定年退職者については、65歳まで再雇用する旨の規定があり、本件団交申入れ時、法人は、定年退職予定者が希望すれば、定年退職日の翌日から引き続き再雇用することとしていたこと及び嘱託契約の場合、定年退職前の給料額を基準にした月給制が採用されていたことが認められる。
 これらのことからすると法人における再雇用制度は、一旦定年によって、正規の雇用関係が終了するとはいえ、定年退職前の労働条件に基づいた雇用関係の継続であるといえる。
イ また、27.8.6団交において、法人は、内規の内容として、定年退職後の再雇用時の勤務には週3日から5日の場合があり、65歳まで嘱託として1年契約を繰り返すことや賃金は人それぞれで、退職時の給料より40%減るのが一般的である旨説明しており、これらのことからすると、法人の再雇用契約の内容は、一律に定まったものではなく、個々に条件を設定する運用であるといえる。そして、組合は、A2組合員の再雇用後の具体的な労働条件を協議することを要求していることから、本件団交申入れは組合員の個別の労働条件について交渉を要求しているとみるのが相当である。
ウ そうすると、定年退職後も引き続き再雇用されることを前提としたA2組合員の再雇用後の労働条件に関する事項は、定年前の労働条件を踏まえた組合員の個別の労働条件の変更に該当し、労使で協議することが可能な労働条件であるとみるのが相当であり、義務的団交事項に該当するのは明らかである。
 従って、法人の義務的団交事項でないとの主張には理由がない。
② 組合の団交申入れにかかる一貫性について
 また、法人は、A2組合員の再雇用後の労働条件の決定方法についてのみ団交を求める組合の態度に一貫性がない旨主張するが、そもそも当該団交申入れが義務的団交事項にかかるものである場合、使用者は、特段の事情が無い限りこれに応じるべきであるから、たとえ組合が以前に定年退職した組合員に係る団交申入れを行っていなかったとしても、法人が義務的団交事項である本件団交申入れに応じなくてもよい理由に全く当たらないことはいうまでもない。
(2) 次に、法人は、A2組合員の再雇用後の労働条件については、義務的団交事項ではなく、団交で協議する必要はないと考えているものの、3回の団交に応じて、内規の内容や定年退職後の再雇用者の労働条件等について具体的な説明をし、誠実に対応していた旨主張するので、以下検討する。
① 3回の団交における学園の対応について
 組合と法人は、27.6.30団交、27.8.6団交及び27.8.27団交を開催したところ、組合が最も交渉を求めているA2組合員の再雇用後の労働条件については、前記(1)判断のとおり義務的団交事項に該当する事項であるにも係らず、法人は、いずれの団交においても具体的に協議すべきではない旨繰り返し述べているのみで、一切交渉されていないとみるのが相当である。
 また、確かに法人は、これら3回の団交において、内規の内容として、再雇用者の平均的な労働時間や一般的な給与の減額率などを述べたことは認められるものの、①労働条件については本人と話をして決める、②内規は理事しかみることができない、③賃金は人ぞれぞれである、旨述べるなど、定年退職後の再雇用者の労働条件について具体的な説明を行ったとはいえない。
 したがって、法人は、3回の団交において誠実に対応していたとは到底いえない。
② 27.9.18団交申入書及び27.10.14団交申入書に対する法人の対応について
 法人は、すでに3回も団交を行い、その都度説明を行ったこと等を理由に、どちらの団交申入れにも一切応じていないことが認められるところ、法人が3回の団交において、義務的団交事項であるA2組合員の再雇用後の労働条件について誠実に対応していたとは到底いえないことは前記①判断のとおりであるから、かかる学園の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるというべきである。
(3) さらに、法人は、A2組合員の再雇用後の労働条件については、他の教職員の場合を大幅に上回る回数の項別面談を行い、十分な説明と協議を行った旨主張するが、たとえ組合員との個別面談で協議を重ねたとしても、この対応が組合との団交に代替するものでないことは明らかであり、法人の主張は認められない。
(4) 以上のとおり、A2組合員の再雇用後の労働条件は義務的団交事項であるにもかかわらず、法人は交渉に一切応じていないのであるから、法人の主張はいずれも採用できず、組合の本件団交申入れに対する法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成29年(行ウ)第67号 棄却 平成30年2月28日
大阪高裁平成30年(行コ)第37号 棄却 平成30年8月30日
 
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