労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪高裁平成30年(行コ)第37号
文際学園不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
控訴人(1審原告)  学校法人X(「法人」) 
被控訴人(1審被告)  大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会) 
被控訴人補助参加人  労働組合Z(「組合」) 
判決年月日  平成30年8月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合からの組合員C1の再雇用後の労働条件を議題とした団体交渉申入れに対し、法人が、労働条件に当たらず義務的団交事項でないとして、当該議題の団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、団交応諾及び文書の手交を命じた。
2 法人は、これを不服として大阪地裁に訴訟を提起したところ、同地裁は法人の請求を棄却した。
3  法人は、これを不服として大阪高裁に控訴したところ、同高裁は法人の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人の負担とする。 
判決の要旨  当裁判所の判断
1 当裁判所も,法人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,法人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第4の1及び2記載のとおりである。
2 法人は,定年退職後の再雇用契約における労働条件は,定年退職により雇用契約関係が一旦終了することから「労働者」の労働条件ではなく,新規採用者の雇用の場合と同様に経営専権(裁量)事項であり,義務的交渉事項に該当しないと主張する。
  しかしながら,法人においては,本件就業規則27条により継続雇用制度を導入し,本件協定書の基準を満たす職員との間で再雇用契約を締結することが予定されている。同制度の内容としては,一旦退職させた上で再度雇用する再雇用型であるとしても,その実質は,雇用の継続を確保する措置であり,基準に該当するか否かの確認も,当該職員の定年退職の6か月前から行われている。また,形式的に両者を別個の雇用契約と観念したとしても,再雇用後の労働条件は,定年前の雇用契約における本件就業規則27条,本件協定書の適用の問題であるから,正に現在の雇用契約の条件に関するものといえる。そうすると,現に法人に雇用され,本件就業規則27条の継続雇用制度の対象となる職員の,再雇用契約締結時の労働条件については,労組法7条2号の趣旨に照らし,義務的団体交渉事項に当たるというべきである。かかる継続雇用制度における定年退職後の再雇用にあっては,その労働条件を全く新規に採用される者と雇用契約を締結する場合の労働条件と同視することはできないのであって,法人の上記主張は採用できない。
3 法人は,組合との団体交渉を拒否しておらず,また,組合に対し,団体交渉の場で,定年退職後の再雇用者の労働条件について,何度も,具体的かつ詳細な説明を行い,誠実に対応したと主張する。
  しかし,法人は,組合の平成27年7月21日付け団体交渉申入れを受けた同年8月6日及び同月27日開催の団体交渉において,定年退職後の処遇については労働条件の変更にあたらず,団体交渉事項ではないなどと述べ,組合との間で,団体交渉の場において,C1の定年退職後の再雇用契約締結時の労働条件についての具体的な交渉を行わなかったと認められる。また,法人は,組合の平成27年9月18日及び同年10月14日付け団体交渉申入れに対し,回答書において,定年退職後の処遇については労働条件の変更にあたらず,団体交渉事項ではないので協議する必要はないと考えていることを示しており,この法人の対応は,団体交渉の開催自体を明確に拒否するものではないとしても,組合との間で,団体交渉の場において,C1の定年退職後の再雇用契約締結時の労働条件についての具体的な交渉をすることについては拒否する意思を示したものとみるのが相当である。なお,法人が過去の再雇用者の労働条件の決定方法や内規に記載されている内容についての説明をしているとしても,また,C1との個別面談を実施していることやC1との再雇用契約締結後にも複数回の団体交渉が開催され再雇用後の労働条件についての協議をしているとしても,これらの事情により,組合からの上記各団体交渉申入れに対し,C1の定年退職後の再雇用契約締結時の労働条件については団体交渉事項ではないとする法人の対応に正当な理由があるとはいえない。
  よって,法人の対応は,正当な理由のない団体交渉の拒否というほかなく,法人の上記主張は採用できない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成27年(不)第57号 全部救済 平成29年3月13日
大阪地裁平成29年(行ウ)第67号 棄却 平成30年2月28日
 
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