概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成27年(不再)第52号 EMGマーケティング(富山便宜供与等団交)不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人
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分会 |
再審査被申立人
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会社 |
命令年月日 |
平成29年1月18日 |
命令区分 |
取消、棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 会社が、組合掲示板及びキャビネットの使用制限並びに構内駐車拒否を議題とする分会の団体交渉申入れを拒否したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事案である。
2 初審富山県労委は、本件において、分会の中に労働組合法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者」に該当する組合員の存在を認めることができないから、本件救済申立ては労働委員会規則第33条第1項第5号の「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかであるとき」に該当するとして、分会の本件救済申立てを却下したところ、分会は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
1 初審決定を取り消す。
2 再審査申立人の本件救済申立てを棄却する。
3 再審査申立人のその余の再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件初審の審査手続には、十分な審理がされていないなどの手続上の違法があるかについて
分会は、富山県労委の審査手続には不備があり違法であると主張するが、初審決定は当事者の主張、立証を踏まえて認定及び判断をしたものであり、提出された主張や証拠文書によれば、その判断に必要な主張及び立証は相応に尽くされているといえるのであって、初審の審査手続には特段の違法はないというべきである。 2 本件救済申立てに係る分会の主張する事実は、労委規則第33条第1項第5号に該当するといえるか及び分会の本件団交申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるかについて
本件団交申入れは、分会の組合員が全員退職して相当長期間が経過した後にされたものであり、その交渉議題は、直接に組合員の労働条件等に関する事項ではなく、分会規約上、会社において分会に加入する資格がある者も存在しないのであるから、分会の組合活動は、労組法が予定する集団的労使関係に関し、又はそれを前提とする活動としての側面に乏しいものともいえる。そうすると、本件団交申入れについての交渉議題は、会社においてこれに応諾すべき義務が生じるような事項であるかについては疑問が残るところであるが、他方、分会の組合員が退職した後も、分会が組合掲示板等を使用し続けていたことその他の事情等に照らすと、本件団交申入れの交渉議題との関連においては、分会と会社との集団的労使関係がなお継続しているとみる余地がないわけではない。
そこで、進んで、会社の行為が労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるかについて更に検討すると、分会の団体交渉申入れは、分会の上部団体の団体交渉申入れとその内容が実質的に重複しているというべきであり、会社が、分会からの団体交渉申入れに対し、上部団体から既に団体交渉申入れがなされていること等からの疑義を呈して団体交渉議題の整理を求めたことは、会社の対応としてもっともなものということができる。ところが、分会は、上記会社の対応は団体交渉拒否であるとして抗議するのみで、会社の求める団体交渉議題の整理に応じる姿勢を全く見せることなく、その後の本件団交申入れに至っており、このことについて、会社が、上記と同様の疑義を呈し、本件団交申入れの具体的理由及び団体交渉議題の趣旨や目的等に関して文書で示すよう求めたことについても相応の根拠があったというべきであるが、分会は、団体交渉要求の具体的理由及び団体交渉議題の趣旨や目的等について全く回答することなく、本件救済申立てに至っている。
以上によれば、会社は分会の本件団交申入れに応じてはいないものの、その対応には正当な理由があり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるということはできない。
もっとも、本件においては、初審及び再審査の手続において詳細な主張立証がされ、これに基づいて初めて当事者の主張の当否について検討や判断ができたのであり、現にそのような手続が進行しているのであって、これを労委規則第33条第1項第5号所定の「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当するということはできない。
以上のとおりであるから、主文のとおり命令する。 |
掲載文献 |
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