労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成24年(不再)第55号・平成28年(不再)第1号
沖縄県身体障害者福祉協会・同(退所)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人   合同労組 
再審査申立人   自立労組
合同労働組合と併せて、「組合ら」 
再審査被申立人   協会 
命令年月日  平成28年12月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1(1) 沖縄県労委平成24年(不)第1号事件(第55号事件)「先行事件」
 本件は、協会施設(「本件施設」)の就労継続支援B型のサービスの利用者(「就労継続支援B型利用者」)であるAら6名が組合を結成して平成24年2月6日(以下「平成」の元号を省略)、同月13日及び同月18日付けで申し入れた「施設廃止・移転の事実と経過」を議題とする団体交渉に協会が応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、組合らが救済を申し立てた事案である。
 (2) 沖縄県労委平成25年(不)第3号事件(第1号事件)「後続事件」 
 本件は、協会が24年7月31日に本件施設からAを退所させた措置が労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に当たるとして、組合ら及びAが救済を申し立てた事案である。
2  初審沖縄県労委は、本件施設におけるAら就労継続支援B型利用者は労組法上の労働者に当たらないとして、先行事件については救済申立てを却下し、後続事件については救済申立てを棄却した。組合らは、これを不服としてそれぞれ再審査を申し立てた。 
命令主文  1 先行事件の初審決定主文を取り消し、本件各救済申立てを棄却する。
2 後続事件に係る本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件施設における就労継続支援B型利用者は労組法上の労働者に当たるか
 本件施設の事業は、障害者自立支援法に基づいて市町村から支給される介護給付費等によって成り立つ障害福祉サービス事業であり、Aら就労継続支援B型利用者は、協会が提供するサービスの受給者なのであって、サービスを提供する協会の事業活動に労働力として組み込まれているわけではない。また、本件施設におけるAら利用者の生産活動への参加は、18年10月2日付け通達「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について」に沿った就労支援サービスの受給の一環であり、利用者自ら協会と合意した利用契約及び訓練等の計画に基づき行われていたものであって、そのサービスを受給するかどうか、生産活動に参加するかどうかは、Aら利用者の自由であるから、そもそも労務の供給とはいえないし、生産活動に参加した利用者に支給される工賃も、生産活動によって得られた収益から必要経費を差し引いた残額すべてを分配するものであり、飽くまで就労支援の観点から設定した20項目に及ぶ評価をその分配に反映させたものにすぎず、生産活動と工賃との間に対価性はなく、訓練としての指導や助言を超えた作業上の指揮・監督・命令もなかったと認められる。
 したがって、本件施設におけるAら就労継続支援B型利用者は、労組法の労働者には当たらない。
2 組合らが申し入れた団体交渉に協会が応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか(先行事件)及び協会が24年7月31日Aを本件施設から退所させたことは労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に当たるか(後続事件)
 上記1のとおり、Aらは、本件施設におけるサービス受給者であって、労組法上の労働者に当たらないから、いずれの不当労働行為についても、その成否を検討する前提を欠く。
3 なお、沖縄県労委は、先行事件の初審手続中に協会が提出した準備書面及び乙11ないし19号証を組合らに示して反論する機会を与えないまま、決定書を交付したこと、同決定書において、乙11、12及び17号証を重要な証拠として引用したことが認められるところ、これについて、組合らは、同委員会の上記手続は適正手続保障を踏みにじるものであり違法であるから、中央労働委員会は、初審の決定を取り消し、沖縄県労委に差し戻すべきであると主張する。
 しかしながら、不当労働行為救済制度(労組法第27条以下)にあっては、初審労働委員会の処分について、事件を同委員会に差し戻すことは予定されておらず、また、同法第25条第2項には、中央労働委員会は都道府県労働委員会の処分を取り消し、承認し、若しくは変更する完全な権限をもって再審査することができる旨定められているところ、当委員会は、組合らに対し、協会の主張・立証を踏まえた更なる主張・立証の機会を十分に与えたのであるから、組合らの上記主張には理由がない。
4 結論  以上のとおり、本件施設におけるAら就労継続支援B型利用者は労組法上の労働者に当たらないから、この点に関する初審の判断は相当であるが、初審が申立ての却下を決定した先行事件についても、詳細な事実認定と評価を前提として「労組法上の労働者に当たらない」と判断しているのであって、「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」(労働委員会規則第33条第1項第5号)とはいえないから、却下するのではなく、棄却するのが相当である。
 また、後続事件に係る本件各再審査申立てはいずれも理由がないから棄却する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
沖縄県労委平成24年(不)第1号 却下 平成24年9月20日
沖縄県労委平成25年(不)第3号 棄却 平成27年11月27日
 
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